サイエンス

ガラスよりも軽くて丈夫な透明の木材が開発される


普通の木の板をガラスのように透明にした上で、ガラスよりも丈夫で優れた断熱特性を持つようにする技術を、メリーランド大学の研究チームが発表しました。将来的には、断熱性能の高さからガラスに置き換わる建材として活躍することが期待されます。

Solar-assisted fabrication of large-scale, patternable transparent wood | Science Advances
https://advances.sciencemag.org/content/7/5/eabd7342


Scientists develop transparent wood that is stronger and lighter than glass | CBC Radio
https://www.cbc.ca/radio/quirks/scientists-develop-transparent-wood-that-is-stronger-and-lighter-than-glass-1.5902739


木材は基本的に、植物繊維の主成分である「セルロース」と、セルロースを結合して強度を生み出す「リグニン」の2つで構成されています。このリグニンに含まれる「発色団」と呼ばれる分子によって木材が茶色に染まり、内部まで光が通過することを防いでいます。

このリグニンを除去することで木材を透明にする試みは以前から行われていました。しかし、リグニンの除去には高熱下での長時間の作業と有害な化学物質が必要で、製造コストが非常に高くなってしまうことが欠点でした。

そこで、メリーランド大学の研究チームは、長さ1メートル・厚さ1ミリメートルの木の板に、普通のペイントブラシで過酸化水素水を塗布し、日光あるいは紫外線ランプの下で1時間ほど放置しました。すると、過酸化水素によってリグニンが漂白され、木材は白くなりました。


次に、研究チームは海洋開発用に設計された透明なエポキシ樹脂を木材に注入し、木材の中にある小さな空間や穴をすべて埋めて硬化させました。木材の中にエポキシ樹脂が充てんされることで、白かった木材が透明になりました。この透明化の原理は、白くて不透明なティッシュを水に濡らすと、半透明になって向こう側が透けて見えるようになるのと同じ理屈だと、研究チームは説明しています。


エポキシ樹脂によって透明になった木材は、可視光のおよそ90%を透過させるため、ガラスのように高い透明度を誇ります。同時に、透明な木材は木材由来の強度と柔軟性も持ち合わせているため、ガラスよりも割れにくい上に、ガラスよりも軽い素材となっているとのこと。

さらに、この透明な木材は断熱性が非常に優れていることが判明。窓ガラスは建物の熱損失の大きな要因となることから、透明な木材は建物のエネルギー効率を高く保つのに役立つことが期待されます。また、過酷な環境下に設置される太陽光発電パネルのカバーに応用することも可能です。


研究チームによれば、透明にできる木材はバルサからオークまでさまざまで、木材のカットされた方向に関係なく透明化が可能だとのこと。また、今回発表された技術では高熱環境を必要としないので、製造コストも低く済むと研究チームは主張しています。

ただし、今回発表された技術はあくまでも実験室規模のものであり、工業規模にまでスケールアップされてはおらず、実用化には時間がかかります。それでも、研究者は透明な木材を「新しい建材として大きな可能性を秘めています」と評価し、「理論的には家全体を透明にすることも可能です」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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