乗り物

航空機の窓をなくして機内の壁面全体をディスプレイ化するメリットとは?


飛行機のフライトの楽しみの一つに「窓から見える景色」が挙げられることも多いもので、上空からはるか下方の景色をぼんやりと眺めたり、フライトのルートによってはオーロラが見えたりすることもあり「必ず窓際に座りたい」という人も多いはず。イギリスの研究開発機関では、飛行機から窓そのものを取り去ってしまう代わりに、乗客が座る機体内部の壁面に機外の映像を映しだすことができ、しかも環境に優しい「壁面ディスプレイ」技術の開発が進められています。

The windowless plane set for take-off in a decade | Business | The Guardian
http://www.theguardian.com/business/2014/oct/26/innovations-windowless-plane?CMP=twt_gu

この技術を開発しているのは、イギリス北東部を拠点とするThe Centre for Process Innovation(CPI)で、同研究所が作成しているムービーではその完成時のイメージ映像を見ることができます。

Aerospace Windowless Aircraft - The Future Inspired by CPI


これが壁面ディスプレイが使われている機内のイメージ映像。まるでガラス張りになったような、従来では考えられなかった開放感が感じられます。一部のシートにも映像が表示されているのが興味深いところです。


見えているのは実際の光景ではなく、機外のカメラが撮影した映像。そのため、処理を加えることで追加の情報を表示することも可能になります。


ドリンクのオーダーなども、画面をタッチすることでできるかもしれません。


また、機内エンターテインメント設備のモニタ画面として使うことも可能。


向こうに見えているのは東京タワーでしょうか。実際には画面との距離や角度などの問題をクリアすることが必要になると思われますが、従来とは比べものにならない光景が広がることになりそうです。


このように、機内エンターテインメントなどに多くのメリットをもたらしそうな壁面全体のディスプレイ化ですが、本来この技術が目指しているのは「機体の軽量化」というもの。航空機の場合、機体の重量が1パーセント削減されると燃料の消費量が0.75パーセント少なくなるため、一度のフライトで多くの燃料を消費する航空機にとって機体の軽量化は永遠のテーマといえるものとなっています。

窓をなくすことで機体の軽量化を行うことができる理由は、機体の補強を省略できることにあります。航空機は一般的に軽量なアルミニウム合金などで作られており、幅6メートルの機体に対して厚さおよそ4mmの板材が使われています。これを350mlのアルミ缶と同じ大きさに縮小すると、なんとその厚さは0.05ミリという非常に薄いものに。ごく単純にいうとアルミホイルでアルミ缶を作るような状況なのですが、この状態でも十分な強度を保つために、航空機の外板内部には補強のための骨組みが張り巡らされています。

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しかし、せっかく補強した胴体に窓を取り付けるために大きな穴を開けてしまうと強度が落ちてしまい、それを補うために余分な材料を使って補強をする必要があります。

いわば「ムダ」な重量を軽減するために活用されることになりそうなのが、CPIが持つプリンテッドエレクトロニクスの技術。電子回路や機器を印刷して形成することで自由度の高い製品作りを行う技術であり、この技術を用いて壁面そのものをディスプレイに変えてしまうことで、機体の軽量化と乗客の快適性が同時に実現されることになるとされています。


壁面ディスプレイには、バックライトなどの付帯デバイスが必要ない有機ELが用いられる見込みで、これはスマートフォンなどでも用いられることの多い技術。これを実現するには曲面に印刷する技術が求められ、CPIが持つ高い技術力が必要とされるのです。

なお、CPIによれば環境性能と快適性を両立できるという壁面ディスプレイの実現までにはおよそ10年程度を見積もっている、とのことです。

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in 乗り物,   動画, Posted by darkhorse_log