サイエンス

傷跡を一切残さずに毛髪移植を可能にするデバイスの開発が進行中

By Rene Passet

育毛剤やサプリメントから、植毛まで、薄毛を克服するための治療法は多岐に及びます。薄毛治療法の1つである毛髪移植は「頭皮に傷跡が残ってしまう」「移植に成功しても髪の毛が生えてこない可能性がある」など、多くの問題を抱えていました。ニューヨークのマンハッタンで毛髪移植外科医として活躍するウェズリー医師は毛髪移植が抱える問題を解決できるデバイスを開発し、毛髪移植業界から注目を集めています。

Sultan of scalp: one doctor peels back the skin to find a better cure for baldness | The Verge
http://www.theverge.com/2014/7/8/5825206/sultan-of-scalp-one-doctor-peels-back-the-skin-to-find-a-better-cure

ウェズリー医師が開発を進めているのはパイロスコープと名付けられた医療器具。パイロスコープは世界で初めて傷を一切残さずに毛包を頭皮から取り除くことができます。


毛包移植の歴史は1970年ごろから始まりました。当時の毛包移植は、患者の後頭部から多数の毛包を皮膚ごと切り出し、薄毛部分に移植するという方法がとられていましたが、薄毛部分に生える毛髪は自然ではなく、まるで人形の髪のようにバサバサであるという問題がありました。

1990年代には、毛包を個別に取り出し移植する技術が確立され、患者の毛髪は以前より自然に見えるようになったのですが、毛包を取り出す際に患者の両耳を結ぶように切開するため、患者の頭皮には大きな傷跡が残ってしまう、という別の問題が浮上。現代の毛髪移植においても同様の手法がとられてますが、Follicular Unit Extraction(FUE)と呼ばれる新しい手法が取り入れられたことで、患者の頭皮に大きな傷跡が残ることはなくなりました。

しかしながら、せん孔機のように小さな穴を患者の頭皮に開けて毛包を取り出すFUEでは、小さな傷が頭皮に残ることなります。しかも、FUEで残された傷跡は時間の経過と共に白く変色し、徐々に大きくなっていくというデメリットがあります。また、FUEで取り出した毛包は保護組織を剥がしてしまうことがあり、移植しても毛髪が生えてこないという問題も発生。ようするに、今までの毛包移植は傷跡を残すことなく毛髪を完全に復活させることができなかったというわけです。


FUEの登場後も、あごひげ・陰毛を頭皮に移植する方法、豚のぼうこうから採取した再生機能を持つ細胞を使う方法などが、毛髪移植医師たちの間で議論されましたが実現には至りませんでした。安全に、かつ完全に毛髪を取り戻す方法が確立されない中で、ウェズリー医師は「何とか頭皮に傷を残さずに毛包だけ取り出す方法がないのか」考えに考えます。


ウェズリー医師は子宮を検査する際に使用する子宮鏡を使って研究を始め、毛包と神経・血管の間にある組織に挿入できるデバイスのプロトタイプを開発しました。プロトタイプを使って元患者や自身の兄弟の頭皮で実験したところ、FUEで移植した毛包よりも成長する可能性が45%も高いという実験結果を得ることに成功。

2013年に開催されたInternational Society of Hair Restoration Surgery(ISHRS)の会合で、ウェズリー医師がパイロスコープを正式に発表するプレゼンテーションを実施したところ、毛髪移植に取り組んでいる医師たちから「ウェズリー医師のパイロスコープを使えば傷跡を残さずに毛包を取り除き移植できるだろう」という評価を得ました。一方で、「パイロスコープで一度に取り出せる毛包の数は非常に少ない。ということは、何度も施術を行う必要があるだろう」と指摘する医師がいたのも事実です。


しかしながら、プレゼンテーションの後、ウェズリー医師の元には1000人以上の薄毛に悩む人たちから「2014年7月に行われる臨床検査にボランティアで参加したい」というメールが届いたことから、パイロスコープが大きく期待されていることがわかります。ウェズリー医師によると、パイロスコープを2016年までに実用化するのが目標とのこと。もし実用化され、日本でも使用が許可されたら、薄毛に悩む人たちへの大きな希望となる可能性があります。

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in ハードウェア,   サイエンス, Posted by darkhorse_log

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