取材

建築家・黒川紀章がカザフスタンに計画した未来都市は今も拡大していた


2007年に亡くなった、日本を代表する建築家である黒川紀章氏が、中央アジアのカザフスタンの新首都をプロデュースしていたことをご存知でしょうか?

こんにちは!世界新聞特命記者の植竹智裕(うえたけともひろ)です。世界一周中の僕は現在、14ヶ国目キルギスにいます(赤線は空路、青線は陸路で移動)。


◆何も知らずに氷点下の国へ
11月12日までネパールに滞在していた僕が、次に目指したのはカザフスタンでした。きっかけはカザフスタン共和国大使館の公式サイトに書かれていた、2014年7月15日から2015年同日まで日本など10か国の国籍保有者はビザなしで最大15日間の滞在が可能という情報。ビザが要らないならば……そんな安易な気持ちから、カザフスタンの首都アスタナに飛ぶ事にしました。

◆カザフスタンとは
カザフスタンはソビエト連邦が崩壊した後の1991年12月16日に独立した国で、国境をロシア連邦・中国・キルギス・ウズベキスタン・トルクメニスタンと接しています。


サンダルに裸足、Tシャツにパーカーという軽い出で立ちでカザフスタンに降り立った僕が目にしたのはまさかの雪景色……。


気温は15時時点で0度、その後、アスタナには6日間滞在しましたが、日中でマイナス16度という日もあるほどの酷寒の地でした。


◆アスタナは未来都市
寒さにも驚きましたが、更に僕が目にした驚きの光景は、その街並みでした。飛行機ではなく、タイムマシンに乗って来てしまったかのような、近未来的な建物がシンメトリーに配置されています。写真中央に見えるのはAKORDAと呼ばれる大統領宮殿です。


街中には日本では見る事ができないような、それでいて西洋的とも言い難い前衛的な建物が並んでいます。この建物はコンサートホールでした。


◆何に使われている建物なのか?
これらの建物は一体何に使われているものなのでしょうか?建物には名称が書かれているものもありましたが、カザフスタンで使われているのはロシアと同じキリル文字……建物の用途を知るのは容易ではありません。ちなみに、この写真は「ツェスナバンク」という銀行です。


更に寒い時期だからか、扉は硬く閉ざされ、入ろうとすると警備員が出て来て、英語が通じず追い返されるという、なかなかのハードルの高さです。


◆未来都市の手がかりはピラミッド内部にあった
どんな用途で使われている建物なのか、そんな膨れ上がる謎を解く鍵が、このピラミッド状の建物に隠されていました。


600テンゲ(約390円)で入場でき、30分おきに専門のガイドが館内をロシア語と英語で案内してくれます。


曰く、この建物は「PALACE OF PEACE AND RECONCILIATION」と呼ばれていて、2003年に世界の宗教の指導者が集まる会議が開催された際に、大統領が提案し、イギリス人建築家のノーマン・フォスター氏によって設計されたものだとのこと。現在でも3年に一度開かれる宗教指導者の会議場となっているほか、アートギャラリー、展示室、コンサートホールなどとしても使われるそうです。ピラミッドの上部にはクレードル(ゆりかご)と名付けられたドーナツ型の会議場が備えられています。


下から見るとまるで宙に浮いているようです。


資料展示もあり、未来都市の航空写真が展示されていました。


冬は雪に包まれた幻想的な街並みが楽しめますが、暖かい時期に訪れれば、緑あふれる未来都市も楽しめるようです。


航空写真の下には、アスタナの建物の用途がカザフ語・ロシア語・英語で記された説明文がありました。


◆未来都市を設計したのは日本人
あまりの壮大さに思わず嘆息してしまいそうな未来都市ですが、なんと、この都市を計画したのは日本人なのです。Wikipediaの「アスタナ」の記事によれば、「アスタナが首都になったのは1997年の事で、1998年に行われた国際コンペで1位に選ばれた日本人建築家・黒川紀章氏の都市計画プランに沿って建設が続けられ、都市全体の完成は2030年とされている」とのこと。黒川紀章氏といえば、存命中、国内外の数々の施設や都市の設計を手掛けただけでなく、東京都知事選に出馬した事で記憶に残っている方も多いのではないのでしょうか?

以前、同じく黒川氏設計のマレーシア・クアラルンプール国際空港を訪れた際に、「これを日本人が設計したのか」と見て回ったものですが、まさかカザフスタンにも彼が考案した街が建設されているとは知りませんでした。

◆未来都市巡りしてみた
ピラミッドに展示されていたパネルの英語説明文をもとに幾つか建物を周ってみました。

1:SHABYT
ドーナツのように中央が開いた形のこちらの建物は遷都10周年を記念して建てられた多目的ホール・会議場だそうです。


2:MONUMENT ”KAZAKH ELY”
カザフスタンが独立した年(1991年)にちなんで91メートルの高さで設計された独立記念のモニュメントです。


3:KAZ MUNAY GAS BUILDING
中央が巨大なアーチ状に開いているこちらの建物は、石油・天然ガスを扱う国営企業のビルです。


4:THE PALACE OF INDEPENDENCE
2008年完成のこちらの建物はイベントやフォーラム、会議の会場、更にアートギャラリーや歴史博物館が入る複合施設として使われています。


5:NAZARBAYEV CENTRE
こちらのサーチライトのような建物は化学・教育機関の施設として使われているようです。


◆外国人旅行者でも気軽に入れる建物
上で紹介した建物にはアートギャラリーや博物館も含まれているため、外国人でも中に入れるのかも知れませんが、気軽に立ち入れる雰囲気は感じられませんでした。そんな中で、気軽に入れた施設が以下の2件です。

6:BAYTEREK
アスタナで一番の観光名所となっている高さ105メートルの塔です。


500テンゲ(約325円)で展望台に上れて、未来都市を360度見渡す事が出来ます。


4組の新婚夫婦が記念撮影をしていました。外国人旅行者だけでなく、現地の人々にも人気の観光スポットのようです。


7:KHAN SHATYR
こちらの建物は、2010年にオープンしたショッピングモールで、ETFE(熱可塑性フッ素樹脂)に覆われた世界一大きなテントなのだそうです。


中には世界的に有名なブランドの店舗や、ファストフード店、スーパーマーケット、子供向けのテーマパークなどが入っています。


◆未来都市の夜の顔
未来都市とは言っても夜になれば他の都市と変わらないのでは……?いえ、そんな事はありません。夜になると未来的な建物は煌々と輝き、日中とは違う顔を見せます。街が明るすぎて、夜でも空が白く光っているほどです。


ビルの側面が丸ごと巨大スクリーンになっていました。広告の内容はわかりませんでしたが、とにかくインパクトは絶大。


直前に滞在していたネパールでは毎日停電が起こっていたので、煌びやかなライトアップや巨大スクリーンなど、電力が豊富に供給されているのを目の当たりにして、「電力ってある所にはあるんだな」と思ってしまいました。


◆未来都市建設の背景
それにしても、なぜアスタナはわざわざ国際コンペを開いてまでして、未来都市として遷都するに至ったのでしょうか。黒川紀章建築都市設計事務所公式サイトのカザフスタン新首都アスタナ計画のページに、当時の都市計画の概要が詳細に記されていました。

それによると、アスタナが未来都市になった背景には「ソ連からの独立を象徴する都市として、21世紀型の最先端の新首都を建設する事によって世界にカザフスタンの存在をアピールする」という狙いがあったようです。

◆未来都市の未来
上述のように、国の威信を賭けた未来都市が完成するのは2030年予定。街では氷点下の中、次々に新しい建物が建てられています。


そして、2017年にはアスタナ万博の開催も決定しています。調べてみると、万博会場設計のコンペの動画も発見しました。これらのどのプランが採用されても、万博開催時には、アスタナはより一層、未来都市として発展を遂げている事でしょう。

Астана - город будущего EXPO 2017 - YouTube


◆ずっと先だと思っていた景色がそこにはあった
今回、何も知らずにアスタナを訪れた僕が受けた印象は「子どもの頃、ドラえもんで観た未来の世界」でした。ドラえもんに登場する未来の世界は2112年という設定です。100年後の事はわかりませんが、果たして日本がこのような未来的な建物だらけになるのでしょうか?「もしかしたらドラえもんの未来の世界は日本ではないのかも……?」と思ってしまいました。

2017年、2030年と発展の節目を迎えるであろう未来都市アスタナ。2112年まで待てない!という方は、是非、これら節目の時期に合わせて、アスタナを訪れてみてはいかがでしょうか?ただし、冬に訪れる場合は氷点下の気温にも耐え得る装備を忘れずに……。

文・取材:植竹智裕 https://twitter.com/hiro_uetaken

監修:世界新聞 sekaishinbun.net


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