コラム

リンクを張る行為は本当に犯罪の幇助行為になるのか?


既にあちこちで伝えられていますが、大阪府警の発表によると、インターネット上に会員制ロリータサイトを立ち上げ、会員に対し児童ポルノの所在を示すアドレス(URL)を教示していた開設運営者などを児童ポルノ公然陳列罪で逮捕し、無料レンタル掲示板に児童ポルノ画像を蔵置していた自営業者を児童ポルノ公然陳列罪で逮捕・送致したとのこと。

朝日新聞などが報じるところによると、正確には児童ポルノ公然陳列幇助の疑いで逮捕しており、このサイトは有料の会員制。永久会員は3万4000円、単年度会員は2万6000円で、2003年6月から今までの会員数は約2450人、合計で1000万円以上の売上。

で、問題なのは今までと違って画像を貼ったからという理由ではなく、その画像を貼ってある場所へのリンクを教えただけでも「児童ポルノ公然陳列」の「幇助」となって逮捕されたという事実。今回は画像だったものの、これがどんどん拡大解釈されて警察権力の濫用という事態もあり得ない話ではないわけで、ブログのコメントとかトラックバックなどで勝手にリンクを張られてもこの理屈だと「幇助」で逮捕と言うこともあり得るわけで、かなりむちゃくちゃなのではないかと。

というわけで、今回の件についてなぜ警察はココまでするのか、一体どのあたりの判断で逮捕になったのか、全世界的に見てこんな例はあるのか、いろいろと調べてみました。
まずは今回の件を報じているニュースなどを。

スラッシュドット ジャパン | 児童ポルノ掲載URLを紹介するサイトの運営者ら、公然陳列幇助で逮捕・起訴

asahi.com:児童ポルノ愛好家の有料会員サイト運営者を逮捕 大阪 - 社会

東京新聞:児童ポルノHP紹介で逮捕 大阪府警、全国初:社会(TOKYO Web)

ITmedia News:ポルノサイトリンク集運営者、児ポ法違反ほう助で逮捕

少女ポルノ画像掲示板に誘導、リンク掲載を初摘発 : ニュース : 関西発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

時事ドットコム:アドレス掲載の会社員逮捕=ポルノサイト紹介で、全国初-大阪府警

児童ポルノサイトのURL紹介で、全国初の逮捕者

J-CAST ニュース : ポルノ画像リンクで「逮捕」 検索エンジンも危ない!

「リンクで『ほう助』に問われるとなると、児童ポルノだけでなく、名誉毀損についても影響を与えることになる。例えば、首相の悪口を書いたサイトへのリンクを張っているだけでも名誉毀損を問われるわけで、書いた人が有罪になるだけでなく、(リンクを張って)まとめた人も有罪になる可能性がある。こうなると範囲が広がりすぎる」


海外ではMP3ファイルへの直リンクが著作権侵害の幇助だということでリンクサイトの開設者に損害賠償責任を負わせることにしたという事例があります。

小倉秀夫の「IT法のTop Front」 Napster.no事件

そもそも幇助行為とは何ぞや?というわけで、幇助については以下が非常に詳しい。

羊堂本舗 脳ざらし紀行 (2004-05-14)

【第78回 プロバイダの法的責任(大阪FLマスクわいせつ画像裁判)(その2)】(弁護士・弁理士 日野修男)

したがって、正確に言うと「幇助」とは犯罪の実行行為以外の行為で正犯の実行行為を容易にする行為ということになります。

 このように、幇助の概念は非常に広い概念で、道具や場所を提供するなどの有形的な行為にかかわらず、犯罪に関する情報を提供したり、「やれやれ」と犯意を強めるような応援行為も、犯行をとめるべき者がとめない不作為についても幇助を認めた例があります。

かなり広範囲に適用できるので、解釈の仕方次第でいくらでもやりたい放題というのが実情です。

また、今回の件に関しては奥村徹弁護士が自サイト上にてかなり詳細な見解を発表しており、非常に参考になります。

奥村徹弁護士の見解 - アドレス掲載の会社員逮捕=ポルノサイト紹介で、全国初-大阪府警

「よくわかる」を見ても、陳列罪か提供罪か、正犯か幇助犯かが微妙で、よくわかりませんね。

「よくわかる改正児童買春・児童ポルノ禁止法」という本に「Q50 児竜ポルノの画像を閲覧できるサイトにハイパー・リンクを設定した場合にはどのような犯罪が成立しますか。」という項目があり、それを読んでもいまいち不明だ、というわけ。さらにサイバー犯罪条約の児童ポルノ関係の線ではないかと言うことも書いています。

Cybercrime Convention (Final Draft) Japanse Translation (Tentative) by Takato NATSUI

第9条 児童ポルノグラフィ関連犯罪

1. 締約国は,意図的に,権利なく,以下の行為がなされた場合において,その国内法上で刑事犯罪行為として処罰するために必要となり得る立法及びその他の措置を採らなければならない。

a. コンピュータ・システムを通じて頒布する目的で,,児童ポルノグラフィを製造すること

b. コンピュータ・システムを通じて児童ポルノグラフィを提供し又は利用可能にすること

c. コンピュータ・システムを通じて児童ポルノグラフィを頒布又は伝送すること

d. 自己又は他人のために,コンピュータ・システムを通じて児童ポルノグラフィを入手すること

e. コンピュータ・システム内又はコンピュータ・データ記憶媒体上に児童ポルノグラフィを保有すること

ただし、この中に書かれている「児童ポルノグラフィ」というのが何か?という定義はかなり詳細に決まっている。以下のような感じ。

2. 上記第1項においては,「児童ポルノグラフィ」は,以下のものを視覚的に描写するポルノ・マテリアル を含むものとしなければならない。

a. あからさまな性行為を行っている未成年者;

b. あからさまな性行為を行っている未成年者であるように見える人物;

c. 未成年者があからさまな性行為を行っているように表現する写実的な画像

視覚的情報が入っていなければならないようなので、文字列のみのリンクだとこっち方面での適用はかなり難しいっぽい。なので、「児童ポルノ公然陳列罪」と「幇助」についてのみの解釈で逮捕まで至ったと考えるのが妥当な線。

ネット上の今回の件について議論している掲示板やブログなどを読むとよくあるのが「有料だから逮捕されたのでは?」というもの。このあたりも見てみましょう。

インターネット犯罪(わいせつ)

なお、インターネット上でポルノ画像を有料で提供する業者は「映像送信型性風俗特殊営業者」として、公安委員会に届出する義務があります。届出を怠りますと処罰対象となります。

画像を直接提供していたわけではないのでこの届出をしておらず、警告や注意指導をすっ飛ばして逮捕につながった可能性は否定できない。聞いた話だと届出をしていると監視対象にはなるが、監視されているからこそ速攻で注意とかが来るらしいので。なお、こういう話もある。

北の系2003/資料/国会/児童ポルノ単純所持規制について

それから、ちょっと細かいところになりますが、七条で、児童ポルノの頒布等というのが処罰の対象になっております。頒布、販売、業として貸与または公然陳列。確認になりますが、個人的な複製というものは犯罪として処罰する対象にはなっていないという理解でよろしゅうございますでしょうか。

○大森参議院議員 七条では、児童ポルノを頒布、販売し、業として貸与し、または公然と陳列する目的のある場合を除いて、製造、所持、運搬または輸出入等は処罰されなくなっております。このような目的がない個人的な複製行為については、頒布等の目的での製造には該当しないというふうに考えます。目的によると思います。

やはり今回の件で儲けていたというのが警察としては重要な点ではあったらしい。

あと、今回のは「わいせつ図画公然陳列罪」ではなく「児童ポルノ公然陳列罪」なので、そもそも「児童ポルノ」って何?というわけでその定義を「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」で見てみるとこういう事のようです。

児童ポルノとは、写真、ビデオテープその他の物であって、次のいずれかに該当するものをいいます。

・ 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により確認することができる方法により描写したもの
・ 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により確認することができる方法により描写したもの
・ 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により確認することができる方法により描写したもの

つまり、リンクをクリックすれば視覚的に確認できるからアウト……という可能性もある、と。また、2004年の法改正で児童ポルノ法の第7条1項に「提供罪」というのが新設されており、「特定かつ少数の者に対する提供行為」でも処罰対象になっているのもポイントかと。この点については以下の記事が詳しい。

弁護士山口貴士大いに語る: 【児童ポルノ法】U-15グラビア過激化 9歳のTバックアイドル登場【提供罪の恐怖】【単純所持規制の恐怖】

記者) でも、私は、これが「児童ポルノ」だとは知らなかった訳です。「故意」がないのではないですか。

山口) よく勉強されていますね。しかしながら、この場合、子どものいやらしい写真が含まれている写真集だ、という程度の認識があれば故意は成立してしまうのです。

記者) それでは、児童ポルノの問題に関する取材は出来ないじゃありませんか。

山口) 「提供」どころか、単に所持しているだけで、罪にしようという議論すらありますよ。「単純所持罪」を制定しようという意見は、特に自民党に根強いようですから。要するに、「児童ポルノ」を「覚せい剤」のような、禁制品にしてしまおうというのです。

警察が動く場合、単純に現場の稚拙な判断で動いてしまうこともあるわけですが、その裏には政治方面からの圧力によって「今回はこういう流れを作りたいのでこれこれの件に関しては特に重点的にやっていこう」ということが実際にあります。今回の件もこのあたりの流れと無縁ではないでしょう。そしてこういう政治方面から要請されている事件を取り扱えば担当の警察官は点数がアップするのでお給料が増えるだけでなく、上からの覚えも良くなる、と。

今回の大問題である「リンクを張る行為がそもそも幇助行為なのかどうか?」という点については以下のような感じ。
法と常識の狭間で考えよう: インターネット規制

そして、この問題は、リンクを張る行為が、そもそも幇助行為たりうるかという問題である。この点については、園田寿・甲南大学法学部教授が、次のように述べていることが参考になる(電脳世界の刑法学の「質問と回答」欄)。

 「リンク行為自体はインターネットではまったく通常の行為といえるでしょう。しかし、たとえば果物ナイフの製造や販売それ自体については何ら違法性がなくても、殺人を犯そうとする者にそれを知って果物ナイフを貸すことは殺人の幇助となることも当然です。リンク行為がインターネットでは当然の行為だからという理由だけでは、わいせつ図画公然陳列の幇助を否定する根拠にはなりにくいと思います。」

 私は、かつて、自分の著書の中で、この点について、次のように述べたことがある(拙著『最前線インターネットQ&A集・サイバースペース法入門』〔1997、情報管理〕184頁)。

 「リンクを張る行為というのは、ホームページ上に、リンク先のURLを記述して、リンク先のホームページからの公衆送信を促すものとは言えますが、それ以上のものではなく、原則として、リンクを張る行為それ自体は無色の行為であると考えられます。したがって、リンク先のホームページにわいせつな画像データが掲載されているとしても、リンクを張る行為それ自体については、その共犯(幇助犯)は成立しないと考えられます。ただし、リンク先のホームページの内容を認識した上で、ことさらにそのホームページを宣伝して、リンクを張って、そのホームページへのアクセスを容易にしたような場合には、わいせつ図画公然陳列罪の幇助犯が成立する場合があると思われます。」

 随分前に書かれたものであるが、現在においても、この見解は基本的に妥当するのではないかと思われる。そして、園田教授の見解とは少し観点が違っているが、結果においてはあまり違いがないように思われる。

 そこで、検索サービスに対してこの理論を適用することができるかどうかが次の問題である。

検索サービス、たとえばYahoo!やGoogleなどは立派な幇助になるのではないかと考えられるのですが、過去にYahoo!は警視庁からの不正口座売買サイトを検索結果に出さないように文書で要請されてそれを受諾している過去があり、幇助かどうかを問われる前に「こういう風にしておけばそちらの会社に行って家宅捜索したり逮捕したりすることはないよ」というようになっているようです。なので、検索サービス提供会社が今回の件を「我が社のサービス存続の危機だ!」として大々的に抗議するなどという事態はまずあり得ないかと。

いずれにしろ、既に起訴されているのでその結果次第では日本国内のネットサービスや運営方法についてかなり激震が走る可能性があるわけなので、今後の展開には要注目かと。

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in メモ,   コラム, Posted by darkhorse

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