取材

既存のスーパーを淘汰しかねない、ヨーロッパのディスカウントストア事情


こんにちは、自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。1.5Lのペットボトルの水が約25円と今までで一番安かったのがヨーロッパのディスカウントストアでした。

ヨーロッパではスーパーマーケットではないディスカウントストアが隆盛を極めています。ディスカウントストアは日本では考えられないバーコードの印刷で、レジスピードの常識を超えました。効率と削減をキーワードに数々の工夫がみられます。


円高でユーロが弱くなった中、ディスカウントストアでは驚くほど安値で買物ができますよ。そんなヨーロッパのディスカウントストアについてまとめてみました。自分の一押しはLIDLです。

世界を代表するフランスのスーパーマーケットはCarrefour。


ドイツ系のスーパーマーケットのKaufland。


上の二つは日本で言うならばイオン(ジャスコ)やイトーヨーカドー、ダイエーといった総合スーパーになります。日本ではこの総合スーパーが一般的ですが、ヨーロッパではディスカウントストアが競争に加わっています。何でも安いディスカウントストアは市場が一つになったヨーロッパ(EU諸国)では既存のスーパーマーケットを脅かす勢いです。

ベルギーのスーパーマーケットでは「この商品はALDI(ディスカウントストア)より安い」というポップが貼られていました。「じゃあ、これ以外はどうなんですか?」という声も聞こえてきそうなので、いい戦略だとは思えませんが。

フィンランドにはディスカウントストアのLidlが主要都市に進出していました。スーパーマーケットで会員になれば4ユーロ(約440円)でぶどうを買えますが、ディスカウントストアで全く同じものが半値で販売されていて、この価格差に唖然としました。

ディスカウントストアと価格競争ができない既存の総合スーパーマーケットは淘汰されかねません。実際にフランスのスーパーマーケットでは最大手カルフールが同業他社を買収し店舗をカルフールへ転換する動きがありました。

ヨーロッパ型ディスカウントストアの展開はドイツが中心となっています。そんな中でも一番の勢いを感じたのがLIDL

フランスのLIDL


スペインのLIDL


ポルトガルのLIDL


LIDLはバルト三国をのぞく全てのEU加盟国に店舗を展開して、ヨーロッパのディスカウントストアの中で最も勢いを感じました。どこの店舗も新しく、そして安いのでよく買物をしていました。LIDLとならぶALDIも忘れてはいけません。ヨーロッパでは西側の古くからの資本主義国を中心に展開されています。東欧諸国ではポーランドやハンガリー、スロベニアには進出しています。


次はブルガリアのPenny Market。社会主義の面影残る集合住宅の中に、資本主義の象徴のディスカウントストアがぽつりとあって、とても奇妙な光景でした。


そしてオーストリアで見かけたPlus


スペインのディスカウントストアとして有名なのがDiaがあります。写真はトルコで見かけました。


スペインのDia。店頭にセール品の告知が掲載されています。


ポルトガルで見かけたDiaは合弁会社でしょうか。


フランスにはLEADER PRICEというディスカウントストアがあります。写真だと分かりづらいですが、ひし形のロゴマークがそれです。


NETTOはデンマークのディスカウントストア。


ポーランド一番のディスカウントストアはBiedoronka(ビエドロンカ)。店名はポーランド語でテントウムシの意。


このようにヨーロッパではたくさんのディスカウントストアがひしめき合っています。ディスカウントストアにはスーパーマーケットのような多彩な品揃えはありません。品数を絞って一つの商品を大量に置くことで、安値での販売を実現しています。食品以外ではトイレットペーパー、歯ブラシ、石鹸、洗剤、ゴミ袋、電池、ライター、ペットフードと回転の速い消耗品が中心です。針や糸などの裁縫道具は手に入らないでしょう。必要なサイズのスパナや六角アーレンキー(六角棒スパナの親しみを込めた呼び方)もありません。

メーカーにとらわれないのも安値の秘密です。コカコーラの炭酸飲料やネスレのチョコレートなど、メーカーブランドは販売されていますが多くはなく、大抵の商品は独自ブランドです。それがメーカーブランドより安い。そして品切れも滅多にありませんでした。いつ来ても安い商品が必ずあることで、ディスカウントストアは著しい成長を続けています。

スーパーやおもちゃ屋などでも同様の仕組みが導入されていますが、とにかくレジのスピードが早い。レジに並ぶ時は幅50cm×長さ5mのベルトコンベアの上に商品を並べておきます。仕切りが用意されているので、他の人の商品と区別する為に前後に置きましょう。

ベルトコンベアのレジ側の先端にはセンサーがついていて、レジ係が商品を手に取っていくと間を自動的に詰めていってくれます。バーコードリーダーは据え置きで底面と前面の二つで読み取っていきます。商品には4つや5つと多数の面にバーコードが印刷されていて、レジ係はバーコードを探す必要がありません。右手で取って、左手に流すだけでいいのです。

底面は電子秤にもなっていて、野菜、果物を測ります。ヨーロッパでは日本みたいなパック販売は少なく、大抵1kgあたり0.99ユーロと従量制です。レジを通した商品は再度カートに移して、レジから離れた後でパッキングします。だから、後ろはつっかえません。この一連のシステムはとても効率的で、たとえ前の人がカートを満載していてもスムーズに自分の番がやってきます。

読み取りやすいバーコード。


これもスーパーなどと同じですが、お店の入口と出口が決まっています。出口からは入れませんし、入口から出れません。こうすることで人の流れを調整しています。陳列はパレットや段ボール単位で、商品をわざわざ棚に移し変えるなんてしていません。店内の通路はパレットを運ぶ台車が通れる広さを確保しています。

なお、ディスカウントストアでは冷えたジュースを見かけませんでした。乳製品やハムなどと違い冷やしておく必要がないからです。無駄な電力は使わないのでしょう。ビニール袋もありません。必要な人が購入します。もちろんレジ係が袋詰めなんてしません。レシートもスーパーマーケットに比べると短いです。これもレシート用紙の交換の効率を考えた結果でしょうか。

左がディスカウントストア、右がスーパーマーケットのレシート。長さが違います。


大抵のディスカウントストアでは中央にワゴンを並べて、雑貨や衣類、工具などをおいています。ほとんどメイドインチャイナです。このワゴンの商品は入れ替わりが激しく、いつでも買えるわけではないので「ここで買わないと」とプレッシャーを感じます。食品や消耗品は薄利多売ですから、このワゴンで利益を稼いでいるようです。そのワゴンの商品も安いんですけどね。

ワゴンに置かれる季節物のサンタクロース。


ディスカウントストアにあるエナジードリンクの成分表示、これでNL(オランダ)BE(ベルギー)FR(フランス)と三カ国を扱っています。一つの商品が多数の国で販売されています。


ディスカウントストアに立ち寄ってサンドイッチの材料を買い込み、そのまま昼ごはんにしていました。


気になるディスカウントストアの値段はこのような形に。ドイツのPenny Marketでは合計2.75ユーロ(約300円)となります。

リンゴジュース(0.39ユーロ、約43円)
バナナ @0.99/kg(0.40ユーロ、約44円)
トマト @1.69/kg(0.19ユーロ、約21円)
スライスチーズ(0.79ユーロ、約87円)
ヨーグルト(0.29ユーロ、約32円)
ハム 200g(0.69ユーロ、約76円)

オランダではゴーダチーズも安く買えますよ。


スペインのサーディン缶詰め。


参考になるように小遣い帳から値段を抜き出してみました。全部LIDLのディスカウントストアの税込み価格です。

・スペイン
水 1.5l(0.19ユーロ、約21円)
ヨーグルト 500g(0.49ユーロ、約54円)
ケチャップ 500ml(0.79ユーロ、約87円)
缶ジュース 330ml(0.19ユーロ、約21円)
キャンディ 200g(0.99ユーロ、約109円)
トイレットペーパー 12ロール(1.69ユーロ、約185円)

・ポルトガル
缶ビール 330ml(0.29ユーロ、約32円)
フルーツジュース 1L(0.95ユーロ、約104円)

・フランス
デザートプリン 200g(0.19ユーロ、約21円)
単4電池×8本 (1.79ユーロ、約196円)

・オランダ
バナナ @1.09/kg(0.45ユーロ、約49円)
トマト @1.49/kg(0.54ユーロ、約59円)
青リンゴ @0.99/kg(0.49ユーロ、約54円)
ゴーダチーズ @3.79/kg(1.19ユーロ、約130円)
ミートボール 400g(1.49ユーロ、約163円)
ハム 200g(0.73ユーロ、約80円)
コーラ 2L(0.38ユーロ、約42円)

円高でユーロが弱くなった中、このようなディスカウントストアがヨーロッパ中にあったので、旅がしやすくとても助かりました。

ディスカウントストアの対極にスーパーマーケットを超えるハイパーマーケット(標準的なスーパーマーケットよりはるかに広い店舗面積を持つ店舗)もあったりして、ヨーロッパでは激しい小売競争が繰り広げられています。服飾のH&M、家具のIKEA、卸問屋のMetroのように、ヨーロッパからの黒船としてここで取り上げたディスカウントストアが日本に上陸する日が来るかもしれません。

(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com)

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in 取材, Posted by darkhorse_log

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