コラム

宮崎の「口蹄疫(こうていえき)」がどのような影響を与えているのかまとめ


口蹄疫は人間には感染しない+感染した牛や豚を人間が食べても影響はないのですが、牛・豚・羊・山羊・鹿には感染し、口の中に水ぶくれができて餌が食べられない、水ぶくれの痛みで脚が不自由になるなどして衰弱していき、死に至るという病気です。感染すると餌を食べなくなるので肉質や乳の出が悪くなり、家畜としての金銭的価値が激減します。結果、エサをやり続けて育てても高い値段で売れないどころか赤字になってしまうわけです。さらに感染力が非常に強く、空気感染してしまい、ほかの自分のところで育てている家畜だけでなく、ほかの畜産農家の家畜にも次々と感染していくため、畜産農家にとってはまさに死活問題であり、放っておくと当然ながら肉・乳関連の食品にも影響が出ることになります。

というわけで、一体何がどうなってこのような事態になってしまったのか、今後どのようなことになる可能性があるのか、その影響についてまとめてみました。

詳細は以下から。
とりあえず、現時点での最新情報は以下のページにまとめてあります。

農林水産省/口蹄疫に関する情報

宮崎県:口蹄疫に関する情報提供

5月4日時点での畜産関係車両消毒ポイント全体地図(PDFファイル:748KB)を見ると、被害の深刻さが目で見てわかります。


そもそも口蹄疫が確認された場合、通常はどういう対応を行うのか、まず韓国で政府がどのような対応をしたのかを見てみましょう。2010年4月12日の話です。

APRIL 12, 2010 03:01
口蹄疫で史上初の警戒警報、阻止に赤信号

政府は10日、緊急家畜防疫協議会を開き、発生地域から500メートル以内で行なっていた予防的殺処分を、発生地域から半径3キロに拡大する方針を決めた。予防的殺処分を半径3キロにまで拡大したのも初めて。

家畜疾病に関する危機警報は「関心―注意―警戒―深刻」の4段階になっており、08年過去最悪の鳥インフルエンザ(AI)に見舞われた時に警戒警報を発令したことがある。

これだけの規模の対応を一気に行った理由は伝染力の高さ。

豚は牛に比べ口蹄疫ウィルスの伝染力が3000倍以上高い。

そのため、中国の政府の対応の早さは異例のものとなっており、以下のような対応を行っています。

APRIL 12, 2010 03:01
8年ぶりに豚口蹄疫、江華で食い止めろ

政府はひとまず、江華島の外に口蹄疫のウイルスが広がるのを食い止めるのに全力を傾けている。 江華島と陸地とを繋ぐ2つの橋では、厳しく消毒を行う一方、ほかの地域の人々の江華島への訪問の自制を要請している。畜産機関や山岳、釣り、観光関連団体による「江華島への旅行を当分、謹んでほしい」という公文を送る一方、各テレビ局にも同様の字幕を画面を流すよう要請した。

韓国でも同時期に口蹄疫が発生しており、韓国江華郡では45人の医療関係者と750人のスタッフ、30台の処分した牛や豚を運ぶ車両、20台のショベルカーを現地に派遣、2万5000頭以上を処分しています。以下にその際の処分の様子を撮影した写真があります。

2010年04月12日 11:10
http://news.ifeng.com/world/201004/0412_16_1601313.shtml


この口蹄疫がどれぐらい非常事態なのかという説明は以下のニュースがわかりやすい。

2010.04.12 11:51:00
中央日報 - 【社説】穴の開いた口蹄疫防疫網、対策が急がれる

口蹄疫には薬がない。一方で伝染性は非常に強い。国際獣疫事務局が悪性伝染病A級15種のうちでも最高に挙がる理由だ。一度発病すれば該当の国家の関連製品の輸出が厳格に制限される。それだけ何より予防と防疫が重要だ。今回の口蹄疫は結果的に穴の抜けた防疫体系をそのまま露呈したわけだ。抱川の口蹄疫が終わったとちょっと油断した防疫当局が隙を突かれたのだ。

疫学の調査が終わると感染経路が明らかになるが、抱川の「A」型とは違う「O」型口蹄疫だという。これは2001年以後、東南アジアで毎年発生する典型的な口蹄疫だ。口蹄疫は70%が感染された畜産品と汚染した品物を運びながら伝染する。海外旅行が一般化されたこのごろ、一般市民と畜産農民たちも警戒を緩めてはいけない理由だ。今回、口蹄疫が発生した農場主も海外旅行がひんぱんな上、中国産飼料を使っており、防疫当局が関連性を調査しているという。したがって口蹄疫が流布する国家に旅行するときは物品搬入や靴の消毒など細心の注意が必要だ。1人の不注意が大きな被害を誘発する。同時に口蹄疫は人に伝染しないので、食べ物に関して、不必要な恐怖心を助長することも禁物だ。

本来であればどれぐらい移動が制限されるのか、といった具体的なことも以下で報じられています。

APRIL 13, 2010 03:35
「晴天の霹靂…どうすれば…」肩を落とす農家 口蹄疫の江華郡を行く

口蹄疫の発生地域では、住民の移動が徹底的に統制されている。記者は同日、口蹄疫が初めて発生した地域である錦月里に入るまでに、3回も防疫消毒を経なければならなかった。家畜衛生防疫支援本部の関係者が、防除詰め所で陣頭指揮を行っていた。詰め所を通るたびに、防除要員らは、洗車用のゴムホースで車両に消毒剤を噴射した。汚染地域に入る時は、ドライバーは必ず車から降りて「1人用消毒室のブース」に入り、全身を消毒することになっている。

仙源面の役所には「災害現場指揮所」が設けられ、行政公務員や軍・警察が常駐していた。彼らの多くは、マスクや長靴、軍手をはめたまま、忙しく動き回っており、「住民らの移動や集会は禁じられています。ご協力願います」と書かれた垂れ幕が、町のいたるところに掲げていた。

そして4月20日(火)、宮崎県で口蹄疫に感染している可能性の高い牛が2000年以来、実に10年ぶりに発見されます。

2010年4月20日 12時12分
口蹄疫:宮崎で牛3頭感染の疑い 牛・豚の移動自粛要請 - 毎日jp(毎日新聞)

 宮崎県によると、今月9日、獣医師から宮崎家畜保健衛生所に口の中に軽いかいようがある牛がいるとの連絡があった。同衛生所の家畜防疫員が立ち入り検査を実施したが、症状がある牛が1頭だったため経過観察とした。

 しかし、16日夕方になり同じ症状の牛がいるとの連絡があったため17日、再度立ち入り検査を実施した。口の中をぬぐった液を動物衛生研究所(東京)で検査した結果、20日、遺伝子検査で陽性だったと連絡が入った。現在、ウイルス分離検査による確定診断を進めている。

 宮崎県で口蹄疫にかかったとみられる牛が確認されたことを受け、農林水産省は20日、赤松広隆農相を本部長とする口蹄疫防疫対策本部を設置した。赤松農相は閣議後会見で「これ以上広がることのないように万全の措置をとりたい。(感染が疑われる牛は)出荷していない、安全だ」と述べた。専門家による委員会を20日に開催し、感染源、感染経路の究明を図る。

とにかく風評被害が起きるのを恐れたため、下記のような対応を行うことに。

2010年4月20日 13:19
宮崎で口蹄疫か 都農町の和牛3頭 国内では10年ぶり / 西日本新聞

専門家によると、感染した家畜の肉を食べても人体に影響はないという。

 記者会見した東国原英夫知事は「市場検査もあり、疑似感染の肉が一般に出回ることもない」と強調し、風評被害に強い警戒感を示した。

 都農町が管内にある「児湯地域家畜市場」(同県新富町)の高野雄二管理部長は「県外の購買者からの問い合わせがひっきりなしだ。風評被害で宮崎の牛のイメージが下がり、売れなくなるのが一番心配」と不安を口にした。児湯郡市畜産農協連合会は、21日に予定していた成牛の競りを中止し、23日からの子牛の競りも延期することを決めた。

また、基本的な対策である移動禁止措置も行うことに。

2010 04/20 23:15
宮崎の牛、口蹄疫感染疑い 国は牛肉輸出停止 : 南日本新聞エリアニュース

 県は同日、東国原英夫知事を本部長とする防疫対策本部を設置した。同農家が飼育中の牛16頭すべてを処分。同農家から半径10キロ以内の牛や豚、生乳などの移動と、同20キロから外への搬出を禁止した。期間はいずれも3週間。
 また、禁止区域内の食肉解体場と家畜市場計2カ所を閉鎖。日向市内の国道10号など4カ所で、飼料運搬車などの消毒を始めた。
 農林水産省は、牛肉の輸出を一時停止する措置を取った。

この時点で既に現場には悲痛な空気が漂っていることが下記の報道でわかります。

2010年4月21日 09:19
「畜産王国」に衝撃 都農町で口蹄疫感染か 「信頼低下が心配」 緊急会議対応策を協議 宮崎県 / 西日本新聞

会合に出席した養豚業の男性(56)は「子豚は毎日生まれるのに出荷できなくなる。感染を抑えて早く規制解除にこぎ着けたい」と話した。畜産業の男性(61)も「10年前を思い出した。風評でどんな影響が出るか分からず、やはり心配」と暗い表情。同時に「肉を食べても健康に影響がないことをきちんと知らせてほしい」と訴えた。

 児湯郡市畜産農業協同組合連合会(新富町)の奥野福見参事は「早く終息してもらいたいが、メドが立たない。時間がたつほど、子牛の月齢が変わって評価も下がるし、えさ代もかかる。農家へのダメージは大きい」とまゆをひそめた。市場への影響についても「やっと低迷していた価格が上向きかけていたときなのに…。宮崎牛の信頼度が薄れるのが怖い」と話した。

実際の消毒作業や消毒薬品を袋詰めするJA職員の写真が以下にあります。

高鍋町持田で消毒作業を行う県職員


農家に配布する消毒用薬品を袋詰めするJA職員


しかし、さらに感染した疑いのある牛が約60キロ離れた地区で6頭発見されます。

2010/04/21 11:39
新たに牛6頭が口蹄疫の疑い 宮崎県の農家 - 47NEWS(よんななニュース)

感染源については不明で、口蹄疫が宮崎よりも前から流行していた中国から輸入した稲わらが疑われていましたが、輸出前に処理されているので、感染源としては考えにくいとのこと。

2010年4月21日
宮崎で2例目の口蹄疫感染疑い、川南町で牛6頭 : 週間ニュース : 九州発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 県によると、2軒の農家は、それぞれ別の輸入代理店から購入した中国産の稲わらを餌に使っていた。わらは輸出前に薫蒸処理されているため、「感染源とは考えにくい」としている。

さらに3例目が400メートル離れた農家で見つかります。

2010/04/21-23:42
時事ドットコム:口蹄疫疑い3例目=宮崎の牛で発見

今回で3例目となり、2例目となった同町の農家から北に約400メートルの農家で見つかった。県はこの農家が飼育する牛118頭を殺処分する方針。

新たに口蹄疫の疑いの出た畜産農家に入る宮崎県職員らの様子が以下にあります。

新たに口蹄疫の疑いがある牛が見つかった畜産農家に入る宮崎県職員ら(21日午後2時40分、宮崎県川南町で)


この時点で再び稲わらが感染源なのではないか?という疑いが再浮上。

2010年4月22日0時36分
asahi.com(朝日新聞社):宮崎で3例目の口蹄疫疑い例3頭 2例目近くの農場 - 社会

 県によると、3農場のうち2農場では同じ仕入れ先の中国産飼料を与えていたといい、県は「飼料が発生源の可能性もある」とみている。

 同じ仕入れ先の飼料を使っていたのは、都農町の農場と川南町の2農場のうちの1軒。中国産の稲わらで、宮崎県内の業者から買ったという。農林水産省によると、中国から輸入される稲わらは、口蹄疫が発生していない地域で生産され、加熱処理したものしか輸入しないことになっている。

なお、こうやって殺処分された牛などには補償が出るのですが、その金額は以下のようになっているそうです。

2010年4月22日 00:32
封じ込め 必死の取り組み 宮崎・口蹄疫現地ルポ / 西日本新聞

 同町対策本部で指示を行っていた県立農業大学校(高鍋町)の後藤俊一副校長は「家畜伝染病予防法では、処分された家畜には補償が出るものの、患畜で評価の3分の1、疑似患畜で5分の4」と指摘。「すべてが補償されるわけではなく、農家の経済的ダメージは大きい」とおもんばかった。

そのため、JAバンクが融資窓口を設置することに。

10-04-22
日本農業新聞 - 相談窓口を設置 融資通じ農家ら支援/口蹄疫疑いでJAバンク

JAバンクは、宮崎県で口蹄(こうてい)疫に感染した疑いのある牛が見つかったことを受け、影響を受ける畜産農家や食肉処理業者からの融資相談などに応じる体制を整えた。県内のJAで対応するほか、JA宮崎信連と農林中央金庫に相談窓口を設けた。

こうした状況を受け、宮崎県選出や出身の国会議員3人が畜産農家への金融支援や全国的に不足している消毒薬の確保を要望します。

2010年4月22日 13:48
口蹄疫問題で農家支援要望 宮崎選出国会議員 / 西日本新聞

川村氏らによると、全国の畜産農家が自衛のために消毒薬を購入し、現地で消毒薬が不足。豚などの生産にも影響が広がっていることから、融資条件の緩和なども要請したのに対し、赤松農相は「当面は金融支援が有効で、風評被害にも省を挙げて対策を取る」と答えたという。

この時点で再び感染ルートについて推測する記事が掲載されています。

2010年4月22日
口蹄疫:川南町でも疑い 県、金融支援を検討 畜産農家へ、相談窓口も設置 /宮崎 - 毎日jp(毎日新聞)

 ウイルスで感染する口蹄疫。00年に宮崎市と高岡町(当時)で3件の感染が確認された際にも原因の特定には至らなかった。飼料や人の移動、風--。可能性の一つにあがるのが輸入稲・麦ワラだ。農水省は05年、中国での口蹄疫発生を受けて中国産の稲ワラの輸入を一時停止したが、07年に解除した。

 動物衛生研究所によると、中国では昨年から今年にかけて口蹄疫が多発し、韓国でも今年1月に発生した。

 一方、JA宮崎経済連は取り扱う飼料用稲ワラを「口蹄疫の経験から慎重を期したい」と国産に限定している。ただし、国産は量が不足しており、価格も高め。農家が輸入稲ワラを利用せざるを得ないのも現実だ。

こうして、韓国・中国・日本の3カ国が口蹄疫のために非常事態になったわけです。特に中国は国土が広いためなのか、なんと「毎年」口蹄疫が発生しているとのこと。

APRIL 23, 2010 02:24
中国は大陸全域に拡散、日本は牛3頭感染 韓中日で同時感染

毎年口蹄疫が発生している中国は、今年も31の省市のうち、80%以上で口蹄疫が発生した。1月の新疆自治区のウィーグル地方ではじめて発生しており、以後寧、河北、山東、河南、広東、広西など、大陸全域で相次いで発生している。

そうこうしているうちにさらに2頭が発見されます。

2010年4月22日 21時19分
口蹄疫:感染疑いの牛、新たに2頭発見 計14頭に 宮崎 - 毎日jp(毎日新聞)

2010年4月23日
口蹄疫の感染疑い4例目、川南で新たに2頭 : 週間ニュース : 九州発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

県は埋却用地を決め、この農家が飼育する65頭を薬殺処分する。

調べてみたところ、注射器で薬物を注射して牛を殺すとのこと。畜産農家は今まで一生懸命育ててきたものを殺さなければならなくなるため、かなり悲痛な状態になるそうです。

また、特に畜産農家への影響は甚大で、このあたりから段々と深刻なことになっていきます。1頭を維持するのに1ヶ月で約2万円かかるため、コンスタントに競り市へ出す必要があるわけですが、それができないわけです。また、1頭でも感染の疑いが出るとさらなる感染を防ぐために全頭処分となるため、被害額は甚大になっていきます。

2010 04/23 11:06
宮崎口蹄疫疑い 競り延期で畜産農家経費増懸念 養豚も防疫/鹿児島県内 : 南日本新聞エリアニュース

 姶良中央市場(霧島市)に5月に子牛を出荷予定の繁殖牛農家落合弘幸さん(42)=同市=は、影響拡大によるコスト増が気がかりだ。「餌代や光熱費など1頭当たり月約2万円かかる。相場の先行きが見えない中、姶良も延期されると、コスト分を回収できるか分からず怖い」と言う。
 子牛を買う側の肥育牛農家にも、競り市延期は影を落とす。畠久保牧場(指宿市)は25~28日、曽於中央市場で20頭以上を購入予定だったが、延期で牛舎に空きが出そうだ。上久保操社長(68)は「効率上よくないが、病気のリスクを考えると仕方がない」と、早期の再開に期待する。
 現在、感染疑いがあるのは牛だけだが、養豚業者も水際での防疫を強化する。薩摩川内市で約300頭を飼育する満園克義さん(39)は出入り車両を動力噴射機で洗浄し、農場に石灰をまくなどいつも以上に念を入れる。「うちみたいな零細企業で発生したらと考えるだけで恐ろしい」

そしてついに今まで「感染の疑い」だったものが、「確定」に変わります。

2010年4月23日 11時41分
口蹄疫:感染確定 国内10年ぶり - 毎日jp(毎日新聞)

2010/04/23-11:56
時事ドットコム:宮崎の1例目、口蹄疫確定=農家支援策も拡充-赤松農水相

2010.4.23 12:39
宮崎の口蹄疫は韓国と同タイプ 農水省、O型ウイルス確認 - SankeiBiz(サンケイビズ)

ここで確定したのは1例目、一番最初に疑いがもたれたものについて。この口蹄疫のタイプが韓国と同じ「O型」(全部で7種類あるうちの1つで、牛にも豚にも感染するタイプ)だったわけです。ここからどんどんと口蹄疫の疑いのある家畜が発見されていきます。

2010/04/23 23:42
さらに牛2頭が口蹄疫疑い 3月末の検体から陽性反応 - 47NEWS(よんななニュース)

これまで未発見だった農家で、5例目、6例目に当たる。

2010年4月24日 0時14分
口蹄疫:疑いの強い牛や水牛見つかる 5、6例目…宮崎 - 毎日jp(毎日新聞)

感染ルートは特定されておらず、なおかつ人間自身が移動することによっても口蹄疫のウイルスを運んでしまうため、各種イベントが続々と中止になっていきます。

2010年4月25日 13時06分
口蹄疫:周辺4県影響 競りや催し中止続々 九州 - 毎日jp(毎日新聞)

 宮崎県では感染の可能性がある牛が見つかった川南町で、山海の幸をトラックに載せて販売する25日の「トロントロン軽トラ市」(町商工会主催)が中止に。JA宮崎経済連が宮崎市・シーガイアで24、25日に開催予定だった「食と農の祭典2010」も防疫措置で職員が出払っているため取りやめになった。経済連の担当者は「こういう時だからこそ開催したかったが、残念」と話した。

 鹿児島県では21~25日の成牛市場などでの競りが取りやめになったほか、鹿児島市が5月9日に予定していた「市農林水産春まつり」の中止を決定。宮崎県境にある志布志市で28、29両日開催予定の「お釈迦(しゃか)まつり」も実行委が感染防止を理由に中止した。

 このほか大分、熊本、佐賀でも24~28日に予定されていた肉牛などの競りが中止になった。

さらに7例目が登場。

2010年04月25日
口蹄疫感染疑い7例目を確認 - 県内のニュース - miyanichi e press

この7例目はこの時点では過去最大規模の処分を行うことに。

2010年4月25日19時36分
asahi.com(朝日新聞社):牛725頭、殺処分へ 口蹄疫疑い、過去最大規模 宮崎 - 社会

宮崎県は25日、同県川南(かわみなみ)町の農場で飼育されている牛725頭のうち、遺伝子検査で4頭から口蹄疫(こうていえき)に感染した疑いを示す陽性反応が出たと発表した。725頭は26日以降殺処分される。同町や隣接する都農(つの)町で感染疑い例が相次いで確認されているが、7例目の今回は最大規模。殺処分される牛や豚などは1108頭となり、過去の例を大きく上回る最大規模となった。

ここまで来るとさすがに風評被害を完全に抑え込むことは難しく、とんでもないことをしていたスーパーがあることが発覚します。

2010/04/26 13:21
「宮崎産不使用」の張り紙撤去 口蹄疫で不適切表示 - 47NEWS(よんななニュース)

宮崎県でウイルス性感染症の口蹄疫に感染した疑いのある牛が相次ぎ見つかった問題で、九州農政局は26日、九州の精肉店やスーパーなど約930店を調査した結果、1店で「宮崎産は使っていません」との不適切な張り紙があり、撤去を求めたことを明らかにした。

当然ですが人間には感染しませんし、口蹄疫にかかった家畜は殺処分されるので市場に出回りません。さらに口蹄疫が発生すると家畜の肉を輸出することができなくなります。そのため、以下のような事態も発生しています。

2010年 4月 27日 15:16 JST
国内 / 経済 / 和牛肉の輸出停止でNYの高級レストランに打撃 / The Wall Street Journal, Japan Online Edition - WSJ.com

日本政府は国内でウイルス性感染症の口蹄疫に感染した牛が見つかったことで先週、牛肉輸出を停止した。これは風味と食感、高い価格で有名な高級牛肉が海外で入手困難になることを意味する。

ニューヨークの一握りの高級レストランで提供され、時に「神戸」と称される和牛肉の喪失を料理長らは嘆いている。マンハッタンのオールド・ホームステッド・ステーキ・ハウスの料理長、オスカー・マルティネス氏は「日本の供給業者から牛肉を仕入れている。神戸牛で有名なレストランであり影響は大きいだろう。神戸牛は人気メニューで、これを食するために来店する常連客や日本人顧客もいる」と述べた。

 米国の輸入牛肉に占める和牛肉の割合はわずかだ。デンバーの調査会社、グローバル・アグリトレンズのパートナー、ブレット・スチュワート氏によると、昨年の米輸入牛肉は86万3986トンで、うち和牛肉は141トン、金額では590万ドル(約5億5000万円)に過ぎない。 

 ファイソン氏は、ウィルス感染が小規模である場合、日本の輸出停止期間は3~6カ月になる、と予想する。和牛と掛け合わせた米国牛や豪州牛の肉の需要が増加する可能性があることは希望の光という。

 一方、マルティネス氏は、使用できるのは日本産の和牛肉だけ、と主張する。日本の輸出停止期間に他国産の和牛肉で代用する可能性はあるか、との質問に「そうした肉はひどい。日本産とは比較にならない」と述べた。

このままだと段々と経済的な被害が甚大になっていくため、宮崎県の東国原知事・中村幸一県議会議長・JA宮崎中央会の羽田正治会長が赤松広隆農相らに直接会って要望を伝えることに。

2010年04月28日
農相に予算措置など要望 口蹄疫で知事 - - miyanichi e press

ここまでは「牛」だったのですが、ここからとうとう「豚」にまで感染が拡大していきます。

2010年4月27日23時48分
口蹄疫に似た症状の豚、宮崎の畜産試験場支場で : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

今までの「牛の口蹄疫」と違い、「豚の口蹄疫」は感染する確率が飛躍的に高まります。

2010年4月28日1時24分
asahi.com(朝日新聞社):豚486頭も殺処分へ 宮崎の口蹄疫、検査結果待たず - 社会

専門家は「豚は、体内でのウイルス増殖力が強い」として、感染拡大への注意を呼びかけている。

 県によると、同一農場で感染を疑われる家畜が出たために殺処分した豚はいたが、感染が疑われる症状を示した豚が出たのは初めて。

 宮崎大学の末吉益雄准教授(動物保健衛生学)は「豚は一般的に口蹄疫に感染しにくいが、いったん感染すると体内でのウイルスの増殖力は牛の100倍から千倍とされ、感染が広がる可能性も高くなる」と注意を呼びかけた。

さらに感染を防ぐために設定した制限区域よりも外側で感染疑い例が確認され、最初の感染例からなんと70キロも離れているところとなっており、感染力の強さが改めて浮き彫りになります。

2010/04/28-12:24
時事ドットコム:制限区域外で初の確認=口蹄疫、豚含め10例に-宮崎

この農場は、20日に最初の感染の疑いが確認された都農町の農場から直線距離で約70キロ離れている。同県が設定した家畜の搬出を制限する区域(半径20キロ)外で感染の疑いが見つかったのは初めて。

どれだけ大変なことが起きているのかというのがなかなか伝わりづらいのですが、現場はこの時点までで既に修羅場となっており、まさに非常事態と言っても過言ではない状態に突入。

10-04-28
日本農業新聞 - 口蹄疫発生1週間/封じ込めに懸命 死骸、ふん尿処理滞る

感染が疑われる7例目の殺処分もおおむね終わったが、関係者の疲労の色は日増しに濃くなっている。移動制限区域内の農家にはふん尿を搬出できないなどの課題も出ている。

 「事務職員の3分の1、約40人が毎日、防疫作業に当たっている。農林水産課の職員は1週間、ほとんど寝る時間もない」。口蹄疫が続発した川南町の職員は激務の様子を語る。

軽トラックに消毒剤を散布する様子が以下で写真報道されていますが、確かに大変そうです。

2010年4月29日 01:02
「まさか70キロも離れて…」 えびの市で口蹄疫感染疑い牛 畜産農家不安な表情 / 西日本新聞


さらに2頭の感染例が宮崎県で発生。

2010年4月29日12時43分
宮崎さらに2頭が口蹄疫、乳牛50頭処分へ : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

1例目から1週間以上が経過した時点で関係者がどれだけ困窮しているかというのが以下の報道でよくわかります。

2010年4月29日
口蹄疫:えびので疑い「まさか」 県内畜産業者に衝撃 /宮崎 - 毎日jp(毎日新聞)

 JA尾鈴養豚部会(38戸)の遠藤威宣(たけのり)部会長(56)は「えびの市でも感染疑いの牛が出た。今後どうなるのか不安で、パニック状態だ」と訴え、「農家からは『出荷できないなら、1カ月持たない』などの電話が朝から鳴りっぱなし。経済損失は計り知れない」と不安を口にした。

 また、肉用繁殖牛部会(362戸)の江藤和利さん(65)は「不安で生きた心地がしない。まず精神ケアを第一に」。河野正和・都農町長も「融資だけではなく、経済損失も100%近い支援を」と要望した。消毒などで自衛隊へ協力要請を求める声も上がった。

そして12例目、基幹産業崩壊の危機。

2010年4月30日 12時19分
口蹄疫:宮崎で12例目 川南町で新たに確認 - 毎日jp(毎日新聞)

飼育している1429頭は殺処分する。口蹄疫感染確認は疑いを含め12例目。

こうして次々と感染が拡大するため、競り市が次々と中止になり、結果、収入の手段を失われていきます。

2010年4月30日午後8時44分
口蹄疫発生で農家支援策 九州、競り市の中止相次ぎ 社会 全国のニュース:福井新聞

 地元のJA尾鈴(川南町)は「再開されるまでの緊急のつなぎ資金」として独自に、出荷できなかった農家に対し、雄牛1頭当たり30万円、雌牛の場合は20万円を無利子で貸し付ける。県内計7カ所の家畜市場は、5月の牛や豚の競り市を延期することを決めた。

 大分県では、5月11~13日に竹田市と玖珠町で予定していた子牛の競り市を延期。出荷予定だった牛は約1200頭で、同県は出荷できなかった農家が資金繰りに困らないよう、JAからの融資(1頭当たり上限30万円)の利子(年率2・95%)を肩代わりする。

感染が一向に収まらないため、不満も段々と噴出するようになっていきます。

2010年05月01日
asahi.com:口蹄疫「死活問題」/余波広がる-マイタウン鹿児島

 「危機感があまりになさすぎる」。養豚歴35年の上村隆志さん(59)は、口蹄疫騒動を巡る関係機関の動きを見て感じるという。「昨年から中国、韓国などで相次いで発生しており、すぐに行政、業界、地域が一丸となって乗り出すべきだった」
 養豚は専業農家が多いだけに、口蹄疫が流行すると大打撃になりかねない。「牛と違って豚は年間2回は出産し、1回あたり約10頭産む。移動や搬出制限区域に入れば売れなくなるうえ、飼育頭数が増え『在庫』を抱え込んでしまう」と漏らした。
 県畜産課の北野良夫課長は「豚での感染は最悪のシナリオの一つだった」と明かす。牛に比べ飼育密度の濃い養豚は、いったん感染すれば、伝播(でん・ぱ)速度が速く、被害が甚大になる可能性があるという。

感染を防ぐための消毒についても、通常の消毒液だけでなく、「酢」も使い始め、必死さが伝わってきます。

10-05-01
日本農業新聞 - 酢使いまん延対策 文書郵送、呼び掛け/宮崎・JA尾鈴【九州・沖縄】

食用酢を1000倍に薄めて散布すれば、安価で安全に対策できるとして文書の郵送を決めた。

 4月29日付の日本農業新聞に掲載された「酸でウイルス死滅」の記事コピーも併せて配った。JA畜産部の松浦寿勝部長は「家畜は消毒液のにおいを嫌がるので、どうしても畜舎の内壁や餌場には十分に散布できないことが多い。酢ならば家畜の顔や水槽にも使え、価格も安い」と効果に期待する。

殺処分と簡単に言っても、そのためには時間も人でもかかり、さらにはそれ以外の感染拡大を防ぐ措置などもあるため、絶対的に人手が足りず、ついに自衛隊に出動要請を出すことに。

2010.5.1 17:54
口蹄疫で陸自に派遣要請 宮崎県、13例目確認も - MSN産経ニュース

 宮崎県の東国原英夫知事は1日、県内で口蹄疫が発生している問題で、陸上自衛隊に災害派遣を要請した。陸自によると、都城駐屯地(同県都城市)から約100人を派遣し、家畜伝染病予防法に基づき殺処分された家畜を運搬して埋めるほか、消毒活動も行う。

当然ながらこれだけ時間が経過すると消毒薬も不足し始めます。

2010年5月2日19時11分
asahi.com(朝日新聞社):口蹄疫の消毒薬が不足 九州各地で輸入待ち - 社会

 口蹄疫のウイルスは酸やアルカリに弱く、消毒には塩素系の消毒薬や炭酸ソーダ、消石灰などが用いられている。

 大分県によると、発注した消毒液はヨーロッパからの輸入品のためすぐには手に入らない。その上、輸入会社が家畜の数で優先順位を割り当てているため、宮崎、鹿児島、熊本が優先され、その次の順になっているという。

今回のこの記事を作成するため、かなりの数のニュースに当たったのですが、どうも宮崎での疑い例が続出したあたりから各都道府県で特に畜産が基幹産業になっているような所、さらに宮崎県の近隣において、消毒用の薬品などなどを事前に確保する動きが多く、あっという間になくなってしまって品不足状態になっているようです。

さらに15例目。

2010年5月2日21時35分
口蹄疫感染の疑い、新たに牛3頭…宮崎 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

県は農家が飼育する豚299頭と牛424頭を薬殺処分する。同県内で口蹄疫の感染が確定したり、疑いが出たりしたのは15例目となった。

この時点でなんと殺処分した家畜は9015頭に。しかし今後のことを考え、さらなる殺処分をすることに。

2010年5月4日 19:25
宮崎で豚1万8700匹処分へ 口蹄疫感染疑いの豚発見で / 西日本新聞

既に処分されたものも含め、これまでに処分対象となった牛や水牛、豚は計約2万7770匹。

消毒を受ける豚の輸送トラックはこんな感じです。

消毒を受ける豚の輸送トラック(宮崎市佐土原町で)


東国原知事は「非常事態を宣言しても良いと思う。終わりのみえない闘いに入っている気がしている」と話しており、確かにまだまだ予断を許さない状況のようで、この直後に殺処分対象の牛・水牛・豚は計3万3985頭となっています。

しかし、この段階にいたって、ついに感染経路についてある仮説が出てくるようになりました。

2010年5月6日 21時14分
口蹄疫:人、車両での伝播の可能性示す…専門家委の委員長 - 毎日jp(毎日新聞)

田原健委員長(鹿児島県家畜畜産物衛生指導協会専務理事)は終了後、報道陣に「風によるウイルスの拡散は考えにくく、人、車両による伝播(でんぱ)を否定できない」との認識を示した。

 理由として田原委員長は、1例目の発生地周辺での続発が7例目までで途絶え、その後の発生地は少し離れており、両者の間にも畜産農家がある点を挙げ、「風を完全否定するわけではないが、中間を飛び越えている」と述べた。

 山田正彦副農相もこの日の会見で「(畜舎の)入り口の牛、豚で発生している。人か物を介して伝播しているという感じだ」と述べた。そのうえで山田副農相は、現行の防疫対策の徹底で封じ込めを図る考えを示した。

5月7日、さらに感染は拡大、殺処分対象は遂に4万匹を突破。

2010/05/07 01:36
新たに12カ所で口蹄疫疑い/宮崎、計1万匹飼育 | 全国ニュース | 四国新聞社

宮崎県は7日、新たに同県川南町の農家12カ所で、口蹄疫に感染した疑いがある牛6頭と豚13匹が見つかったと発表した。感染疑いの家畜が出た農家や施設は、県内で計35カ所となった。県はこれらの農家が飼育している牛184頭と豚1万723匹を処分する方針で、これまでの処分対象は計約4万4900匹に上る。

2010年5月7日
口蹄疫疑いによる処分、過去最悪4万4000頭に : 週間ニュース : 九州発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 豚舎では白い防護服に身を包んだ獣医師や町職員らが豚舎から豚を出し、薬やガスで殺処分をした後、穴に埋めているという。

 4月20日に隣の都農(つの)町で1例目が確認されて以降、1時間ごとに豚舎に消毒液を散布するなど万全の態勢を敷いてきたが防げなかった。従業員の男性は「飼育を再開しても出荷まで最低1年はかかる。無収入が続くと融資を受けても返済できない。このままでは町の畜産業は壊滅してしまう」と訴える。

なお、テレビのニュースなどでこの件があまり取り上げられない理由として、農林水産省のページには「現場での取材は、本病のまん延を引き起こすおそれもあることから、厳に慎むよう御協力をお願いします。」と書かれており、そのためカメラが入ることができず、なかなか「映像を撮影することができない」「写真撮影できない」ため、報道されにくいという事態が発生しているようです。

ちなみに、ネット上では連休あたりから急速にこの問題が認知され始め、以下のような反応になっており、政府をビシバシに叩きまくる風潮となっています。

2010年05月02日21:26
2ちゃん的韓国ニュース : 【宮崎】自民党、口蹄疫対策について民主党政府に申し入れ「なぜ農水大臣が外遊に」「現場が混乱している。防疫も限界」

2010-05-03
「15行」でわかる現政府の「口蹄疫」感染対策 - 鳩山政権では「食の安全」を保障できない! - esu-kei_text

2010年05月06日03:00
口蹄疫「想像を絶するような規模」「非常事態宣言も」殺処分対象は3万4000頭に:ハムスター速報

・つづき
【閲覧注意】口蹄疫に感染した牛の殺処分や感染後の写真資料いろいろ

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in メモ,   コラム, Posted by darkhorse

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