オンライン広告の25%は偽装・詐欺によって支えられているということが判明
By Mike O'Dowd
メディアがオンラインに積極的に進出する事で、Google Adsenseのようなオンライン広告によるビジネスモデルが台頭してきていますが、その仕組みを根底から危うくさせかねない事態が起こっていることが明らかになってきています。
Fake Traffic Is Causing a Crisis for Advertisers | Adweek
http://www.adweek.com/news/technology/amount-questionable-online-traffic-will-blow-your-mind-153083?page=1
メディア・プランニング及びコンサルテーション事業を行うCarat社のシニアマネージャー・アナリストであるLindsay Buescherさんは、FreeStreams.comという企業についての記事を目にしました。記事では、ページに埋め込まれた見えないタグによってユーザーを知らないうちにFreeStreamのウェブサイトに(不正に)誘導する仕組みについて解説されており、なんとBuescherさんのクライアントであるRed Bull社もFreeStreamsの広告主であることを発見しました。
そのようなサイトでは、ページ内の空白部分に"iframe"タグによる「目には見えないバナー」が埋め込まれており、うっかりその場所をクリックするとポップアップが開いて広告が表示されるという仕組みになっています。多くの場合はユーザーによって閉じられてしまい目にされることがないため、実際に広告を出している(お金を払っている)広告主の企業にとっては、詐欺とも取れる方法となっています。
By Don Hankins
その後3週間に及ぶ調査をおこなった結果、同様の詐欺まがいの行為を行っているとして、Carat社は同社のブラックリストに77のウェブサイトを新たにリストアップし、Red Bull社に対して15万ドル(約1470万円)を自主的に返金しました。この件に関し、Buescherさんはこう語ります。「Red Bullはオンライン広告予算の90%を広告を掲載するメディアに直接支払っています。もしそのメディアが本当は存在しないものだとしたら、どうなるでしょう」
いま、オンライン広告は「トラフィックの水増し」「架空サイト」「訪問者でっちあげ」などが蔓延するという危機に直面しています。複数のソースの情報にもとづくと、このようなトラフィック量の偽装は本質的にオンライン広告システムの一部となっており、意図的であるかどうかは別として、多くの大企業もこのシステムに組み込まれてしまっているというのです。Moxie Interactive社のメディアプラットフォームディレクターであるAlan Silverberg氏は「AOL、Yahoo、Facebookといった企業も多かれ少なかれ巻き込まれています。これを止めることはできません」と根の深さを語ります。
Medialink社の最高営業責任者Wenda Millard氏は、オンライン広告市場のうち4分の1は詐欺まがいのものであるとし「詐欺によって失われた価値は、300億ドル(約2兆9400億円)ともいわれるデジタル広告市場の25%に相当します。これは詐欺業者によってかすめとられた金です」と語ります。
◆偽装トラフィックとアクセス数の水増し
匿名を条件に、ウェブトラフィックの分析チームが明らかにしたところによると、Break.comやCollegeHumor、Complex、Crackle、Entrepreneur、Total Beautyといったサイトには、疑問のあるトラフィックパターンが存在するとしています。同チームではcomScore社のデータをもとに分析をおこない、各社のサイトへのアクセスの多くは偽のトラフィックが集まるサイトにもアクセスしていたことがわかっています。
By Jamie Beverly
さらに、こちらも「守秘義務契約」により公表を拒否したウェブトラフィック分析のプロが明らかにしたところによれば、それらのサイトのトラフィック量そのものにも疑いがあることを認めています。自動でウェブをクロールするボットの類が使われているとみられて水増しの疑い強いため、トラフィック調査をおこなう企業では、各メディアから入手した「ユニークユーザー数」や「閲覧回数」などのデータを少なく調整してから各クライアントに渡す作業がおこなわれています。
ハーバード大学でインターネットの構造、宣伝広告、そしてトラフィックパターンや詐欺検出の研究をおこなうBen Edelman準教授は、「興味深い」動きを見せるアクティビティを検知するプログラム(クローラ)を開発し、調査をおこなっています。この特許取得済みのクローラを使うことで、Edelman準教授はCrackleやCollege Humor、Breakなどのサイトが「見えないトラフィック(invisible traffic)」を利用し、訪問者が増えたように見せかける仕組みを持っていることをつきとめました。
Edelman氏が明らかにしたところによると、Breakの手法は以下のようになっています。ウェブサイトを訪れると、Breakは複数の手法を使って別のサイトを秘密裏に読み込み、アクセス数が増えたように見せかけます。たとえば、Ptp22という企業がBreakへのトラフィックをリダイレクトし、実際にサイトが表示されるまでの間に、MarketwithmogulやTooShockingといったサイトを読み込んでいるのです。この間、広告がユーザーの目に入ることはありません。Breakへのアクセスの参照元のうち25%は、トラフィックを販売しているといわれるClickSureとなっています。Edelman氏はこの件について「サイトを訪れたユーザーはこれらの広告を目にすることはありません。広告には、AT&T社のものも含まれていました」とコメントしています。
別にEdelman氏が明らかにしたところによると、SONYが所有するCrackleのトラフィックのうち18%にも不正の痕跡があるとのことですが、同サイトに近いソースによると「数年前からトラフィック元の整理をおこなっているが、以前のものが残ってしまっている場合がある」という状態になっているとのこと。また、CollegeHumorでも同様の問題を認識しており、解決に向けた取り組みを始めているとのこと。
◆問題解決への道
しかし、いろんな取り組みをおこなっても、この手の問題は常に存在するのかもしれません。GrapeshotのCEOであるJohn Snyder氏は「よく『おたくの競合他社のほうがクリックが多いんだよ』と言われることがありますが、それは偽装によるものであることが良くあります。しかし、その手の『最適化アルゴリズム』がクリックを集めるというのも事実です」と語ります。
Digilant社のCOOであるNate Woodman氏は「締め付けをきつくするほど、われわれのパフォーマンスは低下してしまいます。広告のバイヤーを突き進ませる見返りがあるのも事実ですし、メディア側は金がほしい。そのため、目をつぶることもあるのです」と根の深さを語ります。「しかし、業界としてはこの点を改善しなければならない。誰かがやらないといけないのです」
By thewebprincess
その役目はIAB社が担ってくれるかもしれません。同社のPer Sullivan氏は業界スタンダードの策定に取り掛かっています。「広告バイヤーが『認証されたベンダーからしか買い付けない』と言い出せば、業界は変わります」と語ります。Carat社のBuescher氏は、もっと思い切った一歩が必要と考えており、同業者にも変化を強く求めています。「この業界に問題を解決してくれる者が存在しないのは残念なことです。それが現れるまでは、私たちは自分たち自身でブランドを守っていかなければならないのです」
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