スペインの小中学校教科書に記載された健康に関する記述、25％が科学的論拠なし

スペイン・グラナダで行われた調査により、スペインの小中学校で使われている教科書に記載された健康に関する記述の実に25％が、科学的論拠のまったくない「迷信」のような内容であることが明らかになりました。

スペインの小中学校の教科書には、理科や社会、家庭科や保健などさまざまな教科で、端々に「食事のあとは歯を磨きましょう」「フッ素入りの歯磨き粉は虫歯予防に効果的です」といった健康上のメッセージが盛り込まれているそうですが、中には科学的事実にもとづくケガへの対処法などとまったく逆のことを勧めているメッセージもあるとのことで、より慎重に事実を検証し「うそを書かない」ようにするという教科書作りの課題が浮かび上がってきています。

詳細は以下から。Around 25 percent of health messages in Spanish text books are not based on scientific evidence

スペイン南部・グラナダのBaza病院の知識管理部門が行った調査により、スペインの小中学校で使われている教科書に記載された健康に関する情報の24.6％は、科学的論拠のないものであることが判明しました。論文はBMC Public Health誌に掲載されています。

調査は2006年3月1日から2007年6月1日にかけて行われ、その期間にグラナダ市内の小中学校で使われていた教科書が対象となり、教師用の指導法ガイドやスペイン語以外の言語で書かれた教科書は調査対象から外されたとのこと。全237冊の教科書のうち129冊が健康に関する記述を含み、その中で80冊をサンプルとして使い合計844個所の健康に関する記述に関して分析を行ったそうです。

80冊のサンプルのうち59冊（73.7％）は小学生を対象としたもので、548個の健康に関するメッセージが含まれていました。1冊あたりのメッセージ数は平均10.6個で、メッセージが発見された個所は中学3年生用の教科書で最も多く（37％）、教科では生物と地学の教科書で最も多かったそうです（32.5％）。

その結果、844の記述のうち61％が「科学的根拠のレベルが不明」と分類されました。例えば、「家庭内の事故を防ぐため、子どもだけで料理をすることはやめ、必ず大人に手伝ってもらうようにしましょう」といった情報です。

また、24.6％は「科学的根拠がまったくない」と分類され、例としては「口で息を吸わずに鼻呼吸をすることで風邪が予防できます」「消化不良になり水中で失神してしまう可能性があるため、食後に泳ぐのはやめましょう」といった内容が挙げられています。

「科学的根拠のレベルがわかっている」と分類された15％のうち、「虫歯予防のためにフッ素入りの歯磨きを使いましょう」などを含む6％が「高水準の科学的根拠がある」とされ、「飲酒は栄養失調につながり消化器官に影響する」などを含む7.7％が「科学的根拠のレベルは低い」と判断されました。

また、メッセージの内容で分類すると、「食生活のバランスと栄養失調」「食品衛生」「喫煙」「性行動とAIDS」「休養と人間工学」に関する記述の70％が「科学的根拠のレベルが不明」と分類されたのに対し、高いレベルの科学的根拠に基づく記述が多かった分野は「歯の健康」（37.5％が「高水準」）と「妊娠と新生児」（35％が「高水準」）だったそうです。

なお、全844の記述のうち2つ（「傷口は過酸化水素で殺菌すべき」「筋肉を痛めたあとは必ず安静にしましょう」）は科学的事実に反したことを勧めていたとのことで、Baza病院の研究者の1人Inés María Barrio Cantalejoさんは「今回の調査結果は、教師や教科書編さん者が健康に関する情報を選択するための新たな基準を確立する必要性を示唆しています。それにより、子どもたちが事実に基づく知識を得られるようになるでしょう」と述べています。

健康に関する内容に限らず、教科書が書かれた当時に正しいと思われていた情報でも数十年後に事実と異なると判明するケースもあるかと思われますが、修士号や博士号を持っているような人でも、後々訂正されたことに気付かず小中学生の時に教科書で学んだ内容をそのまま事実だと信じ続けていることは意外と多いのではないでしょうか。応急処置や健康法など、はるか昔に学校で学んだ知識を実際に役立てる場面が来たら、まずはその知識が間違っていないか確認してみるとよいかもしれません。