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デスクトップPCなどが連続30時間動く大型リチウムイオン蓄電池「パワーイレ」実機レビュー


地震や台風で停電が起こった場合に備えて電力を蓄えておける大型のリチウムイオン電池「パワーイレ」。コンセントにつなぎっぱなしにしておくだけで充電が行なわれ、停電時には接続してある機器に瞬時に給電を開始する性能を備え、夜間の安価な電力で充電し、日中の電力使用量が増える時間帯に使用する「ピークシフト」の設定もできるというかなり高機能な製品となっているようなので、この製品を開発したエリーパワー社に行って実機の性能を確かめてくることにしました。

東京都の大崎駅近くある社屋にやってきました。


受付のロゴはこんな感じ。3本の縦線は電池の基本構造である正極、負極、セパレーターを表しているそうです。ちなみに、長い線と短い線の比率は黄金比になっており、この数字は同社の名刺から蓄電池の筐体のデザインまであらゆるところに使用されているとのこと。


社内に入ると「パワーイレ」のプロトタイプがズラッと並べられていました。


国際標準化機構が制定した品質マネジメントの要件を満した企業に与えられる「ISO9001」の認証を取得済みのようです。


「パワーイレ」の本体はこんな感じ。成田エクスプレスの車体を手がけた「GKID」がデザインを担当しており、電池としてはなかなかスタイリッシュな見た目になっています。


全高約70センチで、成人男性と並ぶとてっぺんが太ももくらいまでの高さになります。


上から見るとこんな感じでハンドルが付いており……


ハンドルの下についているバーを握ると車輪のロックが解除されます。なお、ハンドルを握らない状態では車輪はガッチリと固定されているので、勝手に転がっていったりする心配はありません。


重量は約62キログラムとヘビー級ですが、下に車輪が4つ付いているのでスーツケースのようにコロコロと引っ張れば難なく移動させることが可能。


側面はこんな感じ。筐体はアルミの押し出し加工で作られており、思いっきり蹴っ飛ばしたりしてもビクともしない位の強度があります。


左右に1本ずつ転倒防止用の脚を搭載。余震が続くような状況下でも安定して使用することができます。


以下のように東日本大震災の際にも実際に現場で使用されていました。


背面にもいろいろとギミックが備わっているそうなので、以下で詳細をチェックしてみましょう。


左上のフタを開けると……


通信補助用のアンテナが登場。「エリーパワー」はKDDIの3G網と接続されており、温度センサーなどが収集した情報を管理センターに送信して故障の危険がある場合は使用者に連絡が行くようになっています。


こんな感じで本体の横に吸盤でアンテナを設置可能。


auの携帯電話がつながる範囲であれば遠隔監視が有効になるので、山小屋などのへき地に設置する場合でも安心。なお、音声による地震速報の案内を行なう設定にすることもできます。


廃熱ファンの排気口は一段くぼんだ場所に設置。


以下のように壁にピッタリとつけて使用しても排気口が塞がらずオーバーヒートすることがありません。


前面の吸気口にはフィルターを備えているので、多少ホコリっぽい環境で使用する際も安心です。


フィルターはこんな感じで取り外し可能。


内部には以下のようなバッテリーセルが16個搭載されています。


通常の角形電池は電極を丸めたものをつぶして楕円にしたものを四角いケースに入れることが多いそうですが「パワーイレ」の電池は「ティッシュ箱の中のティッシュ」のように電極を積み重ねることで高密度に配置しエネルギー効率を高めているそうです。


横から見ると電話帳くらいの厚さがあります。


なお、このバッテリーセルは製品の安全性を検証している国際的第三者試験・認証機関「TÜV」によって大型リチウムイオン電池としては初めての安全基準認証を取得しており、クギを突き刺してもショートをおこさないほどの安定性を備えているそうです。

TÜV Rheinlandリリース

エリーパワーが行なった実験によれば、以下のように一般的なリチウムイオン電池はクギを刺すとショートして火の粉を吹きながら発火することがあるようです。


一方「パワーイレ」に内蔵さているものは、クギを刺しても安定した状態を維持しており、推奨される使用法ではありませんがそのまま作動させることもできるそうです。


実際に電源と接続している様子はこんな感じ


「スマートハウス」と呼ばれる電力管理システムを備えた住宅で使用する場合は、LANケーブルと接続することで「省エネ優先」、「売電優先」などの設定を細かく調整することが可能。


直流電源とも接続できるので、端子と太陽電池を直接つないで充電することができます。


家庭用の100Vコンセントとも接続して充電可能。


コンセントと接続された状態では、電池はバイパスされ接続した機器に直接交流電流が流れています。


こんな感じで扇風機やヒーターが使用可能。最大1000ワットまでの機器を接続できます。


今回は、コンセントを引き抜くことで擬似的に停電状態を再現。


15ミリ秒という短時間で自動で電池からの給電に切り替わります。


停電した状態でも扇風機、ヒーター、デスクトップPCを駆動させることができます。この状態では約680ワットの電力を使用していますが、最大3時間ほどの連続使用が可能とのこと。一般的なPCと扇風機だけなら最大30時間の連続駆動もできるそうです。


実際にコンセントを引き抜いて、電池からの給電に切り替えている様子は以下のムービーでチェックしてください。なお、映像の中で流れている警告音はミュート設定にすることもできます。

家庭用蓄電池「パワーイレ」は停電時にこう動く - YouTube


タッチ操作に対応しており「ピークシフトモード」を選択しておけば、毎日自動で決められた時間に電池からの給電を開始します。


この状態では、接続された機器は全て電池から給電されているので真夏の昼間に節電しなければならない時などに便利。


実際に自動でピークシフトモードに切り替わる様子は以下のムービーで見られます。ほぼ無音で、どこかの部品が動く訳でもないので「本当に切り替わった?」と不安になりますが、オフィスなどで毎日行なう場合にはこれくらい静かなほうがありがたいかもしれません。

家庭用蓄電池「パワーイレ」のピークシフト機能を試す - YouTube


「パワーイレ」は法人用には月々3万6000円でリースが行なわれており、国や都道府県による補助の対象になる中小企業の場合は最大3分2の補助を受けて利用することができます。


また、個人向けは現在は大和ハウスの手がける一部の住宅とセットでのみ購入可能となっていますが、単体での販売も「まもなく開始予定」とのことなので、2012年中には購入可能になるっぽい感じ。お値段は100万円台後半を予定しているそうですが、こちらも国や都道府県からの補助が行なわれる可能性が高いので実際に支払う金額は少し安くなりそうです。なお、個人向けの販売も大和ハウスが主な代理店となって行なわれる予定とのこと。

まだ気軽に買える値段ではありませんが、量産体制が整えば安価な製品の提供も可能になるということ。災害時電力確保や太陽電池から充電して蓄電する、ピークシフト用に使うといった場合を考えると、個人で購入できる中で最強クラスの1台と言えるので興味のある人はチェックしてみてください。

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in 取材,   ハードウェア,   動画, Posted by darkhorse_log

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