4.0Vの高電圧と爆発しない安全性を両立させた水性リチウムイオンバッテリーの開発に成功


エネルギー密度の高さからノートPCやスマートフォン、電気自動車に採用されている「リチウムイオンバッテリー」は、有機電解液を使用するため発火や爆発の事故が絶えません。高い電圧を保ちつつ、爆発しない高い安全性を実現する水性リチウムイオンバッテリーの開発にアメリカの研究者が成功しています。

4.0 V Aqueous Li-Ion Batteries: Joule
http://www.cell.com/joule/fulltext/S2542-4351(17)30034-X

Water-based lithium-ion batteries without explosive risks now a reality
https://phys.org/news/2017-09-water-based-lithium-ion-batteries-explosive-reality.html

'No fire risk' with new lithium batteries - BBC News
http://www.bbc.com/news/science-environment-41187824

すでに実用化されているリチウムイオンバッテリーは、有機溶媒の電解液を用いているため、熱や変形によって溶媒が引火することで発火・爆発の事故が起こります。そこで、安全性を考えるとニッケル・水素充電池のような水性の電解液を用いることが有利であり、水性リチウムイオンバッテリーも開発されていますが、高い電圧を出せないという欠点がありました。つまり、性能と安全性がトレードオフの関係にあったというわけです。

By SparkFun Electronics

メリーランド大学とアメリカ陸軍研究所の共同研究グループは、2015年に水系電解液を用いた水性リチウムイオン電池で3.0ボルトという高い電圧を出すことに成功しましたが、黒鉛またはリチウム金属でできたアノードが水系電解液によって腐食する「cathodic challenge(陰極チャレンジ)」と呼ばれる現象を起こしてしまい、実用化に耐えられない状態でした。

しかし、同研究グループは、アノードを疎水性の電解質のゲルポリマーで覆うことで水分子を電極表面から追い出すとともに、充電時に分解して固体電解質とアノードを分離する「interphase」と呼ばれる中間相を作ることのできるコーティングを開発しました。このゲルコーティングによって陰極チャレンジの発生を防止できるだけでなく、適切な中間相を作ることで4.0ボルトという非常に高い電圧を得ることに成功したとのこと。水性リチウムイオンによる安全性と、有機電解液を使った一般的なリチウムイオン電池に勝るとも劣らない高出力を両立したというわけです。


研究グループの作成したゲルポリマーコーティング水性リチウムイオンバッテリーは、折れ曲げなどによる損傷によっても、グラファイトのアノードがゆっくりと反応して発火や爆発を避けられるとのこと。

アメリカ陸軍研究所のカン・シュウ氏によると、水性リチウムイオン電池の充放電サイクルは50~100回程度であり、有機電解液リチウムイオンと同じ500回以上を目指して改良を続ける予定で、十分な資金援助さえ得られれば、5年で商業化できるだろうと述べています。

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