どういう未来が可能になるかがスマホで空間を3Dスキャンしリアルタイムで立体化するGoogleの「Project Tango」を実際に使うムービーを見るとよくわかる
スマートフォンのカメラや赤外線センサーなどを組み合わせてリアルタイムで物体や空間を3Dモデリングすることを目指すGoogleの「Project Tango」はさまざまな事への応用が期待される先進技術となっており、既にYouTube上ではこの技術を先に体験するチャンスを得た人たちがアップロードしたムービーが次々と公開され、その威力をまざまざと見せつけています。
ATAP Project Tango – Google
http://www.google.com/atap/projecttango/
See how Google's new 'Project Tango' smartphones sense the world | The Verge
http://www.theverge.com/2014/2/25/5445258/this-is-googles-project-tango
Tangoはカメラと赤外線センサーを搭載した専用のAndroid端末を使ってリアルタイムでの3Dモデリングを行えますが、そのTango専用Android端末の開発者向け実機が、世界最大級の携帯電話イベントMWC 2014で一部のメディアに貸し出されて実際に動作している様子が公開されています。
どのような感じで撮影できるのかは以下のムービーが非常にわかりやすいです。
Exclusive: a first look at Google's Project Tango - YouTube
Googleの技術者に操作方法の説明を受けているところ。
これがTango機能を搭載するAndroid端末。
裏側にTangoのキモとなるカメラ・センサーなどが搭載されています。
端末上部にあるのは400万画素のカメラ。フルカラーで撮影できる一般的なもの。
指で指し示された部分にあるのがIRセンサー。赤外線を使って物や空間の形状を探知して、幅や奥行きなどの距離を測定します。
端末下部にあるのは動く物体を追跡するトラッキング用のカメラ。
さっそくTango専用アプリを起動。
すると、こんな感じで周りの様子をIRセンサーで認識させることができます。画面左端であごに手をあてる男性の姿も認識されています。
距離が遠い部分は青色で、距離が近い部分は赤色で表示される仕組みです。
画面に黄色のライトが表示され、目の前にある物の距離を測定します。まずはテーブルの上をスキャン。
続いて壁沿いにスキャン。
ものの数秒でスキャンが完了。
最後に3Dモデリングを行うアプリを試すとこんな感じ。
Tango機能を搭載したAndroid端末は3月14日からアプリ開発者などに提供が始まる予定です。
開発者に実機が提供される段階に突入したProject Tangoですが、Googleはこれまでにも外部の研究機関や企業と共同でアプリを開発してきました。その代表例が、3Dモデリングを簡単に行えるカメラ・ソフトウェアを開発してきたYコンビネータ卒業のスタートアップ「Matterport」です。
Matterportによる3Dモデリングの様子は以下のムービーで確認できます。
Matterport develops tech to scan the physical world in 3D - YouTube
Matterportではこのような3Dスキャナーが使われます。
3Dスキャナーでぱしゃぱしゃと被写体を撮影して……
それを専用のソフトウェアで3D化。
すると、こんな感じで簡単に3Dモデリングが出来上がるという仕組み。
MatterportとGoogleがタッグを組んで開発したTangoアプリはこんな感じです。
Google Project Tango: 3D Indoor Map by Matterport (No Sound) - YouTube
Tango専用Android端末で部屋の中を撮影していきます。
Matterportの3Dスキャナーと違って、シャッターを押す必要はなし。撮影者はただムービー撮影のようにカメラを部屋の至る所へ向けるだけでOK。
するとこんな3Dモデルが作成可能。
3Dモデルの中へ入ることもでき……
距離を測定することも可能。これは天井高を測っているところ。
また、位置情報を追加することも可能です。
Tangoのリアルタイム3Dモデリングを使えばいろいろなサービスが実現できそう。例えば……
・人間のリアルサイズ測定で、試着しなくてもネット経由の買い物がOK
・家具も同じように配置シミュレーションがもっと簡単にできる
・部屋の中そのものを3D化できるので不動産情報やホテル・旅館の部屋情報もネット経由だけでもっと精密になる
・広視野角のヘッドアップディスプレイやGoogle Glassとの組み合わせもより現実的になる
・スマホが3Dスキャナになるので3Dプリンターと組み合わせる可能性が広がる
・リアル世界の3Dコピー版が完成するのでGoogleストリートビューとかセカンドライフどころの騒ぎではないレベルのホンモノの仮想世界が完成する
・要するに映画「マトリックス」みたいな究極の仮想世界を構築するデータをGoogleが手中にできる
などなど。
Tangoは低消費電力を実現しており常時起動状態にしておくことも可能とのことで、いちいちアプリを起動させる手間を省くことでユーザーは世界中のあらゆる物体を3Dスキャンすることができます。Tangoの開発者向けキットはAndroid端末に搭載されていますが、当然、TangoがAndroid搭載のスマートフォンやタブレットだけでなく、Google Glassにも搭載されるのは容易に想像できるところ。つまり、Tango+Android+Google Glassによって、世界中のあらゆる物体が3Dスキャンされる日の到来もそう遠い未来の話ではないことがわかります。
それだけでなく、Googleが気球を使ってあらゆる場所でネット接続を可能にしたり、自動運転車を開発したり、家庭用スマートデバイス市場に参入したり、人工知能開発を行っている企業を買収したり、量子コンピューター開発を行ったり、一見すると関係ないように見えるそれぞれの点と点が、今回の「Project Tango」によって線となってつながっていき、しかも「Google マップ」「ストリートビュー」「Google Earth」、人間の日々の活動が記録される「Google+」、さまざまなムービーが大量にアップロードされる「YouTube」、アクセス解析の「Google Analytics」、そしてGoogleの収益を支える「Google AdWords」などの既存プロダクトのすべてをつないでいくことが可能となっており、これらのあらゆるデータを手中に収めたGoogleがもたらす未来像は一体どのようなものなのか、その実態が次第に姿を現してきている、というわけです。
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