サイエンス

ありそうでなかった新素材「マシュマロゲル」を実際に触ってみました


油と水とを効率的に分離できるので原油回収にも役立てることができ、マシュマロのような感触の超撥水性ゲルが「マシュマロゲル」。京都大学の研究グループが新たに開発した新素材なのですが、今回開発に携わった京都大学大学院の早瀬元さんにお話を伺うことができたので、実際にマシュマロゲルに触りつつ、どんなものなのかを聞いてみました。

水と油を効率的に分離できる柔軟多孔性物質(マシュマロゲル)の開発に成功 -原油回収や分析化学での応用に期待- — 京都大学
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2012/130111_2.htm

こちらが漏斗に注ぎ込んで作ったマシュマロゲル。


後ろはこんな感じ。


実際に手に取って触ってみると、フワフワかつさらっとした手触りで、まさしく「マシュマロ」的感触。思わずかじりつきたくなりますが、かじっても甘くありません。


手のひらに乗せても重さはほとんど感じません。


こちらがマシュマロゲルを開発した早瀬元さん。マシュマロゲルの特徴の1つが超撥水性で、分子レベルで水を寄せ付けず、しかも表面が目に見えない大きさでデコボコになっており、表面だけを見るとピンの上に水が立っているような構造になっています。そのため、ハスの葉のように水を弾く効果があるというわけ。


既存の超撥水性の素材は半導体を作る技術や、薬品で処理して表面にデコボコを作っていたのですが、マシュマロゲルは構造自体に凹凸があるので、どこを切っても同じように超撥水性を維持することが可能です。


ということで、マシュマロゲルが実際にどのくらい水をはじくのかを試してみました。

謎のやわらか超撥水性新素材「マシュマロゲル」を触ってみました - YouTube


バシャバシャと水をかけると少ししっとりしますが、濡れた感じは全くありません。


撥水性を持つ一方で、油など有機物との親和性が高く、水と油を完全に分離させることにも成功。粘性の強いサラダ油を吸着させるにはさらなる改良が必要なものの、灯油なら今の素材で吸着できるとのこと。現段階でもガラスについた油汚れなどであれば実際に拭き取ることが可能です。


また、高温でも300度超程度ならやわらかいまま24時間以上耐えることができ(厳密に実験していないが可能)、低温の場合は液体窒素に入れてもやわらかさを維持できます。液体窒素に花などを入れると大抵は力を加えることで崩壊しますが、液体窒素につけたマシュマロゲルは取り出して液体窒素を絞り出すことができるというのも大きな特徴。それが一体何に使えるのかはこれからの課題ですが、今までの同様の物質よりもはるかに簡単にできあがるというのがポイントです。


マシュマロゲルを作る方法はmMの酢酸、MTMS(メチルトリメトキシシラン)、DMDMS(ジメチルジメトキシシラン)、尿素、CTAC(セチルトリメチルアンモニウムクロリド)といった材料をよくかき混ぜ、80度にセットした恒温槽に静置し、洗って乾かすだけという非常に簡単なもの。発泡させて作るわけではなく、なおかつ特殊な機械が必要なわけではない、というのがこれまでの類似品との大きな違いです。

加熱や冷却などの処理を必要としないので、自由な大きさや形のものが作製できます。平べったい膜状のものや……


トレイに入れて作った大きなものもあります。


こちらは2.5Lスケールのマシュマロゲル。小さめの枕ぐらいの大きさです。このサイズのマシュマロゲルを作るのにかかった費用は約2万円程度ですが、工業スケールで大量に作れば10分の1程度にコストは下げられるとのこと。


豆腐のようなビジュアルに重そうな印象を受けますが、持ってみると発泡スチロール……?と思ってしまうような軽さ。これはマシュマロゲルの90%が空気でできているためです。


サンプルは作製から1年以上が経過しているにも関わらず劣化はありません。ただ、マシュマロゲルはそれ自体にもろさがあり、触りすぎたためか端の方は少し崩れています。


少しヒビも入っていました。しかし逆に言えば、1年間もあちこち連れ回されていろいろな人に触られまくってもなおこの程度で済んでいるとも言えます。


早瀬さんはもともと宇宙に興味があり、最先端=宇宙という発想から、最先端の素材を作りたいと思い、透明エアロゲルの研究の道に進んだとのこと。実験中、失敗作を放置していたら軽くて柔らかい謎のゲルができており、改良を重ねてマシュマロゲルの完成に至ったというわけです。やわらかくて浮力の高いもの、ということで釣りのルアーにというアイデアもあったらしいのですが、素材がもろく実用化には至りませんでした。


現在、マシュマロゲルの研究はさらに実用的な方向の応用も進行中とのこと。


断熱・吸音にもすぐれ、大人の科学や自由研究などの学習教材として「ゲルとは何か?」ということを理解するのに役立つ……というような使い方もありのはずだ、とのこと。このマシュマロゲルが今すぐ何かの役に立つようなものになるというわけではないのですが、今までありそうでなかった物質であるというのもまた事実。日常の分野や教育分野・工業的な分野における大きな可能性を秘めた新素材であるため、いつかどこかの企業などがこのマシュマロゲルの思いもかけない使い方をしてくれるはずです。

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in サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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