2つのレーザーを使って中性子線を放射することなくホウ素を核融合させることに成功

By mike.in.ny

原子核同士が融合することで大量のエネルギーが放出される核融合反応は、将来の有力なエネルギー源として期待されており世界中で研究が進められています。核融合の実用化への技術的ハードルは様々ですが、中でも反応に伴って人体に有害な中性子線が放射されることが問題とされてきましたが、中性子線を放射させることなく核融合させることが2つのレーザーをたくみに使うことで可能になりました。

Fusion reactions initiated by laser-accelerated particle beams in a laser-produced plasma : Nature Communications : Nature Publishing Group
http://www.nature.com/ncomms/2013/131008/ncomms3506/full/ncomms3506.html

Two-laser boron fusion lights the way to radiation-free energy : Nature News & Comment
http://www.nature.com/news/two-laser-boron-fusion-lights-the-way-to-radiation-free-energy-1.13914

CNRS研究所の調査担当重役であるクリスティーン・ラバーン氏とその研究チームは、陽子ホウ素11を2つのレーザーシステムを使い中性子線放射なく核融合反応を起こすことに成功、その研究論文が10月8日付けのNature Communicationsに掲載されています。

核融合反応は大量のエネルギーを発生させることから極めて魅力的なエネルギー創出源と期待されると同時に、反応によって発生する中性子線の遮蔽(しゃへい)に注意が必要なことから、その安全性に疑問が呈されてきましたが、今回のラバーン博士の研究成果は、核融合の研究を大きく前進させる可能性があるといえます。

ラバーン博士は、一つのレーザーでホウ素原子を加熱しホウ素プラズマ(ホウ素が電離した状態)を作りだし、さらにもう一つのレーザーで陽子ビームを生成、この陽子ビームをホウ素プラズマに打ち込み核融合反応させることで、ヘリウムと大量のエネルギー(熱)を発生させましたが、その際に、中性子線は放射されませんでした。

これが今回の実験で用いられたレーザー装置。


これまで重水素トリチウムといった水素の同位体を用いた核融合反応の前処理段階でレーザーが使われることがあったものの、それには巨大なレーザーの配列(カリフォルニアのローレンス・リバーモア国立研究所にある世界最大規模のレーザーでも200個配置)が必要でした。今後、ラバーン博士の実験がよりスケールアップすることに成功すれば、核融合反応にわずか2つのレーザーしか必要としないそのシンプルさは、大きな優位性をもつことになります。

今回の研究論文の共同執筆者であるアリゾナ大学の理論物理学者ヨハン・ラフェルスキー博士は「実験の成功にとって最も重要なものはタイミングでした」と語ります。レーザーによって生成されたホウ素プラズマが存在するのはわずか10億分の1秒という短い時間であり、さらに陽子パルスが発生するのは1兆分の1秒という一瞬というのもはばかられるほど短い時間であるため、ホウ素プラズマに陽子をぶつけるタイミングは極めて正確に同期させる必要があったということです。

なお、今回の実験では、使用するエネルギーと核融合によって創出するエネルギーを比較した"損益分岐点"に関してはまったく考慮されなかったため、"エネルギー源"としてすぐに実用化できるわけではないようです。しかし、「レーザーの出力をより高めなおかつ消費エネルギーを減らすことに成功すれば、たった2つのレーザーでホウ素核融合が可能なレーザーシステムのシンプルさは、非常に実用的であり将来の有力なエネルギー源となりうる」とレーザー物理学者のジェラルド・モルー博士は語っています。

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