メモ

「ホームズはパブリックドメイン」という判決が下され自由な利用が認められる

By Barbara Piancastelli

長編小説「緋色の研究」や短編小説の「シャーロック・ホームズの冒険」を始め、テレビシリーズや映画、アニメなど数々のフォーマットで広く親しまれているキャラクターといえば「名探偵」の誉れも高いシャーロック・ホームズで、著者のアーサー・コナン・ドイルが1930年に亡くなったいまでもシャーロキアン、またはホームジアンと呼ばれる熱狂的なファンがさまざまな研究を続けているほど。そんなホームズ作品は4つの長編と56の短編からなる60編の小説なのですが、その著作権の所在をめぐりアメリカで起こされていた訴訟で「ホームズの作品群は、いくつかの作品を除いてパブリックドメインに属するものである」という判断が下されました。

Sherlock is Free–At Long Last! | Leslie S. Klinger
http://lesliesklinger.com/2014/06/sherlock-is-free-at-long-last/

Sherlock lives in public domain, US court rules in case of the heckled brand | Books | theguardian.com
http://www.theguardian.com/books/2014/jun/16/sherlock-public-domain-court-doyle-estate-copyright

この訴訟は、アメリカのホームズ研究家であるレズリー・クリンガー氏がドイル氏の著作権を管理する団体「Conan Doyle Estate(コナン・ドイル財団)」を相手に起こしたもの。クリンガー氏は2011年に「正典(または聖典)」と呼ばれる一連のホームズ作品をもとにした小説「A Study in Sherlock: Stories Inspired by the Sherlock Holmes Canon」を出版したのですが、その際に財団から著作権の申し立てが行われたことに端を発しています。なお、この団体は今は亡きドイル氏の一族によって運営されている団体です。


クリンガー氏が上記作品を出版した際に、ドイル財団はクリンガー氏と出版社であるランダムハウスに対して著作料の支払いを求め、ランダムハウスはその使用料として5000ドル(当時のレートでおよそ40万円)を支払っています。しかし、使用料が支払われた一方でクリンガー氏は「ホームズ作品はパブリックドメインに属するものである」とする主張を持ち続けていました。

日本におけるドイル氏の著作権は1991年に消滅してパブリックドメインに移行しているため、現在では誰でも自由に作品を使用することができますが、アメリカでは少々事情が異なります。ドイル氏の後年に出版された短編集「シャーロック・ホームズの事件簿」に含まれる作品のうち、1923年以降に出版された10作品については最長で2022年まで著作権が残っており、その著作権を管理するコナン・ドイル財団に関連する作品の出版許可を得ることと著作料を支払う必要があります。さらに財団は「まだ著作権が残る作者(ドイル氏)による作品である」ことを理由に、1923年よりも前の作品にも著作権があると主張し、自由な再利用を認めてこなかったという経緯があります。

その後、クリンガー氏が新たにホームズ作品に影響を受けた小説「In the Company of Sherlock Holmes: Stories Inspired by the Holmes Canon」を出版したところ、ふたたびドイル財団からは著作料の支払いを求める旨の連絡がありましたが、今回はこれを拒否。すると同財団は著作料の支払いに応じない場合は書籍を販売する書店に対して圧力をかけるという行動にでました。


この財団の行動に対し、クリンガー氏は「米国著作権法に違反するものである」として財団を相手取って訴訟を起こします。2014年2月25日のクリンガー氏のブログでは、「1923年以降の10作品を除く50作品については、すでに著作権が消滅してパブリックドメインに移行している。また、ホームズ氏とワトソン氏の物語の中での人物像は、すでに著作権が切れている50作品において詳細に描かれているため、再利用は自由である」と訴訟に至った経緯が簡潔にまとめられています。

Suing the Conan Doyle Estate | Leslie S. Klinger


この訴えに対し、財団は「ホームズ氏とワトソン氏の人物描写は最後の10作品にまでわたって進化を続けているために、最初の50作品は完全な人物像を描いているとはいえない」として、ホームズ作品すべてを著作権の対象とすることの正当性を主張。しかし裁判所は「『ホームズ氏とワトソン氏の人格が最後まで進化する』という主張で、すでに消滅している著作権を復活させることにつながるという論理は理解しがたい」としてクリンガー氏の訴えを認める判断を下しました。

(判決文・PDFファイル)- klinger-7th-circuit-opinion-c.pdf


この判断についてクリンガー氏は「非常に満足している」と語り、次作を今秋にも出版する意欲を見せると同時に「執筆へのエネルギーは、ドイル氏による60作品への愛から湧き上がってくるものです。判断が多くの人に対しても制作への意欲をかき立てることを期待しています」とホームズ作品を愛する人から創作物が作られることへ希望を語っています。

なお、ドイル財団は、まだ控訴するかどうかの判断を下していないと回答しています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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