無法地帯にならないように、ヨーロッパの移民社会を見て思うこと
頼んでもなさそうなのに交差点の信号待ちで窓を拭く青年。ファストフード店の中にまで物乞いの老婆がやって来ます。周囲がざわめいたかと思えば、一目散に逃げ出すジーパンの男と、彼を追う二人の黒人青年。今年訪れたヨーロッパは少し刺激が強かったです。あの……私の前にいたアフリカ系の青年二人は、料金を払わずに地下鉄の改札口を乗り越えていっちゃったのですが……。
こんにちは、自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。多文化共生という理想は立派です。ですが、中国におけるウイグル問題を体感した身としては、現実がついていかない気がしてなりません。
◆イタリアとフランス
今年夏に旅したイタリアとフランスの状況は、移民政策の推進に首を傾げるには十分でした。もちろん、スーパーマーケットでレジを打ったり、ファストフードで注文を受けたりと、正規に働いているアフリカ系やアラブ系の方々もいます。その一方で、正規の職に就いていない人たちの不安定さは、先進国であることを疑う程でした。
イタリア南部のスーパーの入口では、露店を開いたりショッピングカートを集めてチップを稼ぐ人がいます。無秩序のようにみえて「1つの店舗に1人」と不思議なルールが存在している様子。露店をやる人はシートを敷いて商品を並べているのですが、そこで購入する人の姿なんて一度も見かけていません。こちらもイタリア南部でしたが、都市郊外で体のラインがはっきり分かる服に身を固めて、誘うように立っていた女性は、いったい何をしていたのでしょう?
ローマのマクドナルドで休憩中にも、頭をスカーフで覆った女性が入ってきて、「お金をくれないか」と絡まれました。
また、ローマやパリといた観光地では、水や土産物を抱えた人たちが歩き回っていました。「ウォーター、ウォーター」と言いながら、500mlサイズのペットボトルを抱えている姿は目立ちます。パリでは土産物として3つで1ユーロ(約140円)というエッフェル塔のキーホルダーが売られていました。
フィレンツェの観光客が行き交う通りでも、白人ではない人たちが土産物や中国雑貨を販売しています。おもちゃのデモンストレーションをしているのですが、板にぶつけるとスライム状に張り付いて元に戻るボールなんかは、子どもだったら気にしちゃうでしょう。
ローマで見かけた「移民停止、ユーロはもう十分、イタリア人を第一に」と訴える政党のポスター。そして、その顔を汚すという悪意の応酬。見ているだけで「もうたくさんだ」という気にさせられました。
エッフェル塔
凱旋門
パリ中心部に近いセーヌ川に沿ったサイクリングロードを走っていると、ロマの人たちが生活を送っているらしい一帯に突入。こちらでは、キャンピングトレーラーに住む方が多いようで、ゴミ屋敷のように混沌とした状況が広がっていました。迷いこんですぐに逃げ出したのですが、彫りの深い顔の人たちが暮らしていました。
フランスが誇るルーブル美術館の周辺にはインド系や、アラブ系の売り子が水や土産物を売っていました。警備員がやって来て追い払っていますが、緊迫感もなくトボトボと去っていく光景は、もはや慣れ合い。
◆イギリス
一方のイギリスは、不法就労に厳しく対処しているため、観光地でさえも大道芸をやっている人をちらほら見る程度で、行商の姿などみかけません。イタリアとフランスとは違うビッグベンやタワー・ブリッジといった観光地は、安心して歩くことができました。
タワー・ブリッジ
ビッグベン
ただ平和な日常とは裏腹に、2011年にイギリスでは大規模な暴動が起きてます。街を見つめる監視カメラの存在は否応なしに目に入るでしょう。そして、2013年にはアフリカ系のイスラム教徒に募金活動の英兵が惨殺された事件や、現在でもシリア、イラクで活動するイスラム国に、イギリス出身かもしれないという兵士が参加し、アメリカ人ジャーナリストを殺害したりと、イギリスといえ移民に関しては議論が絶えません。
ロンドンでは白人ではない人たちが目立ちます。
お店に並べられているどこかの国の民族服。
アラビア文字を掲げた看板。
◆問題は何なのか?
これからなし崩しの形で進められるだろう日本の移民受け入れですが、まずはイギリスのように秩序ある社会の構築が大切でしょう。自由すぎるイタリアとフランスの現状を、日本に重ねたくはありません。
人だかりができているパリのイカサマ賭博の現場。3つのカップの中に入ってる1つのボールをあてるというゲームで、お金が賭けられていました。おそらくサクラがいて、勝てると思ってお金を出したら最後、返ってくることはないでしょう。なぜ、これが摘発されないのか不思議でなりません。
白昼に起きた逃亡劇。アフリカでもあったのですが、まさかフランスのパリで目撃するとは思ってもいませんでした。何が起きたのかとのほほんとしている人もいましたが、周囲がざわついたら五感を集中させましょう。
ただ、上にも挙げたようにイギリスですら問題が存在しています。
現状ですら日本の外国人労働者は低賃金で経済を支えています。一世代なら「祖国に比べたらまし」と割り切る事もできるでしょうが、二世代三世代となると比較対象は一般の日本の人たち。正規と非正規と所得格差も拡大し、ブラック会社が蔓延する日本の現状を放置すれば、2005年のフランス、2011年のイギリス、2013年のスウェーデンと同じ形の暴動に繋がりかねません。これは即ち、移民が問題を起こすわけではなく、低所得だから問題に繋がると認識したいところ。それを踏まえた上で、どのような社会を築いていくのか、深く考える必要があると思います。
それ以前に、まずは移民受け入れに対する世論の形成が先でしょうが……。
(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
Twitter @shuutak)
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