夢の素材である「グラフェン」のシートを高品質で大量に製造する方法をMITの研究者が開発


グラフェン」とは炭素原子が結合することでできたシート状の物質であり、鉄以上の強度を持つのに驚くほど軽くて柔らかく、超伝導性と絶縁性の両方を持つなどの性質から多方面への応用が期待されている素材です。そんなグラフェンを長い布のような状態で製造する方法を、研究者たちが開発しました。

A graphene roll-out | MIT News
https://news.mit.edu/2018/manufacturing-graphene-rolls-ultrathin-membranes-0418

マサチューセッツ工科大学の研究チームは、高品質のグラフェンをまるで布のように連続して生産する工法を考案し、実際にグラフェン製造機を試作する段階まで到達しています。「数年間にわたって研究者たちは、グラフェンを超薄膜のシートとして製造することを考えてきました」と研究チームのジョン・ハート准教授は語り、集積回路を覆う縫い目のない超薄膜としてグラフェンが利用できるとしています。

研究チームが開発した超薄膜グラフェンの製造ムービーは、以下から見ることができます。

Roll-to-roll graphene CVD for atomically thin membranes


多くの研究者たちは、グラフェンを超薄膜のろ過フィルターとして使用可能だと考えているとのこと。1枚のグラフェンは非常に丈夫であり、炭素原子の結合パターンによってヘリウム原子でさえ浸透できない高機能なフィルターとなります。

これまでグラフェンを製造するときには、銅箔のサンプルを加熱した基板の上に炭素を含む原料ガスを供給し、化学反応によってグラフェンを製造する化学気相成長という方法をとってきました。グラフェンのシートが商業化されるとなると、大量のグラフェンシートを高速で、高い品質を保ちつつ生産する必要があります。ところが、化学気相成長によって作られるグラフェンをベースとした超薄膜は、非常に小さな大きさのものがほとんどです。

ハート准教授は「グラフェンを工業化するためには、それなりの大きさのシートを継続的に生産する必要があります。ほんの小さな断片ばかりを生産するのではダメなのです」と述べており、今回の新しい製法の開発は、将来のグラフェンシート工業化を見据えたものだとしています。

by Santosh Gawde

研究チームは薄い膜状の素材を生産する時の一般的な工業的アプローチである、ロール・ツー・ロール方式と化学気相成長による一般的なグラフェン製造アプローチを組み合わせて、高品質のグラフェンを大量かつ高速で製造する方法を開発。グラフェン製造機は、小さな炉を通過する2つのスプールをベルトコンベアで接続した構成になっているそうです。

第1のスプールには幅1cm未満の長い銅箔が巻かれた状態であり、機械が稼働すると第1のスプールに巻き付いた銅箔が炉の中のチューブに入ると、銅箔は理想的な温度まで加熱されます。加熱後に銅箔は炉の中で別のチューブに入り、炭素や特定の比率で合成されたメタンや水素が入った原料ガスをポンプでチューブ内に送り込み、グラフェンを製造するそうです。グラフェンは銅箔上に連続して形成され、1枚のシートになるとハート准教授は語っています。製造されたグラフェンは第2のスプールに巻き取られる仕組みになっているとのこと。

ハート准教授が開発したグラフェン製造機は最長で4時間にわたって稼働させることができ、約10mのグラフェンを連続したシートとして製造することが可能。「工場で生産する場合には、24時間連続してグラフェンを生産するシステムになるでしょう」とハート准教授は述べています。


ロール・ツー・ロール方式で生産されたグラフェンは、放っておくと勝手にくるくると巻いてロール状になってしまうとのことで、多孔質ポリマーで支持することで1枚のシートとして使用できます。研究チームが新しい製法で作り出したグラフェンは、従来の小さな単位で生産されたグラフェンに匹敵するろ過性能を持っており、原料ガスに含まれるメタンと水素の比率を変えることで微妙に品質を変化させることもできるとのこと。

ハート准教授は「私たちは、グラフェン製造のプロセスをスケールアップすることが可能だと実証しました。これによりグラフェンへの信頼と関心が高まり、商品化への道が開けることを期待しています」と語りました。

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