ソフトウェア

快適なWi-Fi環境を構築するためにはスピードテストだけでは不十分、詳細な検証ができるツールが公開中


スマートフォンやPCに無線LAN環境を提供してくれるWi-Fiルーターは、インターネットを利用する上で欠かせない存在となっています。そんなWi-Fiルーターを選ぶうえで、メディアが公開しているWi-Fiのテスト結果は参考になりますが、多くのWi-Fiテストは「最も速い回線速度」を、テストした環境のパフォーマンスとしており、Wi-Fi環境の快適さを知るには不十分であると、テクノロジー系ニュースサイトのArs TechnicaのライターであるJim Salterさんが述べています。

How Ars tests Wi-Fi gear (and you can, too) | Ars Technica
https://arstechnica.com/gadgets/2020/01/how-ars-tests-wi-fi-gear-and-you-can-too/

実際にWi-Fiを使ってウェブブラウジングなどを行う時、快適度を左右するのは回線そのもののスピードではなく、通信するアプリケーションの応答にかかる時間であるとのこと。ウェブサイトを閲覧する際、ブラウザは何百ものリクエストを行っており、そのうち1つの応答が遅ければウェブブラウジング全体に影響を与えます。実際の世界では、NetflixやYouTubeなどの動画配信サービスで動画を見ながらウェブサイトを閲覧したり、複数の端末を1つのWi-Fiルーターに接続したりすることも考えられ、その場合は回線速度だけでなくルーターの処理能力も重要になります。

Wi-Fi端末は複数の端末間での干渉を避けるため、ある一定以上の強度の電波を感知するとパケット交換を停止するCCAと呼ばれる通信規格を採用しています。しかし、CCAは干渉を避けるための規格であり、最適な帯域を選択する機能はなく、CCAによって干渉を回避した端末が同じ帯域で通信しようとする限り干渉は避けられないことになります。また、電波によるデータ交換には位相変調と呼ばれるデジタルデータを電波で表現できる形に置き換える技術が使われており、単純な置き換え方式ほどノイズに強いですが、伝送できる情報は少なくなります。実際の通信においてはこれらのCCAや位相変調の方式によっても通信速度が左右され、Wi-Fi端末の仕様に記載されている最大通信レートの速度で通信できることはめったにないとのこと。

by Panos Sakalakis

快適なWi-Fi環境を築くためには、メッシュWi-Fiの構築が有効です。電波状況の悪い場所とルーターの中間点にステーションを配置すれば、ノイズの影響が減少し伝送性能の高い変調方式を使えるので、一度に送受信できるデータ量を増やせます。また、メッシュWi-Fiは端末ごとに異なるチャネルを割り当てる機能を備えている場合もあり、電波の干渉が起こらないのでCCAによるパケット交換停止もなくなります。

Wi-Fiテストはこれまでに述べたネットワークの使用状況や位相変調の方式などの複雑な条件を反映するべきだとJimさんは述べています。さまざまな要因によって決まるWi-Fiの通信速度をテストするためには、現実に即した作業を行い現実に即した負荷をネットワークにかける必要があり、そうした負荷をかけるためにArs Technicaが使用しているテストツールがオープンソースで公開されています。

GitHub - jimsalterjrs/network-testing: This is a small collection of GPLv3-licensed tools to assist an intrepid researcher in testing the performance of networks, wired or wireless.
https://github.com/jimsalterjrs/network-testing

実際にツールを利用してテストした結果も公開されています。テストした建物の間取りはこんな感じ。広さは約3500フィートで、左側が1階、右側が地下になっています。


今回のテストは「Plume」4台、「Amazon Eero」3台、「Google Nest Wifi」2台を使用。まずはそれぞれのステーション単体で1MBのファイルのダウンロード速度を見てみると、Nest Wifiがキッチンで高いパフォーマンスを誇っていますが、地下の寝室で極端に速度が落ちているのがわかります。


次にすべてのステーションを起動し、同じく1MBのファイルをダウンロードすると、Plumeの速度がすべての部屋で非常に速いという結果に。


今度は1080pのムービーをストリーミングしてみます。ムービーのストリーミング自体は結果にそこまで差はありませんが……


ムービーをストリーミングしながらウェブブラウジングし、ムービーの遅延を見てみると、Nest Wifiが他の2端末に大きく遅れをとっており、単純なスピードテストだけでなくさまざまな状況でテストすることが重要だとわかります。


こうしたテストはWi-Fi環境の複雑さゆえ、実施する環境によって結果も異なるため、Ars Technicaで行うテストとユーザーが行うテストは同じツールを用いていても比較するのは難しいとのこと。しかし、自分のWi-Fi環境が適切なものかどうか確認するために非常に役に立つとJimさんは語っています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
Wi-Fi・無線LANを建物全体でカバーできる「メッシュ Wi-Fi」機能を「MR2200ac」と「RT2600ac」で構築してみた - GIGAZINE

Wi-Fiセキュリティ新規格「WPA3」にWi-Fiのパスワードが漏れる新たな脆弱性が発見される - GIGAZINE

Wi-Fiで壁の向こうにいるのが誰か分かる新技術が登場 - GIGAZINE

Raspberry Pi 4の「特定の解像度でWi-Fiが不安定になる」問題を実際に検証してみた - GIGAZINE

6GHz帯が利用可能になった無線LANの新規格「Wi-Fi 6E」が発表される - GIGAZINE

in ソフトウェア, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.