赤い川、虹色の海、産業が生み出した傷跡の空撮写真
アメリカの写真家で自然保護活動家のJ Henry Fairさんは、サイト「Industrial Scars」にて、産業が地球に刻んだ傷跡を空撮で記録し、公開しています。中には幻想的な色によってまるで空想の絵のようになっている写真もありますが、すべて実際に撮影されたものです。
美しい虹色の帯。これは2010年4月にメキシコ湾で発生した原油流出事故によって流出した油。
こちらでは油がくっつきあって島のような形を作っています。
くっきりとシルバーの帯が入った海の上を飛んでいくカッショクペリカン。
ニューヨーク州キャッツキル山地で行われている天然ガス採掘の様子。右上に写っているのは教会です。
採炭で削られてゆく山。表土をちょうど硝酸アンモニウムで吹っ飛ばしているところですが、この爆破で飛んでいった石がぶつかり年間4人が亡くなっているそうです。なお、写真右側はきれいに残っていますが、これはちょうど私有地との境目になっているため。
この写真にはまだ森林の残っている山(左上)が採炭によって表土を削り取られていき(中央)、黒炭の地層が姿を現す(中央右下)という、採炭の流れがすべて収められています。
採掘ではバケットホイールエクスカベータのような巨大車両を使って一気に土を掘り出し、石炭は溶鉱炉へと送られます。一方、有用ではない物質は横へどけられていきます。
不思議な模様を描く表土。
採られた石炭は使用前に様々な化学処理が行われます。これは谷を切り取るようにダムを作ってスラリーを貯めているところ。フラクタル図形のようになっているのは水面です。
石炭を燃料とする500メガワット級の火力発電所が稼働すると、1年あたり12万5000トンの灰が出ます。今は煙突から出る灰は回収することが定められていますが、かつては放出し放題でスモッグの原因になっていました。灰は非常に軽いためあちこちに広がり、このような光景を生み出しました。
褐炭の炭鉱近くにできている廃液の池。
発電所はヒ素、水銀、カドミウム、セレン、鉛などの有害物質を含んだ水を約1億3000万トンも生成します。これらのうち40%はシートロック(建材)やコンクリートの材料として再利用していますが、残りは捨てられています。
サウスカロライナ州キャンディスにある発電所近くではこのような空撮写真が撮られています。赤い絵の具を水に垂らしたアートのようですが、現実の光景。
ドイツ、ラウジッツは褐炭が有名でその褐炭を使った火力発電所があるのですが、廃液の環境への影響は大きそう。
「肥料」という単語からは日差しの強い牧場で牛に草を食べさせているような牧歌的なイメージが浮かんできますが、実際にはフロリダ産のリン鉱石などを使って生産されており、広大な荒れ地を生み出して生産過程の最後は海にすべてを捨てているという現実があります。
まるで竜のような形状をした肥料生産の廃液。
肥料生産時にできる不要な重金属は、アメリカでは工業汚染原因のトップ10%に入ります。
何を写したものかわかりづらいですが、化学肥料の原料となるリン酸塩採掘のためにあちこちを掘り返した跡だそうです。採掘では放射性かつ酸性の廃棄物が大量発生し、すべての動物に有毒なフッ素ガスを出すため、大量の硫酸を使っての処理が行われます。
処理後の廃液も放射性かつ酸性。これが地下水と混ざり合ってしまうわけです……。
ミシシッピ川沿いの廃棄物貯蔵場所。ここにもリン灰石を硫酸で処理した高放射能かつ強酸性の廃棄物が大量に置かれています。
肥料工場で原料を運んでいるブルドーザー。その轍はきれいにならんだ筋になっています。
ノースカロライナ州には「豚工場」があります。豚たちの小屋には不毛の地と化した湖沼へと不要物を流すパイプがついており、糞尿はもちろん、豚が産んだ胎児などもすべて流されています。ちなみに、メスの豚には薬物とホルモンが与えられており、それらの糞便はピンク色をしているそうです。
これらの糞尿などは湿地帯を富栄養化させ、藻類の過剰な成長を促します。その結果、水中の酸素がすべて奪われてしまい、藻類以外の生物はみんな窒息してしまいます。この写真は草木の生えた原っぱに見えますが、実際は藻類が水面をほぼ覆い尽くした沼です。
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