スマホ向けCPUの消費電力を3分の1にしてバッテリーを長持ちさせる「STT-MRAM」を東芝が開発
By pchow98
スマートフォンやタブレットなどに搭載されているモバイルプロセッサ用キャッシュメモリ向けに世界最高の低消費電力性能を実現した新方式の不揮発性磁性体メモリ(STT-MRAM)を東芝が新開発、世界で初めてキャッシュメモリに適用されているSRAMよりも低消費電力での動作を実現、標準的なモバイル向けプロセッサと比較して3分の1程度に低減できたという計算結果を示すことができたとのことです。
東芝:ニュースリリース (2012-12-10):世界最高の低消費電力性能を実現した新方式の不揮発性磁性体メモリ(STT-MRAM)を開発
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2012_12/pr_j1001.htm
今回開発したのは、垂直磁化方式のSTT-MRAMをベースにメモリ構造を改良すると同時に、30nm以下まで素子の微細化を進めた新方式のSTT-MRAM。
これが新開発した垂直磁化方式STT-MRAMのメモリ素子の断面
従来のSTT-MRAMでは、省電力化と速度向上は二律背反の関係にあったものの、新開発のSTT-MRAMは消費電力を下げつつ、同時に動作速度を上げることに初めて成功。動作時の電力消費量を従来の10分の1程度に低減することにも成功、さらにメモリから漏れ出す電流(リーク電流)のパスが無い回路を新たに設計することで、動作状態でも待機状態でも、リーク電流が常にゼロになるノーマリオフ回路構造を実現したそうです。
これがMRAMの処理速度と消費電力の関係
これまでのモバイル向けプロセッサでは、高性能化に伴い内部のSRAM(主にキャッシュメモリ)の容量も増大しており、動作状態と待機状態それぞれのメモリのリーク電流に起因する電力消耗の増加が課題となっており、SRAMの代替メモリとしてMRAMが検討されていましたが、これまで開発されてきたMRAMは不揮発性のため待機状態でのリーク電流は減るものの、動作状態での電力が非常に大きく、結果的にSRAMより消費電力が大きくなるという問題があり、これがプロセッサ適用の障壁となっていたとのこと。
そこで東芝は今回、SRAMの代替となり得る高速化と低消費電力化を両立したSTT-MRAMを開発、プロセッサの電力削減の可能性を示すとともに、今後も開発した新型STT-MRAMにさらに改良を加えるなど、実用化に向け研究開発を加速していくそうです。
いつ頃実用化されるかは不明ですが、このような低消費電力化を実現するさまざまな技術がスマートフォンなどに適用されていき、将来的には今のような「スマホはバッテリーが減りまくる」というような問題は次第になくなっていく可能性大です。
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