取材

象の頭をした神様「ガネーシャ」に残る少年マンガのような傷跡


「夢をかなえるゾウ」という書籍が大ヒットしてドラマ化されたのが理由なのか、「ガネーシャはヒンドゥー教の象の神様」ということは知っていました。海外でもインド、ネパール、シンガポール、タイといった国にガネーシャがいました。でも、知りませんでした。まさか、あの穏やかな顔に、あっと驚く秘密があったとは……。

こんにちは、キリンさんよりゾウさんが好きな自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。2015年はインドやネパールといった南アジアも旅していたのですが、随分と後になって気付きました。

◆ガネーシャについて


ガネーシャとはヒンドゥー教の神様の中の1体で、ヒンドゥー教の3大神であるシヴァの息子です。シヴァの奥さんであるパールヴァティーが体を洗っていたときに出てきた垢を集めて命を吹きこまれて誕生。このときは人間の頭でした。パールヴァティーはガネーシャに「見知らぬものを浴室に入れぬように」と命じます。ちょうどシヴァが帰ってくるのですが、何も知らないガネーシャは頑なにシヴァが入ることを拒否。「通せ」「通さぬ」とのやり取りの末に激高したシヴァは、ガネーシャの首を切り落とし、頭を遠くへ投げ捨てます。後にパールヴァティーから「実の息子に何てことをしたのよ」と責められたシヴァは、頭を探しに出かけるも、どうしても頭は見つかりません。苦悩の末に、出先で会った象の首を切り落とし、ガネーシャの頭として取り付けることに。こうした経緯で、象の頭を持ったガネーシャが産まれました。

【インドの神話】ガネーシャの誕生エピソードを漫画にしたらかなりジワジワくる結果に - Togetterまとめ
http://togetter.com/li/831199

ガネーシャは商売の神様、学問の神様として、広く信仰されています。七福神の布袋のようなガネーシャの太鼓腹は、確かに縁起が良さそうです。ヒンドゥー教が盛んな南アジアに留まらず、シンガポールやマレーシアといったインド系住民が住む国にもガネーシャの姿がありました。ニュージーランドでふと立ち寄ったのインド系ストアにもガネーシャ関連のグッズが置いてあったのを覚えています。

インドで見つけたガネーシャ。


壁に祠が作られていたピンクのガネーシャ。


シンガポールの八百屋の軒先でも発見。


タイでも信仰の対象です。


ふとしたときに、Wikipediaでガネーシャの記事を読んでいたのですが「片方の牙が折れている」という記述に衝撃を受けます。今までのガネーシャの写真を振り返ると、確かに牙が折れていました。その事実を今知ったという人は、上の写真も見直してみて下さい。2つある牙のうちの1つがポッキリと折れています。

話題となった「夢をかなえるゾウ」のガネーシャも同じでした。

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頬の十字傷や、胸の刻まれた北斗七星のように、日本の少年漫画にも通じるガネーシャの折れた牙。こうなった理由は、インドに伝わる神話に描かれています。幾つか説があるのですが有名なものを挙げると……

・インドの聖典である「マハーバーラタ」の著者であるヴィヤーサは文字を書くことができなかった。そこでガネーシャが代わりに彼の言葉を書き留めることになり、自らの牙を折って、その牙で記録を残した。学問の神様として崇められるのは、こうした理由から。


・とある月夜の帰り道、ネズミに跨ったガネーシャの前を一匹の蛇が通り過ぎた。ヘビに驚いたネズミは動転して、ガネーシャを振り落としてしまい、衝撃でガネーシャの牙は折れてしまった。一部始終を見ていた月が気に食わないガネーシャは、「何を笑っているんだ」と癇癪を起こして、折れた牙を月に投げつけた。その結果、月が満ち欠けするようになったとか。

と、このようなお話が、伝えられています。


ガネーシャの置物を手に入れて、片方の牙が折れていたとしても、欠陥品ではなく仕様ですのでご注意下さい。

◆インド人と猫
噛まれてしまうほどに野良犬がウヨウヨしていたインドですが、野良猫はほとんど見かけませんでした。その理由は「ガネーシャの乗り物がネズミだから」でした。小さなネズミが大きなゾウを乗せるなんて現実的には不可能ですが、そこは神様ですので難なくこなしてしまいます。不可能を可能にする神業を示すためにネズミという話もあります。神様の乗り物であるネズミが猫に捕まえられてしまうのも困りもの。だからこそインドでは猫が不人気で、野良猫も少ないというわけです。

ガネーシャの足元にはネズミがいるのは、こういう理由から。


◆神様の乗り物
ガネーシャのネズミだけでなく、ヒンドゥー教の神々にはヴァーハナと呼ばれる乗り物をそれぞれ持っています。3大神のヴィシュヌだとガルーダという鷲、ブラフマーだとハンサという白いガチョウです。この設定も、日本の漫画のようで惹かれてしまいます。3大神の残る1人、ガネーシャの父親でもあるシヴァの乗り物がナンディンと呼ばれる白い牡牛でした。ヒンドゥー教の牛崇拝は、ここから来ています。

インドでは、街なかを普通に牛が歩いていました。


◆タイとインド
このガネーシャですが、なぜかタイでも信仰の対象となっています。海外で初めてガネーシャを見たのもタイでした。さほど気にしてなかったのですが、インドを旅したあとでは、タイとインドの共通点の多さが気になります。

ガネーシャも信仰されていて……


ヒンドゥー教の3大神のヴィシュヌの乗り物であるガルーダはタイの国章にもなっています。


インドの入国審査のカメラの前には、お手手の皺と皺を合わせたナマステのシールが貼っていました。「はいはいカメラ見て、3、2、1、ナマステ」でシャッターが切られた……というのは私の妄想ですが、ナマステのポーズはインドでは身近でした。実は、タイの人も「ワイ」という同じポーズで挨拶をします。

インドのナマステ。


タイのワイ。挨拶の言葉自体は「サワッディー」です。


日本人でもお願いや感謝のときに同じ動作をとりますが、インドやタイでは日常の挨拶となっているので、ちょっと雰囲気が違っていました。

もう一つ、バンコク近郊の地獄寺を訪れたときに、タイの死生観についても調べました。輪廻転生を信じる人が多く、来世のためにタンブン(徳)を積む行為が、タイの社会に根付いています。一方でインドも輪廻転生が根付いた社会で、身分制度であるカースト制もその名残。インドでベジタリアンが多いのも、身近な人が動物に転生していたら困ると、輪廻転生の思想が影響しているようです。

◆記事を書いてみて
インドの神様だけあって、インド人そっくりの顔をしています。


青い顔をしているけど、具合が悪いのかしら。


寺院のレリーフが有名な物置のCMのようで賑やか賑やか。


と、深く考えることもなかったヒンドゥー教にインドでしたが、このような記事を書くにあたって、いろいろと調べてみると、かなり奥が深そうでした。それらしく書いてみながらも、突っ込みどころ満載でしたし、時間を見つけて勉強したいところです。七福神をはじめ、日本の神様もインド出身の方がいるようですしね。

(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
Twitter @shuutak
)

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in 取材, Posted by logc_nt

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