「ドラえもん寺」など日本だったら怒られそうなタイのお寺4つ
日本で「お寺」といえば伝統的な建築様式を守ったものが大半ですが、同じ仏教国・タイには型破りな寺院がいくつも存在します。教会寺・ドラえもん寺・SF寺・地獄寺の4つを紹介します。
こんにちは!世界新聞特命記者の植竹智裕(うえたけともひろ)です。世界一周中の僕は現在、11ヶ国目インドにいます。(赤線は空路、青線は陸路で移動)
◆タイの仏教とは
タイと言えば国民の95%が仏教徒という仏教国のひとつとして有名ですが、タイの仏教寺院はオレンジ色の鮮やかな屋根に金の装飾が施されたものが主流です。それだけでも中国を経由して独自の形態を得た日本の仏教寺院とはだいぶ趣が異なりますが、タイでは今、技術の進歩や流行を取り入れて、更に仏教寺院建築が新しい時代を迎えようとしています。今回は僕が訪れた4つの現代・近未来的な仏教寺院をまとめてみました。
◆その1:王室公認!西洋風仏教寺院 ワット・ニウェートタマプラワット(Wat Niwet Thamaprawat)
タイ中部アユタヤ県近郊にあるこちらの建物、一見するとキリスト教の教会にしか見えません。
中もステンドグラスや西洋風の装飾が施されています。
でも中にいるのは仏教僧……?
そして祀られているのは紛れもなく仏像です。
タイ国政府観光庁ホームページによると、こちらは時の王であるラーマ5世(1853~1910)によって建てられた寺院なのだそうです。彼の父であるラーマ4世は、「西洋のキリスト教世界に触れ、タイの仏教の合理化を図った人物」だったとのことで、ラーマ5世自身も海外の建築様式に造詣が深かったからこそ実現し得た、「型に囚われない仏教寺院」の草分け的存在といえるでしょう。仏教国を治める王自らが命じて建てた事からも、この国での宗教建築に対する寛容さが伝わってきます。
◆その2:壁画にアニメキャラクターがいて子ども受けしそうな仏教寺院 ワット・サンパシウ(Wat Sam Pasieo)
タイ中部のスパンブリー県にあるこちらの寺院は、一見するとタイでよく目にする寺院ですが……
駐車場にはドラえもん?
スマートフォンなのかタブレットなのか、現代技術の産物を抱く像もありました。
中に入ってみると、比較的近年のものと思われる色鮮やかな壁画が描かれています。
ですが、よく見てみると……ドラえもん!!
ここにも!
ここにも!
ドラえもんだけではなく、アングリーバードのキャラクターや、
仮面ライダーも描かれていました。住職によると700年近い由緒ある寺院だそうですが、壁画を塗り直した際にこれらのアニメキャラクターが描き足されたのだとか……。日本で同じ事をしたらかなり重い罪に問われそうですが、この絵によって知名度も上がり、思わぬ集客効果をもたらしているようです。
◆その3:まるでSF!壮麗なファンタジック仏教寺院 ワット・ロンクン(Wat Rong Khung)
タイ北部チェンラーイ県近郊にあるこちらの寺院は公式パンフレットによると「チェンラーイ出身の芸術家Chalermchai Kositpipat氏が1997年から建設を開始したもの」だそうです。タイでは珍しい、白と銀を基調として鏡細工が施された寺院は、西洋のゴシック建築やSF世界の影響を伺わせ、思わず息を呑む美しさです。
入り口には何故かプレデターの彫刻が!
寺院に続く道にはおどろおどろしい彫刻もありますが、仏教というよりは人間の性質や状態を表現しているように見えます。
片方が口を開き、片方が口を閉じている阿吽の形相を呈している事から、日本の金剛力士(仁王)像に相当するものだと思われますが、こちらの像も全て白塗りに鏡細工が施されていてどこか近未来的な印象を受けます。
この寺院の見所は幻想的な外装だけではありません。寺院の内部には壁画が描かれていて、中でも最も特徴的なのが入り口の壁画。内部は残念ながら撮影禁止でしたがポストカードにもなっている壁画図面はこのようになっています。
下部にはセーラームーンやトランスフォーマーなどアニメや映画の登場キャラクターが描かれています。写真には映っていませんが、ドラえもんやスーパーマン、ハリー・ポッターなど近代になって誕生したキャラクターが描かれているほか、21世紀最大の戦争の象徴としてウサーマ・ビン・ラディンとジョージ・W・ブッシュの顔や9.11同時多発テロで炎上する貿易センタービルの絵が描かれているなど、ここ数十年の間に起こった出来事に由来するものが描かれているのが特徴的でした。
この寺院は2014年5月の地震で一部が崩壊してしまったそうで、今でも地震の爪痕が残されています。この寺院の完成にはあと60~90年はかかると言われています。まさに東洋のサグラダ・ファミリアと呼べる宗教建築だといえるでしょう。
◆その4:電気仕掛けの地獄寺 ワット・パーラックロイ(Wat Pa Lak Roi)
タイ北東部のナコーンラーチャシーマー県にあるこちらの寺院も一見すると、ごく一般的なタイのお寺にしか見えませんが、別名「地獄寺」とも呼ばれています。
その理由がこちら。広大な敷地内には人々が動物や悪魔に体を引き裂かれているようなグロテスクな像が100体以上置かれています。ちなみに、実際にはこの写真よりもさらにグロテスクな像が大半を占めています。
グロテスクな像以外にも不可解な像が乱立し……
なぜか頭部が別の動物になっている人間の像もありました。
しかし、それよりも目に焼き付いているのはお金(お賽銭)を入れると動き出すアトラクション(?)の多さです。
メンテナンスが行き届いていないのか、お金を入れても動かないという罠も用意されていますが、お金を入れると洋服を着たサルが踊り出したり……
【世界一周動画レポ】ワッパーラックロイ(地獄寺)アトラクション21 - YouTube
池に浮かんだガイコツが奇声を上げて近づいて来たりします。小さい頃、商店街でよく見かけた100円で動く乗り物を思い出しました。果たして仏教と何の関係があるのかはわかりませんが、思わずお金を入れたくなる仕組みである事は間違いありません。
ごく一般的に見える寺院のすぐそばにも電気仕掛けの像が沢山ありました。回転する仏教僧や……
巨大な緑色の化け物の両目から賽銭を入れる壺を持った像が交互に降りて来てお賽銭を回収するシステムです。僕の中では地獄寺というよりも電気仕掛けの寺という印象を受けました。
回転する仏教僧や緑色の化け物の動画はこちら。
【世界一周動画レポ】ワッパーラックロイ(地獄寺)アトラクション13 - YouTube
◆人とともに進化していくタイの仏教寺院
我々日本人から見ると罰当たりにも思えてしまうような寺院や、思わず息を呑むような壮麗な寺院まで、いろいろなものがありますが、伝わったルートや辿って来た歴史は違えど、これらは全て日本にある「お寺」と同じ仏教の寺院です。日本も仏教が根付いた国ですが、改めて見るとその世界観の違いに驚かされます。伝統を打ち破るような仏教寺院が建てられる反面、敬虔な仏教徒が大多数を占めるタイ、それとは対照的に伝統的な建築様式を守りつつ、仏教的な思想や習慣が薄らいでいく日本。対比してみると少し皮肉に感じてしまいますが、タイの仏教寺院はこれからも次々に生まれる新しい技術や価値観・世界観を融合して、変革を遂げていく事でしょう。そして、10年後には我々の想像を超えた技術と共に、想像を遥かに超えた型破りな仏教寺院が誕生しているかも知れません。
文・取材:植竹智裕 https://twitter.com/hiro_uetaken
監修:世界新聞 sekaishinbun.net
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