世界初の現象「自己加熱」が確認され核融合炉の実現に一歩前進
実用化を目標に世界的に開発が進められている新しいエネルギーである核融合に、新たな展開がありました。IBM製のスーパーコンピューター「セコイア」が設置されているアメリカのローレンス・リバモア国立研究所にある国立点火施設の研究チームが、核融合の実験で投入したエネルギーを上回る量のエネルギーが燃料から放出されるのを世界で初めて確認しました。
Fuel gain exceeding unity in an inertially confined fusion implosion : Nature : Nature Publishing Group
http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature13008.html
国立点火施設の研究チームが実験に使用したのは、30億ドル(約3076億円)以上かけて開発された192本の高出力レーザーです。実験は193本の高出力レーザーを制御して直径約2mmの重水素を含む燃料ペレットに照射して圧縮し、核融合反応を起こすというもの。
実験では核融合で放出されるエネルギーの量が、燃料に吸い込まれるエネルギーの量を上回る「自己加熱」という現象が世界で初めて確認されました。エネルギーの変換効率は過去に行われてきた実験の10倍以上にもなり、少量のエネルギーから大量のエネルギーを取り出すことが可能な核融合炉の実現に一歩近づいたとのこと。
世界初の自己加熱が確認されたことは、核融合炉の構築方法の研究に大きな進歩をもたらしましたが、研究を行った国立点火施設は「保存されている核兵器の老朽化についての研究」を主としてアメリカ政府から資金援助を受けているというのも事実です。
研究を率いたHurricane博士は「核融合炉の構築が可能であるか、不可能であるかという判断を下すのは時期尚早である」と発言しており、核融合炉の実現にはまだまだ多くの技術的課題が残されているとのことです。
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