携帯電話やスマートフォンでバッテリー持続時間を2倍に延ばす新技術が登場
By emarschn
携帯電話の通信では電気を無線信号に変換する電力増幅チップ(モジュール)が使用されています。例えばiPhone 5の場合、5つのモジュールが搭載されているわけですが、これが消費電力のうち60%を食っています。基地局でも同様で、全世界の基地局で使用される電力のうち1%がこのモジュールによるもの。これを解決して、バッテリーの持続時間を従来の2倍にするという新技術がMITの専門家らによって開発されました。
Less Power-Hungry Smartphones and Base Stations Ahead: A Startup Says it's Cracked a Decades-old Efficiency Problem with Wireless Communications. | MIT Technology Review
http://www.technologyreview.com/news/506491/efficiency-breakthrough-promises-smartphones-that-use-half-the-power/
携帯電話やスマートフォン、携帯電話の基地局など、モバイル通信関連で使用されているのが電力増幅チップ。このチップは電気を無線信号に変換していますが、消費電力が大きく、たとえば今年、全世界の携帯電話基地局の電気代はトータルで360億ドル(約2兆9000億円)でしたが、このチップによるコストが1%を占めています。
同様の浪費はスマートフォンの内部でも起きていて、配信されているムービーをストリーミング再生したり巨大ファイルの送受信をすると電話機本体が熱くなって、バッテリー残量がガクンと減りますが、このとき、電力増幅チップが65%ものエネルギーを消費しており、使い方によっては1日に2度充電する必要が出てきたりします。
MITで電気工学を担当しているJoel Dawson教授とDavid Perreault教授が共同設立したスタートアップ「Eta Devices」は、この電力増幅チップの効率問題を解決する技術を開発しました。
今のところは実験段階にあるものの商業ベースに乗せることを目指しており、2013年にはLTE基地局に採用されることで、消費電力を半分にカットできるとみられています。スマートフォンに搭載した場合、バッテリーの持続時間は従来の2倍になるとみられています。
「このチップ関連の分野において、ここ数年、意義のあるような進歩は何も無かった」と語ったのはワイヤレステクノロジー関連企業Vanuの創設者Vanu Bose氏で、「今日の電力増幅チップは30%~35%の効率があればよくできていると言われるが、この新技術は倍以上の効率を出せる」とDawson教授とPerreault教授の開発を絶賛。
Dawson教授によると、現在のチップには信号出力モードとスタンバイモードの2つがあり、効率を改善するためにはスタンバイ時に可能な限り低電力にするしかありません。しかし、低電力での待機モードからいきなり高電力の出力モードに切り替えると、信号に歪みを生じさせてしまうため、現時点ではスタンバイ時も高電力のままにしているのだそうです。高速通信のためには、スタンバイモードでも高電力である必要がありということなので、スマートフォンが暖かいのはこのせいというわけです。
スマートフォンだけではなく、基地局の省エネにも貢献するこの技術、2013年2月にバルセロナで開かれるMobile World Congressで実物が出展されると予想されています。
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