サイエンス

NASAのオリオンに搭載されたCPUは2003年のApple iBook G3と同レベル


スペースシャトルのあとを引き継ぎ、火星への有人探査を最終目標にするNASAの新型宇宙船「Orion(オリオン)」が、最初の飛行試験(EFT-1)を無事に成功させ、アメリカの宇宙探査の新しい時代の幕が開きました。しかし、そのオリオンに搭載されたCPUは、なんと10年以上前のMacに搭載されたCPUと同じものであることが分かっています。

Nasa's Orion has same processor as 2003 Apple iBook G3 | Daily Mail Online
http://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-2867009/How-phone-powerful-ORION-Computer-Nasa-s-Mars-spacecraft-processor-2003-Apple-iBook-G3.html

NASAの新型宇宙船オリオンは、2014年12月5日にフロリダ州のケープカナヴェラル空軍基地(CCAS)から打ち上げられました。オリオン打ち上げの様子は以下のムービーで確認できます。

Liftoff of Orion - YouTube


デルタIVヘビー・ロケットに搭載されたオリオンは、地球を1周した後、ロケットの第2エンジンが点火して最大高度5800キロメートル上空に到達。予定通りの軌道を周回した後に大気圏に再突入し、2014年12月6日にカリフォルニア州沖の太平洋へ着水、無事、飛行試験(EFT-1)に成功しました。


オリオンがパラシュートでゆっくりと落下する様子は以下のムービーで確認できます。

Watch NASA's Orion splash down in the Pacific Ocean - YouTube


アメリカ海軍のUSSアンカレッジに引き上げられるオリオン。


大気圏突入時には2000度を超える高温に達するため焼け焦げたような跡がはっきり確認できます。


スペースシャトルから宇宙開発を引き継いだオリオンによるEFT-1成功は新しい宇宙船の歴史的第一歩であり、2030年までに火星への有人探査を実現するという壮大な夢に一歩近づいたと言えそうです。


しかし、全世界の期待を一身に受け最高の技術が惜しげもなく投入されているはずの新型宇宙船オリオンの「頭脳」にあたるCPUには、2003年からAppleのiBook G3に搭載されていたIBMの「PowerPC 750FX」が採用されているとのこと。このPowerPC 750FXの処理速度はスマートフォンGalaxy S3に搭載されたSoCと同程度とのこと。つまり、アポロ宇宙船は電卓よりも非力な演算能力であったという有名な話があるところ、この構図はオリオンでも再現されたというわけです。


なぜオリオンに最新のスマートフォンよりも能力の劣るクラスのCPUが採用されたのかという最大の理由は「信頼性」です。つまり、多くの宇宙線にさらされる過酷な宇宙空間では最新のチップよりも古いチップの方がトラブルを起こす可能性が低いという判断によるもの。なお、NASAによると最新のスマートフォンにも負けるオリオンのCPUは、アポロ宇宙船の4000倍、スペースシャトルの400倍、現在国際宇宙ステーションで使用されているCPUの25倍高速であるとのことです。


また、オリオンのCPUはトラブル発生時には約20秒で再起動することができるとのこと。さらにオリオンには万一の故障に備えてバックアップ用CPU2基を含めて3重のセキュリティ体制が採られており、3基同時に再起動が必要な緊急事態に陥る確率は187万分の1という鉄壁のガードを誇っています。


EFT-1で得られたデータは今後のオリオン開発に活かされることになり、次回の飛行試験「EM-1」は打ち上げに新型ロケットSpace Launch System(SLS)を使って4年後の2018年11月が予定されています。EM-1が終了すると、いよいよ有人飛行試験がスタートする予定です。

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in ハードウェア,   サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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