再充電可能で安全なリチウム電池が現実的なものになる新発見
by Rob Nunn
ノートPCやスマートフォンで用いられている「リチウムイオン電池」よりもエネルギーの貯蔵能力が高い電池「リチウム電池」は、充電できる形で作るとショートして安全性の問題があるということから、これまで広くは用いられてきませんでした。しかし、コーネル大学の研究チームが、ようやくこの問題点をクリアしたそうです。
Room-temperature lithium metal battery closer to reality | Cornell Chronicle
http://news.cornell.edu/stories/2016/02/room-temperature-lithium-metal-battery-closer-reality
Nanomembrane May Bring Rechargeable Lithium-Metal Batteries Back - IEEE Spectrum
http://spectrum.ieee.org/nanoclast/semiconductors/materials/nanomembrane-may-bring-rechargeable-lithiummetal-batteries-back
正極にリチウム金属酸化物、負極にリチウムを吸蔵する炭素などを用いた二次電池(充電可能な電池)が「リチウムイオン電池」で、ノートPCやスマートフォン、ハイブリッド自動車や飛行機などに広く用いられています。一方、負極に金属リチウムを用い、正極にはフッ化黒鉛や塩化チオニルを用いるのが「リチウム電池」です。
リチウムは充電を繰り返すと正極と負極との間にデンドライト(樹枝状結晶)ができてショートする危険性があったり、リチウムがわずかでも水分に触れると激しく発熱して発火する危険性があったりしたことから、充電しない一次電池としては用いられても、充電可能な二次電池への応用は広まりませんでした。マクセルのコイン形二酸化マンガンリチウム二次電池「ML」のように充電可能なリチウム電池はありますが、これらは主にセラミック製のセパレーターによって、デンドライトが正極と負極とを短絡しないように作られています。
コーネル大学で化学・生物分子工学を教えるリンデン・アーチャー教授と大学院生のスネハシス・チョードリーさん率いるチームは、この正極と負極の間にできるデンドライトの成長を抑え込む方法を編み出しました。用いるのは、セラミック製のセパレーターではなく、ポリ酸化プロピレンと交差結合させたポリエチレンオキシドと、二酸化ケイ素を用いて作った高分子膜です。膜は有孔で、イオンは通過してもデンドライトは通りません。今回生み出した膜を用いると、室温でも良電導性を保つことが可能になるそうです。
今回の「発見」の素晴らしいところは、電池の技術を根本的に改める必要がないところ。リチウムイオン電池でもセパレーターとして高分子膜を使っているように、今回生み出された膜は様々な電池に組み込むことが可能。さらに、ナトリウムやアルミニウムのように、リチウムと同じくデンドライトによって用途が限定されている他の金属を役立てることができるかもしれないとのことです。
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