Wi-Fiの途切れがちな地中まで磁場を使って通過する通信技術が開発される、地下での遭難時の連絡や救助が可能に

通常の無線通信がほとんど使えない地下100mまで通信可能なワイヤレス技術を韓国の研究機関が開発しました。この技術は電波ではなく磁場を利用することで地中でも安定した通信を実現しており、災害時の救助や地下インフラ管理などへの応用が期待されています。
Wideband Magnetic Induction Wireless Communications in Challenging Underground Environments: A Current-Driven Scheme | IEEE Journals & Magazine | IEEE Xplore
https://ieeexplore.ieee.org/document/10947495
Researchers develop ground-penetrating 'Wi-Fi' tech with 100m range — magnetic induction method could help reach those trapped or lost underground | Tom's Hardware
https://www.tomshardware.com/tech-industry/researchers-develop-ground-penetrating-wireless-communications-tech-with-100m-range-magnetic-induction-based-method-could-help-reach-those-trapped-or-lost-underground

韓国電子通信研究院(ETRI)の研究チームは、地表から最大100m下の地中環境でも電波を透過できる新たな地下無線ネットワーク技術「広帯域磁気誘導(MI)無線通信」の開発に成功しました。Wi-Fiのような無線通信技術ですが実際には一般的な無線LANとは異なり、磁気誘導を利用して地下の機器との安定した通信を実現し、従来の無線周波数方式で発生する信号の減衰や劣化を回避することができます。
通常の無線通信は電波を使いますが、地中では土壌や岩石、水分によって信号が急激に減衰してしまうため、通信距離は極めて短くなります。一方で磁場はこれらの影響を受けにくく、より安定して伝わるという特徴があります。
従来のMI無線通信アーキテクチャでは、相互磁気誘導の基本原理を利用したコイルを使用して通信信号が送受信されます。送信コイルは正弦波電流の形で信号を送信し、それが受信ノード内部に別の同様の正弦波電流を誘導し、通信が実現します。送信コイルと受信コイル間の相互作用は相互誘導によるものです。この仕組みは電気の変圧器に近く、空間に電波を飛ばすのではなく、近距離の磁場の結合を利用して信号を伝えるのが特徴です。しかし、このようなMI無線通信技術では、安定した通信チャネルやコイルの小型化といった利点がある一方で、通信範囲が狭かったり伝送距離が長い場合のパス損失が大きかったりと、技術的限界もありました。

そこで過去の研究では、MI無線通信の基本構造を発展させて、複数のコイルを中継のように配置することで信号をリレー形式で伝えるMIウェーブガイド(導波路)手法を提案しています。MIウェーブガイドでは伝送パス損失を大幅に減らしながら通信範囲を拡大できるとのこと。

ETRIはこれらの研究を応用させ、実用化に向けた実験研究を実施しました。MI無線通信の試験装置は、0.9平方m×0.9平方mの送信ループアンテナと磁場受信センサーで構成され、これらはすべてデータ送信に「直交位相シフトキーイング変調」を使用する無線通信システムに接続されています。送信速度はわずか2Kb/sと非常に限られていますが、音声通信には十分な帯域とされています。試験は、無線信号を効果的に遮断することで知られる石灰岩の岩盤環境で行われました。
地下100mから地上へ信号を送信するフィールド実験の結果、効率を示す「低搬送波周波数15kHzで2Kb/sのデータレートによる送受信」の計測結果が13.33%と高い値を記録し、今回の方式によるMI無線通信の実現可能性を示したと研究者らは述べました。また、ビット当たりのエネルギー対雑音電力スペクトル密度比は23.98dB、誤差ベクトル振幅は14.74%と測定され、「提案システムが十分な信頼性を備えていることが示された」と論文では主張しています。
従来の地中を貫通する通信方式と比較して、磁場を利用したMI無線通信はより小型で低消費電力、かつ幅広い用途に対応できる装置に組み込むことができる可能性があるため、MI無線通信技術をスマートフォンに搭載する可能性も研究者らは示唆しています。スマートフォンでMI無線通信が可能になると、トンネルや洞窟で作業したり探検したりする仕事・個人にとって地下通信の利用範囲が拡大するほか、地下で遭難したり閉じ込められたりした災害時の通信手段になる可能性があります。さらに、この技術が海洋掘削や国防にも役立つ可能性についても議論されています。
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