「Origami」が宇宙へ、折り紙の技法を宇宙パネルに応用する研究が進行中
いまや世界でも「Origami」という名前が広く使われていることからもわかるように、日本由来の折り紙は世界中の人びとを魅了しています。1枚の紙からさまざまな立体が作られる様子には目を奪われるものですが、その仕組みを応用して宇宙開発に役立てるという研究が進められています。
Solar Power, Origami-Style - NASA Jet Propulsion Laboratory
http://www.jpl.nasa.gov/news/news.php?release=2014-277
この手法を開発しているのはNASAに属する研究所の一つであるジェット推進研究所(JPL: Jet Propulsion Laboratory)でメカニカルエンジニアを務めるブライアン・トリーズ氏。彼は高校生の時に日本に留学した経験があり、そこで初めて目にした折り紙の仕組みに目を奪われ、いろいろな折り方を研究するようになったそうです。この折り紙と宇宙パネルの融合についてトリーズ氏は「アートと文化、そしてテクノロジーが交差するクロスオーバーとなっています」と語っています。
トリーズ氏はアメリカ・ユタ州のブリガムヤング大学(BYU:Brigham Young University)の研究チームと共同で研究を進めています。折り紙を応用したエンジニアリングがどのように進められているのか、以下のムービーで垣間見ることができます。
Origami in Space: BYU-designed solar arrays inspired by origami
机の上に並べられた円筒状の物体。よく見れば、ところどころに折り目がついて組み立てられたようになっています。
学生とNASAによる共同プロジェクトに携わるのは、BYUのラリー・ハウウェル機械工学教授。子どもや女の子のおもちゃと捉えられることの多い折り紙を、エンジニアリングの観点で応用する研究に携わっています。
たとえば、このように規則正しく折り込まれた紙を上下に引っ張ると……
次第にしわがほどけて行き……
最後には折り目のついた一枚の平らな紙に戻る、というもの。
「折り紙」と聞いて多くの人がイメージするものとは少し異なりそうですが、うまく折り込むことで広い表面積を持つ平らな素材をコンパクトな立体に変換できるというのが折り紙の優れている点と言えそうです。
まるで「組み木」のような模様を持つ物体ですが……
グッと引っ張ると……
なんとこれも元は一枚の平らな紙。
全員の中心にある物体を広げると、中心部が回りながらほどけて行き、驚くほど広いパネルに変身しました。
上記のパネルは、将来には宇宙アンテナなどの用途を見込んでいる宇宙パネルの模型。実際の20分の1サイズとなっており、最終的には直径25メートルという大きなパネルをコンパクトにまとめる仕組みを目指しています。
その際の動作イメージがこちら。まず宇宙に打ち上げられた人工衛星が所定の位置に達すると……
人工衛星の周囲に折りたたまれていたパネルが拡張を始めました。
パネルが広がって円盤状の形状になりましたが、まだまだ終わりません。
平面に見えていたパネルが分割され、さらに広い面積へと拡張を続けます。
そして最後には1枚の大きなパネルへと拡張が完了しました。このパネルの特徴は、拡張する際に動作をサポートする人員を必要しないということだそうで、パネルの周囲にはトラス状のフレームが装着されている様子を見ることもできます。
人工衛星のエネルギーを発電するための太陽光パネルとしての用途はもちろん、地上との交信に使うアンテナや、宇宙で発電した電力をマイクロ波で地上に送信するための送信機などの用途も考えられるとしています。
こちらはまた別の折り紙パネルの模型。
サイコロ状の物体が、正方形のパネルに変化しました。平面の折り方というのは、実に奥深いと思わされるシーンです。
プロジェクトを進めるBYUの学生、シャノン・ザーベルさん。このパネルは小型人工衛星のCubeSat(キューブサット)での使用を想定して開発されたもので、このパネル1枚でおよそ65ワットの発電能力を見込んでいます。
また、折り紙技術の監修には、アメリカの物理学者で、著名な折り紙アーティストもあるロバート・J・ラング氏も加わっているとのこと。
ラング氏の数々の作品は、以下のウェブサイトから見てみることができます。「Art」→「Compositions」とメニューを進むと、生き物からさまざまなオブジェまで、幅広い折り紙の作品に触れることができます。
Robert J. Lang Origami
http://www.langorigami.com/art/art.php
折り紙パネルの最大の特徴は何といってもその省スペース性だそうで、皮肉にも「広い宇宙でアンテナを小さく畳んでしまう」ことが可能になるとのこと。古くから親しまれている折り紙が宇宙開発に役立つという、なかなか興味深い研究が進められているようです。
・関連記事
Googleが180個の人工衛星を使って全世界のどこでもネットを可能に - GIGAZINE
NASAが次世代宇宙服のデザイン投票の結果を発表、3つのデザインから選ばれたのは? - GIGAZINE
ロケットを打ち上げまくり惑星の回りを人工衛星だらけにするゲーム「Sputnik Panik」 - GIGAZINE
JAXA×東急ハンズによる「人工衛星カフェ」がオープンしたので見てきました - GIGAZINE
Bitcoin専用の人工衛星「BitSat」を打ち上げる計画が進行中 - GIGAZINE
地球外知的生命体に解読されるのを待ちながら宇宙を漂う「ボイジャーのゴールデンレコード」の内容を確認できる「Voyager Golden Record」 - GIGAZINE
ケーブル伝いに宇宙へ、ロケットに替わる「宇宙エレベーター」実現への展望 - GIGAZINE
・関連コンテンツ