ハードウェア

バッテリーなしで既存の信号を送受信可能な無線通信システム「Ambient Backscatter」

By ibmphoto24

ケーブル類で接続せずに無線で通信する技術はテレビのリモコンからスマートフォン・タブレットのデータ送受信まで幅広く使用されていますが、ワシントン大学のエンジニアたちがバッテリーなしでの通信を可能にするワイヤレス通信システムを開発しました。

Wireless devices go battery-free with new communication technique | UW Today
http://www.washington.edu/news/2013/08/13/wireless-devices-go-battery-free-with-new-communication-technique/

新開発の通信システムは「Ambient Backscatter」と呼ばれており、デバイスを通じて、テレビや携帯電話、時計などで使用されているものと同種の通信を、バッテリーなしで行うことができます。デバイス自体はクレジットカードぐらいの大きさで2つ1組になっており、電波塔からの電波をアンテナで送受信して、お互いに信号を反射することで情報へ変換し受信することが可能。


システムは8月13日に香港で行われたSpecial Interest Group on Data Communication 2013のカンファレンスで発表され、ベストペーパーを受賞しました。

技術の特徴は、テレビのリモコンと同じように人間が操作することで通信が行われるところと、既存の通信に使われている信号をそのまま利用可能なところ。ワシントン大学コンピュータサイエンス工学のShyam Gollakota準教授は「すでに周りに存在している電源や、通信媒体をワイヤレス信号によって再度目的を果たすことができます」と述べており、今後、ウェアラブルコンピュータなどのデバイス用アプリケーションや自立したセンサー・ネットワークの発展に繋がることも期待されています。


シアトル市街地の障害物を含むエリアで電波塔からデバイスへの信号受信距離を測る実験が行われ、0.5マイル(約800m)から6.5マイル(約10km)までの距離で通信ができたことが確認されているほか、電波塔からの信号だけでなく、デバイス同士の信号の通信でも毎秒1kbitの信号を野外で2.5フィート(約76.2cm)離れた場所と、アパートの室内でも1.5フィート(約46cm)の距離で電波を十分にキャッチできることも確認されています。この伝送量はテキストメッセージの送受信には十分なので、「Ambient Backscatter」のデバイスをスマートフォンに組み込むことでバッテリー消費を抑えることも可能になります。


今後は、バッテリーを使用しないというAmbient Backscatterデバイスの特徴を活かして建築物に埋め込む使用方法が考えられています。例えば、橋に埋め込んで鋼材やコンクリートの状態を恒久的に監視させ、ひび割れが起きたときに警告を発信させる、といったことが可能。また、身近なところだと、鍵と一緒に取り付けておけば、どこかに置き忘れても携帯電話やスマートフォンに向けて「鍵を忘れているよ!」というメッセージを自動的に送ることができます。


エンジニアたちは、さらにAmbient Backscatterの通信距離とデバイスのキャパシティの増加に取り組んでいくとのこと。まだ実用段階にはありませんが、バッテリーなし・現行の無線信号が使えるというのは大きなメリットで、これからの開発結果によっては、現在普及しているデバイスの使い道やあり方が大きく変わるかもしれません。

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in メモ,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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