ローソンの「おでん大根」を生み出すローソンファーム鳥取に潜入してきた
寒い時期のコンビニの定番メニューといえば「おでん」。その定番の一角である「大根」ですが、ローソンの場合はそのほとんどを「ローソンファーム鳥取」が作っています。ローソンが日本全国に1万2000店舗以上あることを考えると、冬になると1日に数万個単位の大根が食べられているはずなのですが、それを供給しているのはどんなところなのか。加工場、さらに農場を見せてもらいました。
鳥取県米子市、米子鬼太郎空港から車で10分ほどのところにローソンファーム鳥取はあります。これはファームの近くから米子市方面を撮影したもので、中央に見えているのは大山。
「ローソンファーム鳥取」は2012年5月に設立された農業生産法人で、岡野農場を母体としており、大根を収穫する農場と加工場が一体となっています。到着すると、「ローソンファーム大根」と書かれた箱が積み上げられていました。これも、数日後にはローソンの店頭でおでん種として販売されることになります。
まずは事務所で白衣と衛生帽子を受け取ります。
もちろん、マスクも必要。
そして長靴を履いていきます。
◆洗い~皮むき
大きな袋に詰め込まれた大根が積み上げられた倉庫
これを、フォークリフトを使って水を張ったコンテナに投入していきます。収穫した大根にはまだ土がたくさんついた状態なので、まずここで洗い落とすわけです。
大根をフォークリフトで水を張ったコンテナへ投入 - YouTube
コンテナには電動の羽根が3つついていて、その先にあるコンベアへと大根を送り出していきます。
水を思いっきり大根にぶっかけています。、
この工程で大きな泥の塊などは落ちますが、ピカピカとまではいきません。それは次の工程に委ねられます。
大根を洗ってコンベアで次の工程を行う建物へ運ぶ - YouTube
次の建物では、すぐに別の機械が待ち構えています。ここで残った泥を徹底的に洗い流します。
大根の外側に残った泥を洗浄機で洗い飛ばす - YouTube
きれいになった大根は、まず頭と尻尾が不要なので切り落とします。ここは流れ作業なので、あっという間です。
このあとの工程の都合上、あまりにも曲がった大根や大きすぎるものはここで脱落です。ただし、岡野農場では廃棄が出ないように、おでん大根としては不適だった大根も切り干し大根として出荷しています。
次の工程は機械での皮むき。あまりにも曲がっていたり、サイズが大きかったりすると機械に入らないため、ここで脱落してしまうというわけです。
機械に大根を入れると、大根を奥へ押し出しながら筒状にカットしてくれます。
裏側から見ると、にゅーっと大根の中心部分だけが筒の中から押し出されてくるのが見えます。
バナナの皮のように剥かれていく皮。
大根の皮むき機が次々と大根を処理していく - YouTube
できあがった真っ白な大根は、コンベアでケースへと送り込まれます。
中には折れてしまっている大根もあるのですが……
あまりにも新鮮すぎると、皮むき機を通ったあとに衝撃で折れてしまうのだそうです。
皮むき機からどんどん押し出されてくる大根 - YouTube
◆カット~パッケージング
皮を剥かれたほぼ一定の太さの筒状になった大根は、近くの別の建物で次の加工を行います。
加工場に入る前に手洗い。
続いて、足元を消毒し……
ほこりを飛ばします。
ようやく加工場の中へ。
ケースに山盛りになっているのは、先ほどの場所で加工された大根。
ここでは、いよいよおでん大根にするための作業が本格化します。まずはこのカットされた状態の大根のうち端をさらにカットしていきます。これは「端だから切っている」のではなく、おでん大根として一定の大きさ(太さ)が必要なため、どうしても細くなってしまう部分を省いているとのこと。
おでん用大根の端を次の工程のためにカット - YouTube
カットを担当する人の手元にはオレンジ色と紫色のカゴ。オレンジ色は切り干し大根に加工されるものが入っており、紫色はオレンジ色より状態がよくないため、堆肥に加工されるものです。
ちょっと短い筒状になったおでん大根は、続いて機械に通され、一定の厚みにカットされます。
大根をおでんサイズにさらにカット - YouTube
出てきた大根は、これぞ「おでん大根」というものになりました。
カットから次の工程までの流れはこんな感じ。
おでん大根らしくカットされてコンベアで運ばれる - YouTube
運ばれた先では味が浸みやすくなるように、一度蒸気で加熱します。
出てくると、ここでも検品を行いつつ、水で冷やします。
ここでもどんどん大根が出てくるので、ケースはあっという間に大根で一杯になります。
熱を通した大根を水で冷やす - YouTube
そのケース自体もこうしてたくさん待機中。
ここまで1つ1つの工程で行われている検品ですが、かなり厳しい目で見られているので、中には「なぜこれがアウトなのだろう?」と思うようなものも。
この色つきの液体は調味液。いよいよ最後のパッケージングが近づいてきました。
ここが包装の工程です。
6個パックの容器に、どんどんを大根を入れていきます。
おでん大根を6個セットのパッケージに詰めていく - YouTube
次の機械で大根に切れ目を入れて……
フィルムを貼り付けたらできあがり。
これでようやくお店に出せる状態になりました。……しかし、ここまでの工程1つ1つで行われてきたのと同じようにまた検品が行われます。これはパック内に何か入ってしまっているのでアウト。パックを開けて再度パッケージし直し、ということはないそうです。
「ローソンファームのおでん大根」最後の検品 - YouTube
この工場では最も多いときだと1日に4万本の大根を加工しているのだそうです。なお、見てきたとおり、途中で脱落する大根もかなり多いのですが、中には「なぜアウト?」と思うようなモノも。しかし、これぐらい厳しくチェックしているからこそ、1万2000店舗で出されるおでん大根の品質が保たれているというわけです。
◆農場編
加工場を見たあとで、この大根が育てられているという農場も見せてもらいました。本当はこの日も収穫が見られる予定だったのですが、当日になって他で急にサトイモが必要になって、そちらの収穫を優先することになり、大根の収穫は見られませんでした。大規模に管理した農場であっても、日々変わる需要によって仕事のバランスは変わるということを感じました。
農場は先ほどの加工場から車で10分弱ほどの場所。
遠くに見えている建物のところまで、ずっと岡野農場の敷地です。
振り返った反対側も、建物のあたりまでずっと岡野農場。
ここで育てられているのが先ほど見てきたおでん大根のもとになる大根。青果店で売られている大根はLサイズが多いですが、それよりも一回りは大きいサイズです。おでん用の加工を見てきたあとだと、確かにそれぐらいの大きさが必要だと納得。
大根を狙って、電柱の上に待機するカラス。敷地の端の方の大根をちょんちょんと突いていくそうで、「これ1本丸ごとやるからつついてくれ、と思うのに、ちょっとずつつついては隣の大根にいくから困る」と岡野さん。
頭上を飛んでいるのはトンビ。
散水栓の上に1羽ずつ。ここにも厳密なナワバリが存在して、外敵が入ってくると激しく攻撃するそうです。
カラスがとまっている散水栓もありました。
今回見せてもらった大根は12月ごろに収穫予定のもの。寒くなるまでは65日ほどで収穫できますが、作付けが1週間遅くなるごとに収穫が1ヶ月遅くなる、というぐらいに生育ペースが変わるそうです。しかし、生育ペースがゆっくりだと、それはそれで「サイズが大きくなりすぎるから急いで収穫しなければ」と焦る必要もないのだとか。
一方で、同じ作物を連続で作付けすると弊害が出るため、来年はここでは別の作物が作られる予定。大根は今年サトイモなどを作っている場所で作ることになります。ローソンのおでん大根のほとんどをこのローソンファーム鳥取がカバーしていることを考えると、農地面積が約70haというのもわかる気がします。
ローソンファーム鳥取では、農場と加工場が一体となっておでん大根を作っているので、収穫から加工まで新鮮なまま進められることが大きいと岡野さんは語ってくれました。
ちなみに、ローソンの2015年版おでんは7月31日から発売中。今年は地域別に6種類のつゆが用意されています。このローソンファームから出荷された大根は1つ77円(税別)。1つで11kcalと低カロリーなことから、2つ買っていく女性も多いのだとか。朝夕の冷え込みが大きくなってきているので、ぜひおでんで温まってください。
2015年版おでん販売開始 | ニュースリリース | 会社情報 | ローソン
http://www.lawson.co.jp/company/news/106369/
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