サイエンス

「PCの冷却ファンは壁や障害物からどれほど離せばいいのか?」をNASAの研究施設で調べた結果とは?


デスクトップPCのケースファンはPC内部を適切な温度に保って安定稼働させるための重要パーツです。テクノロジー系YouTubeチャンネルのLinus Tech Tipsが、NASAのラングレー研究所にある高度な実験施設を用いて、「PCケースの冷却ファンは壁や障害物からどれほど離せばいいのか?」という疑問について検証しました。

We Went to NASA To Solve a Computer Mystery - YouTube


How Close is Too Close? Applying Fundamental Fluid Dynamics Research Methods to PC Cooling | LTT Labs
https://www.lttlabs.com/articles/2026/04/04/how-close-is-too-close-applying-fundamental-fluid-dynamics-research-methods-to-pc-cooling

ケースファンで十分にPC内部を冷やすには、ケースファンと周囲の壁などとの間に適切な空間を設ける必要があります。


しかし、見た目のために冷却ファンのすぐ近くに透明なパネルを挟んだり、PCケースを壁にぴったりくっつけたりするユーザーもいます。


そこでLinus Tech TipsはNASAのラングレー研究所を訪問し、PCの冷却ファンが性能を発揮するために最低限必要な距離はどれほどなのかを調べました。


今回の実験に用いるのは、このテープとヒモ。


NASAの研究施設で行うにはあまりにもローテクすぎる実験だと思うかもしれませんが、ヒモを使った実験手法は「Tuft(タフト)」と呼ばれ、航空力学分野で気流を可視化するために用いられています。


タフトは航空機の翼などに取り付けたヒモがどのように流れるのかを観察することで、気流の流れを調べるという実験手法です。


実験では「Noctua NF-A12X25」という120mmのファンの前面に障害物としてアクリルパネルを設置し、裏側にタフトを取り付けることで、ケースの内部で空気がどのように流れるのかを調べました。なお、ファンの速度は最大限にしています。


裏側のタフトはこんな感じ。


アクリルパネルをファンから3.05cmという十分な距離に設置した状態では、ファン裏側の空気は問題なく流れました。これはつまり、ファンからケース外部の空気が適切に取り込まれ、ケース内部のデバイスを冷却できるということを示します。


しかし、アクリルパネルとファンの距離が1.5~2cmに近づくと、中心付近のヒモがやや緩み始めました。


そしてアクリルパネルとファンの距離がわずか0.51cmになると、かなり空気の流れが弱まるだけでなく、一部のヒモはファンの側に吸い込まれていることが判明。これは、ケースの内部で空気の流れが逆転し、循環していることを示しています。


続いてLinus Tech Tipsは、流体中に粒子を混入させて気流や水流の動きを可視化する「Particle Image Velocimetry(PIV、粒子画像流速測定法)」という実験を行いました。実験に協力してくれたのはルイス・エデルマン博士です。なお、エデルマン博士はLinus Tech Tipsの訪問後にラングレー研究所を離れ、記事作成時点では東京大学の助教に着任しています。


PIVに使用する高性能カメラ。


PIVではマイクロ秒間隔で2つのサンプルを撮影することを繰り返し、前に撮影された時点から次に撮影された時点の間に粒子がどのように動いたのかを分析し、粒子がどの方向にどの程度のスピードで移動したのかを調べます。


実験中の様子はこんな感じ。


ファンが繰り返し撮影されています。


今回の実験では「ファン前面の障害物がないパターン」「ファンから2.2cmの位置にパネルがあるパターン」「ファンから1.5cmの位置にパネルがあるパターン」「ファンから0.5cmの位置にパネルがあるパターン」で撮影を行い、ソフトウェアによる解析を行いました。


以下の図は「ファン前面の障害物がないパターン」で、ファンの中央から上部の気流を図示したもの。左下の「Hub」がファンの中央部を、左上の「Frame」がファンの外縁部を指しており、Frameに近いほど回転するブレードの外側に近いということになります。矢印は気流の向きを示しており、色が濃い紫色に近いほど空気の流れが遅く、黄色に近いほど空気の流れが速いことを表わしています。ファン前面の障害物がない場合、空気は順調にケース内部に向かって流れていることがわかります。


粒子の動きを示してみるとこんな感じ。図の下部分に気流がないように見えますが、ここはファンの中心部でありブレードがない部分であるため問題ありません。


なお、今回のテストはあくまで二次元的な空気の流れを捉えたに過ぎませんが、冷却ファンの性能を把握するという目的には合致しているとのこと。


次は「ファンから2.2cmの位置にパネルがあるパターン」を見てみると、やはり気流は順調に見えます。


続いて「ファンから1.5cmの位置にパネルがあるパターン」を見てみると、気流がやや外側に向かって流れており、逆に中央に近い方では気流が弱まっていることが観察できます。とはいえ、全体的にはしっかり空気が流れており、これくらいの制限があってもおそらく大きな問題はないとのこと。


最後に「ファンから0.5cmの位置にパネルがあるパターン」を見てみると、明白に気流が停滞していることがわかります。ケース内部からファンの方向へ戻ってくる気流も存在しており、冷却能力はほとんど発揮できていないようです。


続いて、ファンにラジエーターをかぶせた状態でもテストしてみました。


ファンから0.5cmの位置にパネルを置いた上でラジエーターをかぶせるとこんな感じ。ケース内部の気流はほぼゼロです。


ファンから1.5cmの位置にパネルを置いた上でラジエーターをかぶせると、気流は左の図のようになります。0.5cmの時よりはマシですが、右のラジエーターがない場合と比べると、圧倒的に気流が弱いことがわかります。


Linus Tech Tipsは、少なくともNoctua NF-A12X25を最大速度で稼働させた場合、ファンと障害物の距離が1.5cmほどになっても十分な性能を発揮するものの、それより近づくと冷却能力に深刻な悪影響が及ぶと結論付けました。


さらにLinus Tech Tipsはラングレー研究所の音響施設を用いて、ファンの騒音についてもテストを行っています。


非常に高性能なマイクとソフトウェアによる解析を通じて、音に関する非常に詳細な情報を得ることができます。


今回は時間的な制約があったため、「ファン前面の障害物がないパターン」と「ファンから1.5cmの位置にパネルがあるパターン」のみをテストしたとのこと。


結果を示したグラフが以下。縦軸が騒音の大きさ(dB)を、横軸が騒音の音域(Hz)を示しており、青色が「ファンから1.5cmの位置にパネルがあるパターン」、赤色が「ファン前面の障害物がないパターン」を示しています。1.5cmの距離にパネルを置いた方が騒音の大きな山が生じていることが分かります。


この理由についてLinus Tech Tipsは、「ファンから1.5cmの位置にパネルがあるパターン」ではパネルの影響で全体の空気の流れが不安定になるため、騒音が大きくなるのだと説明しています。つまり、冷却ファンの周囲に障害物があると空気の流れが悪くなるだけでなく、騒音も大きくなってしまうというわけです。


Linus Tech Tipsは、「性能面ではファンをあらゆる表面から1.5cm以上離し、ヒートシンクやラジエーターなどその他の障害物がある場合は、2cm以上離すようにしてください。騒音に関しては、ファンとの距離が遠すぎるのは問題ないようですが、近すぎるのは問題になるようです」と述べました。

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in 動画,   ハードウェア,   サイエンス, Posted by log1h_ik

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