取材

「ブルジョワだから」とソ連時代に禁止され現代に蘇ったモスクワの高級トイレとは


社会主義の平等はどこへやら。身なりも立派な紳士はスマートにカードを差し出し支払いを済ませます。ピカピカして眩しいくらいのトイレには、ちり一つ落ちてはいません。こんな面白そうな場所を放っておくことはできませんでした。

こんにちは、自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンは、世界各地のトイレで用を足しています。中南米では便座がなかったり、中国ではドアがなかったり、アフリカでは穴しかなかったり、なかなかハードな体験をしてきました。だから、少しは素敵なトイレを利用してもいいはず。今年11月に訪問したロシアの首都モスクワで、超高級トイレを発見したので、お金を払って用を足してきました。

◆グム百貨店
ロシアの首都モスクワの中心である赤の広場に面する「グム百貨店」に、その高級トイレはありました。グム百貨店は120年の歴史を抱えるロシアを代表する商業施設です。旧ソ連として同じ国だったキルギスの首都ビシュケクにも、グムという百貨店があったので、チェーン店と思っていたのですが、調べてみるとそうでもない様子。ロシア語で百貨店を表す「Главный Универсальный Магазин」の略称がГУМ(グム)と呼ばれる由来でした。

帝政ロシア時代の1893年に完成し、百貨店として華やかな歴史を歩んでいくも、1917年のロシア革命により状況は一変。社会主義時代には国営百貨店として生まれ変わり、ありとあらゆる商品が揃えられ、ソビエト連邦における社会主義経済のショーウインドウの役割を果たしていました。しかし、1991年にソビエト連邦は崩壊し、再びロシアへ。経済政策も資本主義へと回帰する中で、グム百貨店も民営化され今に至っています。

ずっとロシアと聞いて思い浮かべていた景色が、この「ワシリイ大聖堂」でした。


モスクワの中心、ロシアの中心、そして社会主義の中心でもあった赤の広場。聖ワシリイ大聖堂もグム百貨店も、ここにあります。


赤の広場に接する、こちらの建物がグム百貨店。


入口に掲げられた看板。


回転扉を進んで、中に入ります。


たくさんの店が入った建物が通路を挟んで存在する様子は、さながら商店街のよう。3階建ての建物が3列、通路が2列存在しています。建物と通路を繋ぐようにドーム型の透明な天井がついていて、一つの百貨店として機能していました。


上下を繋ぐエレベーターや階段だけではなく、上階でも建物から建物へ通路が伸びているので、どこへ行くにも自由自在です。


通路がぶつかる交差点は憩いの場。


ここでは、アイスクリームやジュースが販売されています。


ひと目で何か判断がつかなかったエレベーターの入口。歴史ある百貨店の建物内に、独特の雰囲気を感じました。


◆高級トイレ
帝政ロシア時代に大理石や御影石を用いて作られたという高級トイレ。個室トイレには最先端の英国製便器とビデが置かれ、女性用には香水、男性用にはオーデコロンが使われていたといいます。入口には、コートを預けるためのクローゼット、革製のアームチェアを配置。専用のサービス係も勤務していました。

ところが、ロシア革命によりソビエト連邦の時代へ。このトイレはブルジョワ過ぎるという理由で閉鎖され、広々としたスペースは倉庫として使われることに。しばらくしてトイレとしての利用が再開されるも、大理石の壁はセメントで塗り固められ、英国製の便器は、国内の陶器工場で作られた製品に置き換えられると、高級トイレとしての存在は否定されました。


しかしソビエト連邦も崩壊。グム百貨店も民営化されます。近年のリニューアルによって、かつての高級トイレは復活。大理石の壁や、ヴェネツィアン・グラスで作られたランプが用いられ、かつての華やかさを取り戻しました。「HISTORICS TOILET」として、注目集める施設となっています。

テーマパークのアトラクションのような高級トイレへの入口。


スターの気持となって、レッドカーペットを歩いていきます。交差している階段を反対に降りて行くと女子トイレです。


階段の壁に飾られた歴史を感じる写真。


男子トイレ入口。


中に入ると、受付におばちゃんがいるので、84ルーブル(約215円)の料金を支払いましょう。


入口にはずっしりとした黒皮のソファ。


そして、靴磨きマシーンが置いてあります。


受付から進むと、すぐにこちらの洗面台にぶつかります。高級ホテルに迷い込んでしまったかのような輝きにうっとり。


各種アメニティも販売中。


ピカピカに磨かれた洗面台は、指でこするとキュッキュと音がしそうなほどでした。


手を拭くためのタオルと、ティッシュが置いてあります。


使ったティッシュはゴミ箱に、タオルはカゴにといった所でしょうか。


洗面台の右側に小用トイレ。


洗面台の左側に大用トイレが設けられています。


大用トイレは、窮屈さを感じない広々とした作りでした。ここでなら、落ち着いて用を足せます。


見上げると、凝った照明。


トイレットペーパーもフワフワしていて感動しました。約10円で販売されていたスーパーのトイレットペーパーはゴワゴワで、お尻を拭きながら格差を実感。


◆一般トイレ
グム百貨店には、一般のトイレもちゃんと存在します。こちらは、もちろん無料。掃除も行き届いているので、普通に使う分には問題ないでしょう。

広々としたトイレ。


手洗い台。


ただし、入口に首を傾げること間違いなし。モスクワ滞在中は、何度かこのパターンがありました。


モスクワ観光で訪れない人はいないという赤の広場からすぐ。機会があれば、この素敵なトイレに足を運んでみるのはいかがでしょうか?

(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
Twitter @shuutak)

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in 取材, Posted by logc_nt

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