インタビュー

ミドルウェアとは何か、ゲーマーが一度は目にする「CRIWARE」に聞いてみた


ゲームをプレイしていると、起動時にソフトのメーカーでもハードのメーカーでもない企業のロゴが表示されることがあります。こうしたロゴは、近年注目を集めているゲームエンジンやミドルウェアのロゴマークである場合が多く、その中でも、家庭用ゲームをよくプレイする人なら一度は目にしたことがあるのではないかと思われるのが「CRIWARE(シーアールアイウェア)」のロゴです。

今回は、「ミドルウェア」というものがいったい何をしてくれるものなのか、「CEDEC 2011」にブースを出展していた「CRIWARE」の開発者に聞いてみました。


CRIWAREとは? - CRI Middleware

これが今回出展されていた「CRIWARE」のブース。CRIWAREの開発を行う株式会社CRI・ミドルウェアの研究開発部チーフマネージャー櫻井敦史さんに、CRIWAREがミドルウェアとしてゲーム開発においてどんな働きをするのか、聞いてみました。


株式会社CRI・ミドルウェア 櫻井敦史(以下、櫻井):
CRI・ミドルウェアでは、主にゲーム開発のサウンド面と映像面を支えるミドルウェアの開発を行って来ました。今回展示している内容で言うと、「ADX 2」というのがサウンドのミドルウェア。「Sofdec2」というのがムービーのミドルウェアです。

それぞれ、どのように動作するのか見てみましょう。これが「ADX 2」です。従来の「ADX」は、読み込みのバランスを調整し、高圧縮のオーディオデータをディスクから同時に何本も再生することができるという点が特徴のミドルウェアでした。「ADX 2」ではこれに加えて、オーディオのデザインツールも追加されています。


櫻井:
WAVファイルなどを入れて、エフェクトをかけたり、ほかの音と組み合わせて再生のタイミングを合わせたりすることができます。具体的には、キャラクターが必殺技を出すときに、どんな音をどんなタイミングで、どんな演出をつけて発生させるのか、というところをデザインすることができます。これを「ADX 2」を使ってサウンドデザイナーが作成し、ゲーム側ではそのファイルを名前指定で再生するだけで、演出が可能という構造になっています。


櫻井:
今回展示している新機能として、コントローラーと同期するデモを行っています。今は「ADX 2」で作ったサウンドに合わせて、コントローラーが動いています。本格的な音作りをする人たちは、こうしたコントローラーを使って音の調整を行いますが、このコントローラーを動かして「ADX 2」のサウンドを直接調整することが出来るようになっています。

これまではマウスで画面をクリックして調整したりしていたんですが、サウンドの専門家にとってはつまみを使って調節できた方が便利ということで、今回こうした機能を追加しています。

CRIWAREに聞く「ミドルウェア」とは何か、「ADX 2」デモムービー - YouTube


櫻井:
ゲームの音作りでは、音の素材をたくさん作って、同時に多くの音を鳴らします。BGMが流れて、効果音が鳴って、爆発して、キャラクターがしゃべって、というように、様々な音が重なって動きます。「ADX 2」では、作った音に対して、パーツ単位で音を作るだけでなく、ゲームの中に組み込んだ後に、動いているゲームとツールをつないで、ゲームの中の音のバランスを直接調整するということが可能になっています。単体で聞いているだけでは分かりにくい音のバランスが、実際のゲームではどう流れるかを聞きながら調整できます。

プラチナゲームスさんが開発した「VANQUISH(ヴァンキッシュ)」では、CRIWAREのコーデックを使って、音を同時に100個ほど鳴らしています。すごく迫力と臨場感のあるサウンドが作られています。

『VANQUISH』 Act1 救出~信頼 - YouTube


櫻井:
「VANQUISH」については、開発の過程についてプラチナゲームスさんにCRIでインタビューをさせてもらいました。インタビューの内容は、CRI・ミドルウェアのサイトに掲載しています。

VANQUISH(ヴァンキッシュ) - CRI Middleware



櫻井:
「Unity」というゲームエンジンが最近話題になっていますね。これは、「ADX 2」で作った音をUnity上に組み込んで再生できるというものです。お客様から、Unityでゲームを作る際に音だけはADXを使いたいという要望が上がっていたため、今回は技術デモという形で参考展示を行っています。


櫻井:
Unityも音を鳴らしたりすることは出来るのですが、このデモの機能では、先ほども紹介したような形で「ADX 2」でサウンドを作ってしまって、その音を簡単にUnity上に組み込むことができるようになっています。これによって、Unityでの開発にも幅が広がり、開発者も楽ができるんじゃないかな、と思っています。


櫻井:
これもUnityを使った開発デモで、3つのムービーが立方体に貼り付けてあります。立方体を触れると、ムービーが再生されます。フル画面でムービーを再生するのはUnityの標準の機能にもありますが、こうしてポリゴンに貼り付けるということはまだ出来ていなかったようなので、今回こんなものも作ってみました。まだリリースの予定も決まっていない技術ですが、このようにミドルウェアはゲームエンジンの機能を補完するような役割も果たします。

CRIWAREに聞く「ミドルウェア」とは何か、CRIWAREデモムービー - YouTube


櫻井:
このゲームはUnityで制作されたものです。


櫻井:
このゲーム中に、実際にムービーをポリゴンの壁に貼って、魚が泳いでいるのを見ることができるオブジェクトを作ってみました。壁にアルファ値がついていて、向こう側が透けて見えるようになっています。アルファ値付きのムービーは、まだiPhoneでは出来ていないんですが、これから出来るようにしたいと考えています。


櫻井:
これまでCRIWAREを採用していただいたソフトを飾っていますが、CRIWAREは完全国産で、もう十数年続いているブランドになっています。「ADX」というミドルウェアが出たのがセガサターンのころで、現在までに累計で2200タイトルほどにCRIWAREのミドルウェアを使っていただいています。サターンのころは、「グランディア」「バロック」に採用されていました。

セガサターンの後、ドリームキャストが発売されましたが、このドリームキャストでは「ADX」がセガの標準開発環境に採用されたため、ドリームキャストのタイトルでは、かなり多くがCRIWAREを使っています。その時から使ってもらって、気に入っていただいて今も使われているという点が、国産ミドルウェアとしてのCRIWAREの強みでもあります。


櫻井:
最近の作品では「キャサリン」や、「Steins;Gate(シュタインズ・ゲート)」のPSP版、「グランナイツヒストリー」などに採用されています。「エルシャダイ」はミドルウェアをたくさん使って、少人数でコストを抑えて開発されているということで話題になりましたが、これにもCRIWAREが使われています。今後も、「PlayStation Vita」や「ニンテンドー3DS」も含めて、全プラットフォームに対応していきます。ユーザーさんからすると、CRIWAREのロゴがゲームに出て来てもなんだか分からなかったりするかもしれませんが、実は音や映像を支えているミドルウェアなんだということを知ってもらえると嬉しいなと思います。


GIGAZINE(以下、G):
海外のゲームエンジンやミドルウェアとの競争はどんな状況なのでしょうか。

櫻井:
こちらが海外に出て行く時も同じ障害に突き当たるのですが、やはり海外から日本へミドルウェアを持ち込む際も、言葉の壁を越えるのが難しいようです。加えて、サポート面でも、国内のミドルウェアということもあり、いざとなったら追い込みの時に電話をもらえれば、開発会社さんに直接伺って対応もします。海外の会社には難しい対応ですね。

さらに、我々は直接ユーザーの声を採り入れて「こういうことがやりたい」という意見を反映させています。実は、そうした機能追加ではお金をもらっていないんです。その代わり、その機能はほかのお客さんにも公開しますよ、ということで、要望を採用すればするほどユーザーに還元されて、CRIWAREの使いやすさが上がっていく、という体制をとっています。

要望を出す側も「こういう機能が欲しいんだけど」と言って「費用がこれだけかかります」と言われると、要望も言い出しにくいですが、「できる範囲でやります」ということにしておくと、意外と要望もたくさん出てくるんです。そうした部分で「付き合いやすい」と思っていただいているんじゃないかな、と。

G:
ありがとうございました。

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in 取材,   インタビュー,   動画,   ゲーム, Posted by darkhorse_log

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