メモ

サッカーから暴力を根絶するためにブラジルで編み出された秘策とは?


プロスポーツはプレーする選手とそれを支える観客(ファン・サポーター)がそろって成立するものですが、時にふがいない姿を見せればファンから罵詈雑言が飛んでくることもあります。さらに、地域や国の威信をかけて戦うような大舞台ともなれば、サポーター同士の衝突から始まる大規模な群集事故ミスを侵した選手をファンが射殺してしまう、といったショッキングな出来事にまで発展してしまうこともあります。

そんな暴徒化する熱烈なサポーターたちに頭を悩ませたブラジルのサッカークラブが、サッカースタジアムでの暴力をなくすためにある秘策を取り、これが大きな効果を発揮して、普段はいがみ合っているライバルチームのサポーター同士が笑顔で肩を寄せ合う心温まる光景を生み出しました。

To End Soccer Riots, This Brazilian Club Forces Fans To Sit Next To Rivals | Co.Exist | ideas + impact
http://www.fastcoexist.com/3047102/to-end-soccer-riots-this-brazilian-club-forces-fans-to-sit-next-to-rivals

サッカー王国ブラジルでサッカーの試合を観戦しに行く場合、「世界最高峰のプレーを見る機会」を得られますが、「見ず知らずの人に殴られたり運が悪ければ殺されたりする」可能性もあります。実際にブラジルでは何度もサッカーを観戦しにきたサポーターによる暴力事件や暴走事件が起きており、160人以上の兵士が出動する大乱闘が起きたり、ロケット花火を敵チームのGKに発射したりと、スタジアムで「何かが起こる」率は異常の領域。ここ数十年間だけをみても、ブラジルではサッカー関連でなんと200人以上が死亡しているそうです。

そんなブラジルサッカーから暴力を排斥するために立ち上がったのが、ブラジル・ポルトアレグレに本拠地を置く、名門サッカークラブの「SCインテルナシオナル」。クラブカラーは赤と白で、2006年には日本で開催されたFIFAクラブワールドカップにてアレシャンドレ・パトを擁して優勝したこともあるチームです。同じポルトアレグレの街を本拠地とするグレミオとはライバル関係にあり、2チームの対戦は「GreNal(グレナル)」と呼ばれ、ブラジル国内でも人気の高いビックマッチとされています。

By Editorial J

インテルナシオナルがスタジアムから暴力をなくすために取った施策というのは、スタジアム内に「トルシーダ・ミスタ」という席を設けることでした。通常、サッカーではホームチームのサポーターとアウェイチームのサポーターにはそれぞれ別個の席が与えられ、両チームのサポーターの対立が深い場合、両サポーターの間に間衝地帯が設けられることもほどです。しかし、インテルナシオナル考案の「トルシーダ・ミスタ」では、ライバルチームのサポーターとペアで来場する必要があり、ライバルサポーターが隣り同士に座って試合を観戦する必要がある、というものでした。


インテルナショナルのメディア&マーケティング部門の総括者であるルイス・エンリケ・ヌニェスさんは「フィールド内外ではライバルであろうと、相手には尊敬と慈愛の心を持って接する必要がある」と、実験的に「トルシーダ・ミスタ」を設けた理由について説明しています。

実際に「トルシーダ・ミスタ」を設置したことで、伝統の一戦であるグレナルがどうなったのかは以下のムービーを見れば分かります。

Video SidebySide - YouTube


インテルナシオナルとグレミオ


2つのチームによるダービーマッチは世界でも10本の指に入るくらいに熱烈な試合です。


インテルナシオナルのサポーターと……


グレミオのサポーター。それぞれが自チームを熱烈に応援。


ブラジルでも有数のライバル関係です。


試合には何万人ものサポータがつめかけ、チームを鼓舞します。


ブラジルなので、試合以外もかなりど派手でまるでお祭り騒ぎです。


しかし、そんな世界有数のダービーマッチでは暴力が絶えません。


そんなスタジアムに家族連れのサポーターや平和を取り戻すにはどうすれば良いのでしょうか?


「他チームのサポーターは敵ではない」ということをサポーターに分かってもらうにはどうすれば?


スタジアムに続く道


楽しそうに歩くインテルナシオナルとグレミオのサポーター


スタジアム内でもインテルナシオナルとグレミオのサポーターが一緒に座って試合を観戦


右の赤ん坊はグレミオサポーター……?


両チームのサポーターがごちゃ混ぜになって試合を観戦。


試合を楽しむという点では同じですが、楽しむ瞬間はまるで正反対。


それでも、両チームのサポーターがガッチリハイタッチしているように、仲良く観戦が行われました。


老若男女がこれまで味わったことのない「敵チームのサポーターと一緒に試合を観戦」という体験。しかし、そこには普通の試合では見られないようなとびきりの笑顔が溢れていました。


「敵味方ごちゃ混ぜで試合を観戦する」というアイデアが生み出した平和の輪は、スタジアムの外にまで広がっています。


「トルシーダ・ミスタ」はライバルチームのサポーターからも非常に好評で、この席を設けた試合では誰もケンカを起こさなかったそうです。それどころか、サポーターからは「良いアイデアだ!」という意見が噴出したようで、ヌニェスさんは「ファンから反発の声など一切なかった。それどころか、スタジアムにきたファンには非常に気に入ってもらえたようで、スタジアム内に独特の熱気さえ生み出したよ」とコメントしています。

初めて「トルシーダ・ミスタ」が設けられたのは、2015年3月1日に行われたインテルナシオナル対グレミオの一戦。初の試み以降、インテルナシオナルは既に2度この席を設けており、今後も実施予定とのこと。さらに、ブラジル国内の他のサッカークラブも席の導入を検討しているそうです。


「ここ数年間、サッカーにおいて暴力的な文化が形成されてきた。そして、ピッチ外の暴力から生まれた対立関係は、試合の中にまで持ち込まれてきた。しかし、今こそこういった暴力的な習慣をなくすための挑戦を行うべきだ」とヌニェスさん。

現地のサポーターたちはTwitter上でも仲良し具合をアピール中。

#GreNal #paznofutebol pic.twitter.com/J1Prz8T7A6

— Seleção Brasileira (@BrazilStats)

Povo civilizado é outro nível... #grenal #torcidamista #gremio pic.twitter.com/xe8i3aJHzt

— Pedro Bilal (@PedroBilalGlobo)

Vai #GreNal!!!!! Dia de #Grêmio!! Dia de #Inter!! @danielahil e @mblackcolorado pic.twitter.com/NWD05lz5J0

— GRENALIZANDO (@Grenalizando)


規模の大小を除けば、サッカークラブがある国には大抵の場合ライバルクラブが存在するもの。そういったライバルクラブのサポーター同士がいざこざを起こすことはそれほど珍しいことではありませんが、インテルナシオナル発の両チームのサポーターが混合で同じエリアに座る「トルシーダ・ミスタ」が広がれば、スタジアムから暴力を追放するための第一歩になる可能性は十分にありそうです。

なお、インテルナショナルだけがスタジアムから暴力をなくそうと活動を行っているわけではありません。ブラジルでも屈指の犯罪都市として知られる港町レシフェにあるスポルチ・レシフェでは、サポーターの母親をセキュリティガードとして雇うことで、「母親の前では暴れられない」という心理を突く施策が取られています。

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in メモ,   動画, Posted by logu_ii

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