取材

ベジタス「野菜工場」亀岡プラントで野菜の安定供給の次世代スタイルを見た


農薬を全く使わず無菌室で水耕栽培と光・温度・湿度のコントロールによって野菜を作る「ベジタス」の「野菜工場」、そのミニサイズ版を昨年「FOODEX JAPAN 2011」にて取材したのですが、本家本元の「野菜工場」とは一体どんなものなのだろう?ということで、京都府亀岡市にある「亀岡プラント」に向かい、その実態を見せてもらうことにしました。

ベジタス
http://www.vege-tus.com/

場所は「京都府亀岡市余部町蚊又54番地」に位置し、京都縦貫自動車道の亀岡インターチェンジのすぐそばにあります。

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道路を進むと左前方、白色の建物に「ベジタス」を展開する「株式会社スプレッド」の「SPREAD」の文字が青色で見えます。


工場地帯のようなプラントが密集している場所を想像していたので、水田に囲まれている風景は圧巻。


黄金色に輝く田園風景が周囲には広がっています。


それでは早速中へ入ってみます。


建物の内部に案内してもらい、3階から窓越しに「野菜工場」を見せてもらうことに。部屋を暗くして……


窓のクロスをあげると……


ズラリと並ぶレタスが見えます。1ラインで約600個分のレタスが栽培されており、このフロアにあるのは全14ライン。これが1~4階の4フロアに渡って生産されているわけです。なお、一番手前に見えているのが栽培日数が49日目のレタスで、50日目に出荷になります。他社の野菜工場は35日などの高速回転をウリにしているがそれをすると味がどうしても落ちるので、「ベジタス」では多少割高でも一番「レタスの味」になる50日となっています。


「野菜工場」は「土を使わずに水耕栽培で野菜を育てることにより農地を垂直化できる」というのが特徴で、このように1ライン3層で野菜が栽培されています。これによって限られた土地で多くの生産物が収穫できるというわけ。ここからは見えませんがさらに奥にある第2工場では1ライン4層の栽培が可能となっており、さらに高密度化されています。「亀岡プラント」では全て合計すると1日に約2万3000株の生産ができるようになっており、これほど多くの供給力を持つところは他には無いとのこと。


栽培のためには温度、湿度、光、CO2、養液などの環境を整える必要がありますが、例えば養液に使う水は野菜が吸い込んだ分だけしか使用しないので、露地栽培に必要な量の20分の1にまで抑えられています。


逆にコストが一番かかるのが、光合成に必要な光をあてるために使う蛍光灯の電気代。LED蛍光灯は試してみたが、おそらく現在の技術上の限界からまだ光量の問題があるためなのか、野菜がまともに育たなかったとのことです。


左側は蛍光灯が消してあり右側は蛍光灯がついていますが、これは基本的に電気代の安くなる夜間に照射し、そこでまかないきれなかった分を昼間に照射するという工夫がなされているため。


無農薬、無菌状態で栽培できるのも強みですが、他には栽培環境をコントロールすることで一定の品質を維持し続け、さらには季節や天候にも左右されないために安定的に生産できるというのも強み。


このため、価格変動が無く一年を通じて同じ価格で販売することが可能となるのです。


現在は4階建てとなっており、細かい作業はすべて人力。なので、上から下へ野菜をおろしたり、さまざまな現在人間が行っている作業などをうまくオートメーション化できれば、将来的には30階建てにすることも可能だそうです。現在は50人~60人ぐらいで毎日せっせと棚を移動させたりしており、この人件費部分が価格が高い原因なので、いかにして自動化するかが今後のポイント。


まるでサーバールームのような見た目のせいか野菜を作っているとはなかなか信じてもらえず、4年前くらいは「この野菜は大丈夫なの?」「土がなきゃヤダ」と見学に来られた人が怪しむレベルだったとのこと。しかしながら、現在では「無農薬かつ無菌状態で育てられているので傷みにくく、そのうえ土もつかないので買ってすぐ洗わずにそのまま食べられる」ということが消費者への強いアピールとなっており、リピーターが非常に多いそう。また、3.11の震災以降は「放射能に汚染されていない」(もちろん実際に検査済み)ということで、さらに需要が増え現在では供給が追いついていない状態となり、今後さらに工場を拡張する予定だそうです。


「ベジタス」は安定供給が最優先なので価格は露地栽培のものより高いが乱高下したりはしないのがウリで、「気候変動リスクがなく安定供給できる」のが最大のポイントだそうです。試行錯誤を4年間繰り返して今の安定供給に至っており、例えば蛍光灯を付けると、工場全体では数が多いため、実は内部の温度が上昇したり、それによって空気の循環が妨げられるなど、実際にやってみないと分からない壁が非常に多いようです。また、それぞれの大きさが一定だというのもウリ。地元のお弁当屋さんがお弁当のおかずの区切りに使う「バラン」をこのレタスで置き換えたところ、見栄えがする&食べられるので、ヒットとなりました。意外なところが当たる、とのこと。


例えばスーパーに出しているケースだと、同業他社では最低でも20パックずつで、しかも外部の流通業者を使うので週に3回の輸送しかできず、量が多いので売り切ることができなかった場合は廃棄になったり値引きシールを貼ったりせざるを得ないのですが、「ベジタス」の場合は自社流通を持っているため、最小単位6パックで毎日出荷できるようになっており、この結果、「ベジタス」のものはロスが極端に少なくできるのが好評となり、「ベジタス」全体の生産のうち、なんと「スーパーに出荷しているのが全体の8割」となっているそうです。


実は「スプレッド」を傘下に持つ「トレードグループ」の中には物流機能を持つ企業があり、そこを利用して配送しています。つまり、この独自物流ネットワークを持つからこそ、他社には無い小ロットでの毎日配送を実現しているのだそうです。


また、海外からの引き合いもあり、中国・韓国・台湾がこの設備をほしがっており、中東も水が少ないが電気代はまかなえるので引き合いの話がありましたが、工場という「ハコ」を売るのではなく、作った野菜を売る段階なので、工場のシステムを売るというレベルには至っていないようです。「今はまだ需要に供給が追いついていない状態、他社の野菜工場との間で競争になっていないぐらい需要に追いついておらず、しばらくは増産できる設備の整備に力を入れていく」とのこと。そのうち競争が生じるようになれば、例えばコショウなど他の野菜作りにも力を入れていきたいということでした。


なお、このレタスが栽培されている部屋の内部に入る時は、衛生管理のために以下のような衛生服・衛生帽・長靴を着用しています。


建物の内部はこんな感じ。白を基調とした内装で清潔感があります。


こちらの「野菜工場」で栽培されているのは主にレタスです。露地栽培のものと比べると柔らかいが最近ではそれが好評で、野菜特有のえぐみも少ないとのこと。無菌であるため腐りにくく、冷蔵庫に入れると普通のレタスよりも長持ちして、最大で10日はもつそうです。また、無農薬で無菌状態、そのうえ土もつかないので洗う必要性がなく、袋から出したら速攻で食べることが可能。


例えばレタス(税込198円)はエクセルシオールカフェのメニューで使われています。理由は「安全性の高い工場レタスが評価されているから」とのことです。


無菌状態なので衛生状態が格段に良いところが評価され、安全性があるとして某航空会社の機内食にも採用されています。


レタスの他に過去にいろいろと生産しており、例えば水菜が外食産業の店には非常に評判が良かったそうです。理由は土がついていないので、客が食べたときにじゃりじゃりせず、クレームがゼロになるため。このように水耕栽培だと土が付かないメリットがあるが、コスト的に割に合わなかったので今は水菜は生産されていません。ほかにもいろいろと「こういうものを作って欲しい」という要望がありますが、ほとんどがイチゴやクレソンなど価格が乱高下して安定しないものが多いとのこと。


また、現在の品種4つのうち、一番新しい「モコレタス」は、「レタスが嫌いな子どもでもコレだと甘みがあるため食べてくれる」ということで評判が良いとのこと。


プラントの建設にこの亀岡を選んだ理由の一つが「京都縦貫自動車道のすぐそばで、輸送に便利な立地条件を備えていた」ということだそうです。収穫直後のみずみずしい野菜がすぐに配送できるのが強み。他には農地から宅地への申請ができて、水があって、電気があって、というようないくつもの理由を考えるとここになったそうです。なお、亀岡のプラント建設にかかったお金は15億円程度で、また次の工場の建設も考えているとのこと。


そして、以下の写真が出荷の際に使われる低温輸送が可能なトラック。ちょうど収穫されたものをトラックに積み荷している最中でした。


なお、市場の需要を満たして既存のレタスと勝負するためにも、さらに工夫を積み重ねて味や品質は落とさずに値段を「158円」まで下げることが現時点での目標であり、最終的には「100円を切る」ことによって人口の多い都市部以外の日本全国に普及させることが可能となるはずで、そこまで来ればさらに別の野菜も「野菜工場」で作っていくことでより安定した供給が可能になっていくはず、とのことです。

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in 取材,   , Posted by darkhorse_log