人の手によって誘発される地震のメカニズムが判明

By PROColin Crowley

2009年からアメリカの東部及び中部で地震の発生が急増しており、その多くが水を大量に岩盤に送り込む原油やガス、地熱エネルギーの採掘に関連しているとして、アメリカ合衆国内務省の傘下にあるアメリカ地質調査所が、エネルギー採掘と地震の関連性を示すレポートを公開したことがあります。レポート公開時点では、採掘で水を岩盤に送り込むことと地震発生のメカニズムの詳細が科学的に示されていませんでしたが、カリフォルニア工科大学とアメリカ、フランスの合同研究チームが、そのメカニズムを世界で初めて明らかにしました。

Supporting Online Material for - Guglielmi-SM.pdf
(PDF)http://authors.library.caltech.edu/58195/2/Guglielmi-SM.pdf

Seismicity triggered by fluid injection–induced aseismic slip - CaltechAUTHORS
http://authors.library.caltech.edu/58195/

地球の表層はプレートと呼ばれる硬い岩盤でできていて、プレート同士が押し合いをしている境界部にかかる応力が局所的に高まり、断層が生じることで地震が発生します。これが一般的に知られている地震のメカニズムですが、今回明らかになったのは、人為的な原因によって発生するとされている誘発地震に関してです。

アメリカにはサンアンドレアス断層というカリフォルニア州南部から西部にかけて約1300kmにわたって続く巨大な断層がありますが、それと同時に巨大な断層から分岐した小さな断層も多くあるとのこと。研究チームは、約1.6km以上の断層上に大きな穴を開けて、その穴に液体を注入する実験を行いました。まずは、約280mにもなる穴を岩盤に開けて、その中に圧力・出水率・岩盤の動きなどを測定するセンサーを搭載したSIMFIPという機械を投入。その後に約1トンの水を圧力を使って注入し、SIMFIPが記録したデータを分析したというわけです。

By Michael R Perry

分析したデータによれば、水を注入してからほどなくして地下にある岩盤がゆっくりとすべり始めたのとこと。ただし、このタイプの動きは「非地震性すべり」と呼ばれ、地震発生と直接的な関係がないとされています。しかしながら、非地震性すべりにより、岩盤の表と裏にある岩が分離され、岩盤を流れる水の量が急激に増加する現象が発生。水を注入してから18分後、非地震性すべりの発生割合が増加し、岩盤からは地震波が発生しマグニチュード1以上3未満の微小地震が大量に発生しました。

実験からは、岩盤に大量の水を注入することが直接微小地震を発生させてはいないものの、大量の水により多数発生した非地震性すべりが岩盤にかかる応力を増加させて地震を引き起こしていることが判明しました。

実験に参加していないカリフォルニア大学サンタクルーズ校の地震学者のEmily Brodsky氏は「カリフォルニア工科大学とアメリカ、フランスの合同チームによる研究で、実験は地震のメカニズムに迫るものであり、微少地震発生の全体像を今までにないレベルで捉えている」と評価しています。また、今回の研究結果は、原油や天然ガス、地熱エネルギーの採掘を行う企業にとっては今までに得たことのない貴重なデータであり、これを踏まえた採掘計画が期待されます。

なお、地震については、アメリカ地質調査所が多数のスマートフォンに搭載された加速度センサーから地震の揺れを測定して集計し、スマートフォンの位置、揺れの強さや方向から震源地を瞬時に割り出して通報する「EEW」をテストしたり、スタンフォード大学が世界中のPCに取り付けられたセンサーを利用した低コスト強震観測ネットワーク「QCN」を推進したり、メキシコでは地震到達の60～90秒前に警報を発することが可能な地震早期警報システムが開発されたりなど、さまざまな分野で早期に発見して大きな被害を防ぐための新しい技術の開発が進められており、今後のさらなる進展に期待がかかります。