乗り物

人を乗せて実際に飛び上がれるドローンが浮上する様子が公開、一体どうやって設計したのか


複数のプロペラで安定した飛行を可能にしたドローン(マルチコプター)は高い飛行性能を備えていますが、そんなドローンに人間が乗って操縦できる機体が開発されており、実際に飛行するシーンが公開されています。

Autonomous human transport | Quadro UAS
http://www.quadrouas.nl/?page_id=64

人を載せて飛ぶドローンを開発しているのは、オランダに拠点を置く無人飛行機開発企業のQuadro UASです。実際にドローンが人を載せて浮き上がる様子は以下のムービーで見ることができます。

Autonomous human transport project - YouTube


けん引式のトレーラーに乗せられてやって来た巨大なフレーム。横に寝かせると車の幅からはみ出してしまうので、斜めに固定されている模様。


トレーラーから降ろしてフライト準備。8角形をしたフレームの周囲にプロペラが取り付けられ、パイロットが機体中央に座るようになっています。


実際にパイロットがシートに着いた様子はこんな感じ。表情が少しこわばっているようにも見えます。


「プゥゥゥゥン!!!」とドローンらしい、けたましい音をたててプロペラが回転。周囲の草や花が風圧を受けて大きく揺れ動いたと思ったら……


人を乗せたドローンが浮き上がりました!1度地面にバウンドしたものの、50~60センチ程度の高さにまで機体がフワリと浮き上がり、ほどなくして着地。これほど大きな機体と本物の人間を乗せたドローンを実際に飛ばせるというだけでかなりの技術力といえそうです。


ひと口に「ドローンを作る」とは言っても、鉄パイプでフレームを組んでプロペラとモーターをたくさん付けて、大きなバッテリーをとりあえず載せて……という方法でうまく行くわけもありません。同社では、まず機体の重量を55ポンド(約25kg)、バッテリーを含む電装類・モーターなどを55ポンド(約25kg)、そして搭乗する人物の体重を132ポンド(約60kg)と仮定して、必要なシステムの仕様を割り出します。

数々の数式をもとに、出力3kWのモーターに口径20インチ(約50cm)のプロペラを装着して得られる静的推力は19.37ポンド(約9.7kg)であると計算。総重量243ポンド(約110kg)の機体を余裕を持って飛ばすために、16基のプロペラを搭載することを決定しました。


プロペラの仕様が決まったら次は機体の設計を行います。機体にかかる荷重をもとに最適な設計をコンピューターを使いながら検討したところ、アルミ合金を用いた十字型の機体を作り、4隅にプロペラを4基ずつ取り付けて機体中央にパイロットが座るという仕様がはじき出されました。


機体コントロールシステムには、マルチコプターの世界では広く使われているオープンソースのMultiwii AutoPilotを採用。機体の操縦に実際の動きなどをフィードバックさせて安定性を得るPID制御を取り入れた操縦システムが用いられています。


このようにして設計・製作されたドローンが実際に浮上することに成功したわけです。なお、フルパワーの状態で可能な連続飛行時間はおよそ2分間ということで、実用に耐える性能を実現するためには多くの課題が残されているといえそうですが、次々とこのような新しい乗り物が開発されているのは興味深いところです。


Quadro UASのサイトでは機体の設計に用いた数式などの詳細な解説を読むことも可能なので、関心のある人や自作ドローンを作りたい人には参考になりそうです。

Autonomous human transport | Quadro UAS


なお、「世界初の人を載せた電動マルチコプター」を開発したのは、ドイツのe-Velo社だといわれています。

e-volo


e-Veloによる初飛行の様子を収めたムービーがこちら。電動プロペラを16枚持ち、着陸装置にバランスボールを用いた機体が実際に飛ぶ様子が収められています。

World's first manned flight with an electric multicopter - YouTube


また、電力や内燃機関を使わずに人力だけで浮上する人力ヘリのムービーをみることもできます。トロント大学のAeroVeloチームが開発した「Atlas」と呼ばれる機体は、自転車のペダリングを回すことで直径約20メートルという巨大なプロペラを回転させ、「人力で60秒間、10フィート(約3メートル)以上の高度を維持し、1076平方フィート(約100平方メートル)以内の範囲を飛行する」ことを求めたシコルスキー人力ヘリコプター賞を世界で初めて受賞することに成功しています。

Atlas Human-Powered Helicopter - AHS Sikorsky Prize Flight - YouTube

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in ハードウェア,   乗り物,   動画, Posted by darkhorse_log

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