「非実在青少年」問題とは何なのか、そしてどこがどのように問題なのか?まとめ

by 漫画家うめ

2010年2月27日(土)、「番外その22:東京都青少年保護条例改正案全文の転載」というエントリーによって、東京都が18禁でないものも全部含めたマンガ・アニメ・ゲームなどなどの実在しないキャラクターについて、年齢設定がどうなっていようと、見た目が18歳未満なら「非実在青少年」であると定義し、こともあろうか被害者が存在する児童ポルノと混ぜて同じ扱いにして規制してしまおうという案を東京都の条例にしようとしていることが白日の下にさらされました。性的な表現だけでなく、暴力表現や残虐表現もアウトであり、未成年だけでなく成人も巻き込まれます。

一番の問題は、信用に足るかどうかわからないどこかの誰かが自分の好きなように「これはOK、これはアウト」というのを勝手に決められるという点です。つまり「拡大解釈による恣意的な運用が可能」であるというのが最大の問題点です。中世の魔女狩りや戦前の治安維持法の再来と言っても過言ではありません。いくら行政が「そんな運用はしない」と言っても、条例にその旨を明確に記載していなければただの口約束に過ぎません。

なぜこのような極論が出てきてしまうのかというと、実はこの「非実在青少年」問題は今に始まったわけではなく、実に50年以上も前から続いている大問題であり、特にマンガは今回と同じような事件によって「拡大解釈による恣意的な運用」をされまくった結果、かつて滅亡の危機に実際に立たされたのだ、という歴史的事実があるためです。

というわけで、「何やらあちこちで騒がれているがそもそも一体何なのか、なぜ大騒ぎしているのか、何がどのように問題なのかがよくわからない」という人のため、ある程度のタイムラインに沿って問題の全体像をまとめてみました。まとめの詳細は以下から。
一番最初のきっかけは以下のブログです。

■2010年2月27日(土)
番外その22:東京都青少年保護条例改正案全文の転載: 無名の一知財政策ウォッチャーの独言


都民のパブコメはおろか、書籍出版協会・雑誌協会が出したパブコメ(pdf)日本出版労働組合連合会が出したパブコメ (pdf)すら完全に無視された格好であり(恐らく他の多くの事業者・業界もこのパブコメには反対意見を出していたことだろう)、さらにこの条例の対象と今現在の日本における東京の一極集中を考えると、この表現規制の影響は、漫画やアニメ、ゲームなどの業界は無論のこと、出版業界全体、雑誌業界全体、アイドル業界、映画業界などおよそ表現にかかわる全業界に及ぶのは間違いなく、ネット規制という点からはあらゆるインターネット関連企業が関係し、携帯規制という点では、総務省の携帯フィルタリング導入騒動を考えても、全携帯電話キャリアとコンテンツ・プロバイダーがまたも甚大な被害を被る可能性も高い。

この「東京都青少年の健全な育成に関する条例」の改正案全文をスキャンしたものがネット上で公開されています。
The Prefectural Ordinance about young healthy upbringing (a reform bill) - 2010/2/24

「非実在青少年」という文面が書いてある場所はこんな感じです。


問題となっている箇所は山ほどあるのですが、特に問題となっているのが以下です。

一 青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの

 二 年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写から十八歳未満として表現されていると認識されるもの(以下「非実在青少年」という。)を相手方とする又は非実在青少年による性交類似行為に係る非実在青少年の姿態を視覚により認識することができる方法でみだりに性的対象として肯定的に描写することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの

要するに、どこかの誰かが主観で判断して、見た目が未成年っぽいグラフィック&未成年っぽい声の場合、アウトとなる、ということです。どのような基準で決めるかというと「見た目」であって、年齢などの明確な基準はなく、もうめちゃくちゃです。

この「非実在青少年」、上記を見るだけでもわかるようにかなりめちゃくちゃなので、最初は「こんなの通るわけがない」と2ちゃんねるでネタ扱いされ、「痛いニュース」入りしてしまいました。

■2010年02月27日
痛いニュース(ノ∀`):東京都「顔や声が18歳以上に見えない二次元キャラを『非実在青少年』と定義して規制する」


51 : クッキングヒーター(千葉県):2010/02/27(土) 20:15:22.08 ID:3rhqEo/R
いつも思うけど現実とフィクションの区別がつかないっていうのは
こういう連中を指すんじゃないかな


171 : エビ巻き(石川県):2010/02/27(土) 20:21:01.27 ID:idNuz4cy
まず何をもって健全とするのか定義しろよマジで

349 : ニッパ(富山県):2010/02/27(土) 20:28:59.89 ID:OvXeVv6h
冷静に考えてみるに、一八歳以上の定義が知りたいな
なんと言っておるんだこの馬鹿どもは


368 : 消しゴム(catv?):2010/02/27(土) 20:29:37.52 ID:5mPWbmYk
被害者がいないのになんで規制するんだよ
規制派の理論根拠は「幼女絵に触発されて現実の幼女をレイプするかも知れない」だろ?
だったらそのソース出せよ


405 : マントルヒーター(群馬県):2010/02/27(土) 20:31:11.33 ID:uavnL0wq
こういう条例って一回作られたら規制が緩むこと無いからな
作られたら終わり


524 : ペン(大阪府):2010/02/27(土) 20:35:11.59 ID:EziztB6u
全国の流通は東京都の規制を基準にしてるから東京でアウトなら日本全国でアウト
流通から閉め出されるからゾーイングどころかコンビニや書店では売れなくなる

買えるのはネットかエロビデオ専門店みたいなところだけ
売り上げは下がるだろうし廃刊になる雑誌も増えるだろう


868 : 餌(愛知県):2010/02/27(土) 20:48:52.64 ID:igl3fexm
なんだろ、提案した連中はこんな条例を作ることで
「青少年が健全に育成できる環境に近づく」
と本気で考えてるんだろうか。

翌日、この件について、以下のブログがかなりわかりやすく考えられる問題点を指摘しています。

■2月28日(日)
東京都青少年育成条例改正案における表現規制の危険性について語る - 空気を読まない中杜カズサ


ここで一番問題なのは、第七条二項の新条文。ここで「非実在青少年」というのは、つまるところ一八歳未満のキャラクターすべてに当てはまります。ここで18歳未満のキャラクター、すなわち架空の人物で創作されたものがセックスしたら不健全な図書として指定されるという点だけでも、それは表現規制として大いに問題があります。おそらく現在連載されているマンガの中でも、かなりのものが該当してしまうでしょう。それでも青少年にセックスシーンを見せるのはいけないと規制に賛同する方もいらっしゃるかと思いますが(しかしこれは青少年に限定しない話なのですが、それについては後述)、この条文だと何もセックスに限りません。「性交類似行為」というものの定義が曖昧だからです。極論、男女の接触があれば、キスレベルでさえ「性交類似行為」に該当し、不健全図書の対象となってしまう可能性はあるのです(余談ですがここの条文「肢体」だと思っていたら「姿態」でした。ということは、体が顔しか映ってなくても、それが性交類似行為となっていたら対象となるわけで)。さらに問題なのは、この18歳未満という定義でさえ曖昧なものとなっています。というのは「年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写から十八歳未満として表現されていると認識されるもの」というように、誰かの主観によってたとえそうではなくても18歳未満と判断されてしまうからです。しかし創作物のキャラクターに明示されていないのに年齢を客観的に判断するなんて不可能だと思われます(エルフは何百年生きるんだっけ?)。ちなみに大友克洋作品ばりの老人化した子供だったらどう判断されるのでしょうか。

つまり、この条文は表現規制をしているという問題のほかにも、「性行為」にせよ「容姿描写」にせよ範囲が広すぎて、極論男女の接触があった場合どのような年齢で表示してあってもアウトとなりかねないのです。

ただ、もちろん「青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの」か判断する人がいるので、全部が全部そうなるわけではないと思われるでしょう。しかし、その人の性的描写に関する主観は、必ずしも同じでしょうか。軽いものでも性描写とみなす人がそこにいる可能性はゼロでしょうか。そしてそれは表現を破壊しかねない程のものとなる可能性はないでしょうか。規制を判断する人の基準は、必ずしも自分の基準とイコールではなく、大きくかけ離れていることもあり得るのです。

上記ブログの中では、今回のこのめちゃくちゃな規制強化の動きを20年前に起きた「有害コミック運動」と重ね合わせて危惧しています。20年前に起きた有害コミック運動の詳細については下記ページが詳しいです。

1990年代の有害コミック運動はそれからどうなったのか - Timesteps


 しかし、尚も運動は激化し、まるでそのままお上推薦のもの以外のマンガはなくなる勢いにまで発展するところでした。大げさではなく。まだ子供と言える年齢だった自分でそう感じたのですから、リアルタイムでこれを見ていた人は本気でそう思っていたかもしれません。

 さて、これらは何だったのか、というのは様々な考え方があるでしょう。ただ、ゾーニングを残したのはプラスだったかもしれませんが、多くの負の遺産も遺してしまったかもしれません。こういった成年的な描写に対して、個人的には子供に見せるのには困るものもあるのでゾーニングはやむを得ない思う面もあるのですが、そのゾーニングなど基準というものの信用性をあの過激な運動で表現側が全く信じられなくしてしまったのは大きいのではないかと。なんというかゾーニングを盾にして大人が見る表現媒体全体を規制する動きに繋がるのではないかという感じで。

 現在でもコミックなど規制の動きが出てくると非常にピリピリするのは、あの時の過剰な悪夢が記憶に蘇る人も多いのではないかと。最近児童ポルノ法改正の議論が交わされますが、これに反対意見が多いのは実際に被害を受けている人を軽視しているのではなく、一度でも認めてしまうと段階的にこの時の激しい規制がそのまま、いやそれ以上に行われるのではないかと思っている人が多いのではないかとも思えます(つか、この問題も非常に複雑なので、表現の自由だけでは語れない側面も多いのですが長くなるのでそれはまたの機会に)。実際、その当時の規制推進派が現在政治家として有力な地位にいる例は多いとのことなので(これは党を問わずに)。

さらに調べてみると、そもそもこの「マンガはけしからんので全部規制だ!」という流れはなんと1955年から続いており、実に2010年にいたる今まで、延々と55年間もこのバトルは続いているのです。

有害コミック騒動 - Wikipedia

この「マンガを描きたい人たち&マンガを読みたい人たち」vs「マンガを描かせたくないしマンガを読ませたくない人たち」のバトルは1955年に起きた「悪書追放運動」がどのようなものであったかという断片を読むことで垣間見えてきます。今の時代しか知らない人にとってはとても信じがたいものとなっています。

日本でのマンガ表現規制略史


「日本子どもを守る会」「母の会連合会」「PTA」による「悪書追放運動」。漫画を校庭に集めて「焚書」にするといった「魔女狩り」が横行。「図書選定制度」「青少年保護育成法案」といった動きの反面、出版界、編集者も批判に抵抗。のちの自主規制への道筋がつけられていく。

ほかにも当時の資料を読むとわかるのですが、マンガ本を学校の校庭に集めて火を付けるというめちゃくちゃなものとなっており、こういった迫害は55年前から延々と手を変え品を変え続けられています。

ほかにも「白ポスト」というものが設置されたこともあったとか。

東京都青少年育成条例改正案における表現規制の危険性について語る - 赤い世界

 若いお子さんは知らないと思いますが、昔は街角に「白いポスト」と呼ばれる、マンガを捨てる為のポストが乱立し、集められた手塚治虫や藤子不二雄と言った人たちの作品が、見せしめとして焚書にされる時代があったのです。

 たったの20~30年前の話ですが。

これが実際の白ポストの画像です。こういうものを設置して、「悪書」を追放させたわけですね。


白ポストとは - はてなキーワード

起源
1950年代からの悪書追放運動は1965年に「三ない運動」(読まない、見せない、売らない)に発展した。この三ない運動の一環で、「巣鴨母の会」が作り、1966年5月 24日、巣鴨駅改札口(出口)付近に設置されたものが最初期のものである(朝日新聞1966.5.25)。これをうけ、同年9 月には「東京母の会連合会」が53台の白ポストを作り、警視庁少年一課の指導のもと都内の各駅に設置することになったという(読売新聞1966.9.20 夕)。この運動が全国化したものが現在全国にある白ポストと思われる。

推進主体
やや後のことになるが警察官僚(仁平圀雄警察庁刑事局保安部少年課長・当時)が第80回国会で、「不良雑誌を家に持ち帰らないための白ポスト運動とか、これは大分前に一度盛んに進めた運動」であると、白ポストの設置は警察により進められたと答弁している(衆議院文教委員会文教行政の諸…昭和52年5月 13日)。

ちなみに現在も設置され続けており、以下のサイトに日本各地の白ポスト画像がまとめられています。

白ポスト写真館


マンガ・ゲーム・アニメといったものが「ジャパン・クール」としてもてはやされるようになったからといって、決して認めている人ばかりではないという事実は今もこうして厳然と存在しているわけです。

当時と同じようなことが実は定期的に繰り返されており、これまで何度も激突を繰り返してきたわけですが、ネットがかなり普及してから激突するケースとしては、事実上今回が初めての戦いと言っても過言ではない状況なのです。上記ページを見てもらえるとわかりますが、マンガはこのような問題に延々と直面し続けており、日本のコンテンツ産業の強さはまさにこの戦いの歴史と表裏一体となっていると言っても過言ではないわけです。どんなに馬鹿馬鹿しい内容のマンガであっても、その存在が許されているのはひとえに過去の偉大な漫画家たちや出版社などによる必死の抵抗があったためです。

つまり、互いに相容れない価値観同士が激突すると何が起きるのか、そしてこういう動きに便乗する動きとはどういったものなのかという「今までは見えなかったブラックボックス」の一端が、ネットが本格的に普及した今、ついに目前で目撃可能な事態になってきているのだ、というのが正確な状況です。

さて、時間軸を戻して、3月になり、あまりにも荒唐無稽すぎ&憲法に違反しすぎであったため、誰もが「こんなの通るわけがない」「バカなのか?」「ネタだろ」と思っていた「非実在青少年」に端を発する東京都の青少年保護条例改正案がこのまま本当に議会を通過してしまうことを危惧し、これまでもずっと表現を規制しようとする側の動きをウォッチしてきた「反ヲタク国会議員リスト」メモ管理人によるまとめサイトが出現します。

■3月6日(土)
東京都青少年健全育成条例改正問題のまとめサイト
http://mitb.bufsiz.jp/


そして翌日、今回の「非実在青少年」を含む青少年保護条例改正案を通過させようとしている規制賛成派はネタでも冗談でもなく、「本気」であることが、明治大学国際日本学科准教授・藤本由香里さんのmixi日記でのまとめによって判明し、波紋を広げます。論旨としては、このような表現規制につながりかねない内容の条例が十分な審議もされないまま、ほかの事案と同様にしてあっという間に可決されてしまう危険性が大きいので、行動を起こさなければいけない、という感じです。

■2010年03月07日14:38
【重要】都条例「非実在青少年」の規制について


 そして、出版社のほとんどすべてが東京に集中している中で、この法律が通ることは、国の法律ができたのと同じ効果を持ちます。
 にもかかわらず、不思議なことに、ネットでも、マイミクさんの日記やMLでも、この問題はほとんどまともには話題になっていません。おそらく、あまりにもばかばかしい規定ゆえに「半笑い」的なコメントが多く、みんな「こんなばかばかしい規定、通るはずない、と思っているのだと思います。なぜかネットでも、個人のブログや痛いニュース以外に、信頼できるとされる一般メディア(新聞系のニュースなど)でこれを取り上げているところはないし、新聞でも報道されていないので、みんな冗談だと思っているのだと思います。
 けれど、繰り返しますが、

 今の状況だとほぼ間違いなく、この法律は通ってしまう!

 2月24日に案が発表されて、都民が意見が言えるのは25日まで(つまり1日だけ)。
 議会での質問が許されるのは3月4日(代表質問)・5日(一般質問)だけで、これも数日前には質問を提出していなければならない。(つまり議員でさえ、検討できるのは3日程度)
 で、18日の13:00の付託議案審査がもっとも重要で、今月末には投票、決定、ということになります。

このことはマンガやネットの規制といった表現規制・コンテンツ問題を考える有志の集まりであるコンテンツ文化研究会が主催して同じく3月7日に開催された「緊急集会!どうなる都条例!? -『東京都青少年健全育成条例』改正問題と『児童ポルノ禁止法の慎重な改正論議を求める院内集会』について-」でも話し合われ、その際の様子を報告している以下のサイトによると、「簡単に言うと、とても安心できる状況ではないということのようだ」ということで、かなり危機的な状況であることが判明します。

■2010-03-07
■[規制論]「緊急集会!どうなる都条例!?」に行ってみた・その1


・東京都は国から予算援助を受けていない独立性があり、他県への影響は絶大。
・また昔から、東京は「国に先駆けて新しい法を通す」という傾向が強いらしい。
・実は同様の条例を出したがっている道府県は多い。千葉が筆頭。
・東京が可決すれば、一気に全国に波及するのは間違いない。
・一定規模まで可決道府県が増えれば、国もそれに歩調を合わせて同様の行為を取るであろう。

「青少年健全育成条例」が、児ポ法・思想統制・単純所持規制等の多くの問題を孕んでいる以上、もはやこれは「青少年健全育成」なんて枠では収まらないと思う。むしろ、中国のように「青少年のため」という名目でなんでも国家規制ができるおそれが強いとしか思えない。

さらに以下のサイトでもこの集会の件は箇条書きでまとめられており、重要な点が指摘されています。

■2010/03/08 19:01
コンテンツ文化研究会で3/7に集会がありました。


【以下、重要】
6、なぜ漫画アニメばかり批判されるのか?という現状を理解してもらえるようにしましょう!
 青少年健全育成のためという名目ながら、なぜ漫画アニメばかりが批判を受けるか、
 青少年が当然触れるであろう映画や小説などに同様に批判が向かないのはなぜか、
 メールや手紙に「具体例」を挙げて議員さんに訴えてみてください。
 都知事の「太陽の季節」でもいいですし、
 知名度が高くポルノ性を有し芸術的賞賛をされているものが特に良いです。

このあたりから、Twitter上では急激にこの「非実在青少年」問題が注目を加速度的に集め始め、大騒ぎになっていきます。

非実在青少年 - twitter検索

Togetter - まとめ「東京都青少年保護条例改定案(「非実在青少年」規制)問題について」


翌日の3月9日、青少年育成条例改正案にはネットや携帯電話の規制についても触れているため、以前からマークしていたのか、それとも山ほど記事にしてくれという要望が届いたのか何なのか、なんとネット系ニュースメディア最大手のひとつである「ITmedia」が記事化して掲載することに。

■2010年03月09日 21時57分
漫画・アニメの「非実在青少年」も対象に 東京都の青少年育成条例改正案 (1/2) - ITmedia News


特に秀逸なのが2ページ目のラスト、漫画編集者出身のノンフィクションライター・堀田純司氏に対してコメントを求めており、以下のような内容となっています。

漫画・アニメの「非実在青少年」も対象に 東京都の青少年育成条例改正案 (2/2) - ITmedia News

 世界を白と黒に分け、黒いものを抹消すれば物事がよくなるという思考は非常に危険です。もし青少年によくない影響を与える風潮があるのであれば、それは虚構ではなく、現実そのものでしょう。何の検証も行われないままに不快な虚構を抹殺してしまうのではなく、どんなに回り道であっても、この現実社会そのものをよりよくしていくことが、文化的な国のやり方ではないでしょうか。

 今回の改正案については、オタク文化への無理解というよりも、キャラクター表現へのはっきりとした蔑視を感じます。もともと、漫画の神様、手塚治虫さんは、自分が医学博士号を持つことで、漫画への偏見が収まればと考えていたといいます。永井豪さんは、「ハレンチ学園」(1968年連載開始)のときのバッシングは、身の危険すら感じるほどだったと語っています。

 バブル崩壊後、失われた10年を経てすっかり実業分野に自信を失った日本社会は、キャラクター表現が海外で評価されているのを知り、それを「クールジャパン」などともてはやすようになった。そして、かつてのような偏見、批判は下火になったかのように見えました。しかし、ある特定のイデオロギーに凝り固まった人や、文化に対して視野の狭い人が集うコミュニティでは、かくも古色蒼然とした偏見が、まだあることを痛感させられます。白昼にネッシーが多摩川をゆうゆうと泳いでいるのを見た気分、といいましょうか。

翌日、「非実在青少年」なるものを打ち出してきた「東京都青少年健全育成条例」の改定案について、真っ先に反対を表明する団体が登場します。毎年8月と12月に東京ビッグサイト全館を借りきって行われるコミックマーケット(前回のC77では3日間で51万人が来場)を運営している「コミックマーケット準備会」など多くの同人誌即売会が加入している「全国同人誌即売会連絡会」です。

■2010年3月10日
全国同人誌即売会連絡会 - 「東京都青少年健全育成条例」の改定案について


 もし、この改定案が通った場合、私たちの同人活動にも多大な影響があることが予測されます。そして事態は逼迫しており、この改定を阻止するためには、都議会の議員に私たちの声を直接届ける必要があります。
 下記に東京都の議員の連絡先と、意見を送る際の注意点を書き添えました。連絡会の参加団体、ならびに、この問題に関心のある方はぜひ具体的な行動をお願い致します。


さらに翌日、日経ビジネスオンラインにて、今回の件について非常に秀逸な指摘をするコラムが掲載されます。

■2010年3月11日
「非実在青少年」という概念は、アダルトっぽくないよね。:日経ビジネスオンライン


 児童ポルノ作品が、多くの一般人にとって不快な存在であることは、これは、議論以前の問題で、見ればわかることだ。誰だってあんなものを学校の図書館に置きたいとは思わない。

 が、それを規制するということになると、それはそれで厄介な問題が別枠で浮上する。現在、問題になっているのはそこだ。

 規制に反対する人々は、規制の倫理的根拠に疑義を表明しているのではなくて、むしろ規制がもたらすであろう弊害について懸念している。ゴキブリを駆除するのにナパーム弾を使うのは、過剰反応ではないのか? と。ここのところを見誤ってはならない。

 改定案への意見具申を行った、東京都知事の付属機関である「東京都青少年問題協議会」の専門部会の議事録(こちらから)を読むと、悪質な児童ポルノ作品を資料として机の上に展開しながら、委員の人々が、次第に冷静さを失っていく様子が目に浮かぶ。

 ああいうものを見せられて、それらがネットや携帯電話などを介して小学生でもアクセス可能、という前提の中で話をしていれば、当然、議論は過激化する。

 でも、現実社会でも同じことだが、「到達可能」であることと「あえて踏み込む」ことの間には、相当な距離があるものなのだ。

 リアルな世界でも、小学生が歌舞伎町を訪問することは可能だし、バスの切符(パスモ?)を買えば新宿二丁目で降りることだってできる。が、だからといって、「歌舞伎町を浄化せよ」だとか「二丁目を焼き尽くせ」と言う人はいない。ん? 石原都知事が言ってた、と? では言い直す。よほどアタマがアレな人でない限り、青少年にとって有害だからみたいな理由で現実の町を消そうと考える人間はいない。

 結局、明らかなわいせつ物については、既に裁く法律が整備されている。
 その運用で間に合わないレベルの新たな禁忌を発明するのは、屋上屋であるのみならず、有害な措置になる可能性が高い。

「現行法の及ばない新しいタイプの変態性欲が登場している以上、それを裁く新しい法律を作らないと法のアナができてしまう」

 と、彼らは考えているのかもしれない。
 違うと思う。

「ゴキブリを駆除するのにナパーム弾を使う」「明らかなわいせつ物については、既に裁く法律が整備されている」という2点が実に明瞭でありかつわかりやすい内容となっています。文章も全体的に軽快で読みやすく、ウィットに富んでおり、なおかつ問題の本質を浮き彫りにしています。

要するに手口としてはいつも同じで、何か極端な例をひとつ持ち出してきて「こんな過激なものがある!私の常識で考えるとこれは不快だ!我慢できない!そもそも悪いマンガとか悪いゲームとか悪いアニメがあるのが問題だ!世の中に出回る前に全部事前に検閲してチェックして、良いマンガと良いゲームと良いアニメ以外は駆逐しましょう!それ以外はこの世の中に存在することすら認められない!目の前から消え失せろ!消え失せないなら法律で禁止する!法律は守らなければならないと教えられてきたはずだ!さぁ守れ!法律にするから、お前らなど消えてなくなれ!」という感じです。

ほぼ10年ごとにこうした大きな動きが繰り返される理由として、当時、強烈に表現規制を推進していた人たち(=幼い子を持つ親の立場)は小学生の子どもなどを持っていたものの、そのうち時間の経過とともに子どもが高校生や大学生になっていき、規制する意義が見出せなくなっていって下火になるのだと推測されます。そうして下火になるとまた次の新しい世代が台頭して、「法律で規制だ!不快だ!気に入らない!目の前から今すぐ消え(略)」というサイクルを繰り返しているわけです。

そして、このサイクルが出てくる度に、表現を規制してチェックするための天下り機関を作りたいし、簡単な点数稼ぎもしたい警察庁などが絡んできて表現規制賛成派に何か極端な例やもっともらしい資料を提示し、「規制しないとダメだ!」と焚きつけているわけです。

なぜここで警察庁が出てくるかという点について、前衆議院議員である保坂展人氏のブログによって翌日に明らかになります。

■2010年03月12日
東京都条例で「非実在青少年・創作物規制」の動きが加速 - 保坂展人のどこどこ日記


 実は、青少協の事務局となっているのは、東京都の青少年・治安対策本部の青少年課であり、条例改正案を策定したのも青少年・治安対策本部だ。本部長や青少年課長は警察庁キャリアであり、警視庁を経由して、都庁に籍を置くかたちになっているという。取締機関が行政機関に浸食してきたかっこうだ。そのような部署に、今回の条例改正案のままに、権限を与えるのは危険きわまりない。

 事実関係は不確かだが、関係者によると、児童ポルノ法の改正で国会が動かないから、東京都で先回りしようと警察官僚が動き、また、インターネット規制絡みでは、業界を所管する総務省と、権限拡大を狙う警察庁の暗闘があるのではないかという。であるならば、まさに東京都の条例改正は不純な企みだ。

また、この「非実在青少年」の改正案を作った中心メンバーたちである「東京都青少年問題協議会」がねつ造を行っていたことも以下のようにして発覚、保坂展人氏は激怒しています。

 最近、東京都青少年条例が大変なことになっているというメールの数が増えてきた。「児童ポルノ禁止法」と「表現規制」の問題を掘り下げて取材しているAさんから、『どこどこ日記』あての投稿をいただいた。読んでみると、東京都でこの議論をリードした学者が、私がアグネスチャン参考人に「宮沢りえの写真集は芸術的できれいじゃないか。それでも禁止するのですか」と言って、「15~6の写真、あなたはそんなに見たいんですか」「18歳まで待てないですか」とさとされて言葉を失った……などの捏造をしていたことも知った。
 反論出来ないところで、事実を歪めて言ってもいないことを捏造するなど卑怯千万だが、末尾に議事録を付けておくので、ぜひ照合いただきたい。

この「非実在青少年」という造語を新しく作り出し、表現規制を推進する改正案を作ったのが「東京都青少年問題協議会」、略して「青少協」なわけですが、この協議会を構成するメンバーの発言がかなりひどく、ここに至るまでも山のように問題発言を議事録に残して公開するというとんでもないことを繰り返しており、以下のページが非常に詳しいです。こういった発言をすることに対して何の問題意識もないほど独善的で、自分たちこそが正義であり、自分たちの常識こそが世界の常識でなければならないという潔癖症の方々です。

「規制に反対するヲタクは認知障害者」(東京都青少年問題協議会) - 「反ヲタク国会議員リスト」メモ
まずはバースセンス研究所・所長である大葉ナナコ氏。


酷い漫画の愛好者達はある障害を持っているという認識を主流化していく事は出来ないものか。

何とか法規制しようとしている人達に対し、漫画家達が凄い数の抗議メールを送ってきたのは、どう考えても暴力だ。法規制の根拠を示す必要も無いぐらいの暴力だ。

性同一性障害と同じく持って生まれた嗜好だという事で、子供に対する性暴力漫画を好む人達を放免とするのであれば、彼らは認知障害を起こしているという見方を主流化する必要があるのではないか。

彼らに認知障害があり、暴力的だという事が分かっていれば、証拠が無いのに法規制出来るのかという主張を論破出来る。そうした対策を考えていきたい。

抗議メールを送るのは暴力であり、マンガが好きな人は認知障害予備軍であり、そういうマンガ好きな人たちのいうことは無視して、証拠もないのに法規制できると主張しています。ちなみに引用部分以外もことごとくこの調子です。

次は東京都小学校PTA協議会会長である新谷 珠恵氏。


青少年が見なければ良いとか、漫画だから被害者はいないだろうという話ではない。大人が見る物であっても、それが元で犯罪を犯した人が沢山いる。アニメ文化やロリコン文化が性犯罪を絶対に助長している。自主規制に頼れないならば、規制する仕組みを作っていくべきだ。

雑誌・図書業界の為にも、きちんとした規制をしてあげる事が、悪質な出版社が淘汰されていくという事にもなる。健全な出版社を生かす為に、どんどん悪質な物はペナルティーを科して消していくという仕組みが業界の為にも良い。

一般的に女性蔑視の表現はかなり糾弾されている。実在しない児童が大人に凌辱されたり、性的に扱われている物は、児童の人権や人格を否定しているので糾弾していくのは当然だ。何で実在しない児童だと許されるのか全く理解出来ない。これは女性蔑視と同じだ。

細かい議論が沢山あると思うが、何で反論している人の事まで考えなきゃいけないのか。不愉快で子供に危険が及ぶ物と公共の福祉とのどちらに重きを置くのか、ガンと後者に持っていけば良いと思う。マイノリティに配慮し過ぎた挙句、当たり前の事が否定されて通らないというのはどうしても納得出来ない

他の先進国には子供の人権に配慮した規制がある。日本だけが法整備を進めないというのは凄く不思議。漫画家団体に対して説明や調査データを示す必要も無いくらい規制は当たり前の事だ。正論でガンと言ってやれば良い。

上記はトンデモ発言集やねつ造ではなく、本気でこういうことを平気で言う人たちが集まって、今回の「非実在青少年」を作り出したわけです。「アニメ文化が性犯罪を絶対に助長」というのは完全にこの人の歪んだ考えの発露に過ぎませんし、「マイノリティに配慮し過ぎた挙句、当たり前の事が否定されて通らない」「説明や調査データを示す必要も無いくらい規制は当たり前の事」と言っている場合の「当たり前」というのはこの人自身の当たり前であって、この人は自分の価値観を自分以外の全員に押しつけたいわけです。挙げ句の果てに、「何で反論している人の事まで考えなきゃいけないのか」とまで発言、ここまで来ると、どう見ても危険思想の一種にしか見えないのですが、啓蒙主義を代表するフランスの哲学者「ヴォルテール」の名言、「私は君の意見に賛成しない。しかし、君がそれを言う権利は、命にかけても守ろう」にならって、これもまたひとつの客観性を欠いた主観的意見であると認識しておきましょう。

次は目白大学 人間学部 心理カウンセリング学科 教授である内山絢子氏の場合。


実在しない児童への性描写は子供の人権が考慮されていない。性に対する理解度が著しく欠けている幼い子供を性対象として考える事自体が非常に配慮を欠いたものだ。実在しない児童を性対象とした漫画であっても、それは実在する児童がそうなり得る可能性があるので描いてはいけない

こういった「ヘイトスピーチ」、つまり「人種、民族、国籍、宗教・思想、性別、性的指向、障害、職業、社会的地位・経済レベル、外見などを理由に貶めたり暴力や差別的行為を煽動したりするような言動」を行う人を選んでいる時点で、この条例案を条例にしてはならないということがわかります。「自分が好まないから」というだけの理由でそれを社会全体共通のルールにしてはならないわけです。

もうここまで書けば段々とわかってくるとは思いますが、「自分の価値観だけが正しい」と思い込んでいるただの差別主義者が、自分のしていることを正当化するため、「虎の威を借る狐」のように、法律や条令を制定して後ろ盾を得て、日本人の美徳である「決まりには従う」という点を悪用しようとしている、そういうことなのです。そもそも、「ルールとして決めるからそれに従え」というのは、そのルールを守ることで大部分の人間に利益がある場合だけに限られます。ルール、法律、条例というのは本来そういうものでなければならず、どこかの誰かの感情的な満足感のために使われるものではないですし、ましてや自分自身の考えこそが当たり前であるなどと言うような、価値観の相違を一切認めない過激な思想を撒き散らそうとしているファシズム的な人たちが担当してはいけないわけです。大部分の人間に悪影響を及ぼす可能性があるルールを決めようとすること自体が犯罪的であり、許されざることです。

話を戻して3月12日、ついに共同通信が今回の件を報じます。

■2010/03/12 17:57
野放しの漫画児童ポルノを規制へ 都条例改正案、反対論も - 47NEWS(よんななニュース)


都によると、「野放し状態」となっている漫画やアニメの児童ポルノ的な描写を規制するのが目的で、全国でも初めての試みという。

藤本由香里・明治大准教授は「18歳未満とか、何が健全なのかの判断は、いくらでも恣意的に解釈できる」と危惧している。

さらにこのこの条例改正案に対して、東京都地域婦人団体連盟(東京地婦連)、東京大学大学院 教授 長谷部恭男氏、ネット教育アナリスト尾花紀子氏、モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)、ECネットワーク、電気通信事業者協会(TCA)、テレコムサービス協会(テレサ協)、日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)、モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)、CANVASが反対を表明します。

■2010/3/12 18:51
東京都青少年健全育成条例に反対、民間団体と有識者が意見表明 -INTERNET Watch


なお、反対に意見の表明に伴い、最低限最低限守られるべき事項があるとして、4つの項目が挙げられている。

1. 言論および表現活動に対し、都をはじめとする公権力による恣意的な関与がなされない条例とすべきこと
2. 多様な目的や機能をもった民間の組織や活動が認められる条例とすべきこと
3. 利用者および事業者が多様な基準から選択できる権利が保障される条例とすべきこと
4. 憲法や青少年インターネット環境整備法等の法律の範囲内での条例改正とすべきこと

 条例改正案の反対メンバーは、民間組織と政府、地方自治体、保護者、学校、地域との連携が必要不可欠であるとし、条例などの規制が一律に強化される場合、民間の取り組みを萎縮させ、バランスを欠いたものになるとの見解を示している。また、条例改正案について、民間の自主的な取り組みを最大限尊重し、条例改正の必要性有無も考慮した上で、慎重な審議を求めている。

■2010年03月12日 19時32分
都が「青少年ケータイ」推奨・フィルタリング強化 青少年育成条例改正案 (1/2) - ITmedia +D モバイル


 東京都地婦連はネットとの縁は薄いが、「第2次世界大戦に向かう空気を知っている高齢の会員も多い。表現の自由や通信の秘密は何より守りたいという考え」(地婦連事務局次長の長田三紀さん)で、意見書に賛同したという。

そして翌週明けの月曜日、3月15日に「非実在青少年規制反対集会」が開かれます。

■2010年03月15日
痛いニュース(ノ∀`):都の2次元児童ポルノ規制に反対する作家リストがすごすぎると話題に

■2010年03月15日 22時30分
「文化が滅びる」――都条例「非実在青少年」にちばてつやさん、永井豪さんら危機感 - ITmedia News


 改正案に反対する漫画家として、あだち充さんや藤子不二雄Aさん、高橋留美子さん、萩尾望都さん、安彦良和さんなど約60人のリストも配られたほか、講談社や集英社、小学館などコミック発行10社も反対を表明している。

 藤本さんは「都は、過激な性表現のある作品のみが対象と言っているようだが、条文を照らすとそれは事実ではない」と指摘。現行条例でも不健全図書の規定がある中、改正案では「非実在青少年」に関する規定を新設しており、青少年の性を肯定的に描いたさまざまな作品が対象となり得ると懸念する。

 宮台さんは、「青少年の性行為を描いたコンテンツが青少年に悪影響を与えるという素朴な悪影響論は学問的には否定されている」とした上で、「誰と見るかなど、コンテンツの受容文脈をコントロールすることが最善」と指摘。「最善の策を取らずにいきなり次善の表現規制に飛び込むのは怠慢」と批判した。

 条例では18歳未満を青少年と規定しているが、日本では女性は16歳で結婚でき、「高校3年生の半分近くが性体験をしている」(宮台さん)という状況で、高校生の性行為を肯定的に描写した作品が対象になれば表現への萎縮効果は高い。「普通のことをしている人に対して、『お前達は悪いことをやっている』というメッセージを出すことになり、副作用は大きい」(宮台さん)

 「規制側には、良い漫画と悪い漫画を区別できるという暗黙の前提があるようだが……」――森川さんはその考え方自体が間違っていると指摘。青少年の性行為を描いた漫画や同人誌を描いた漫画家が、「文化庁メディア芸術祭」で受賞するケースも多いなど、多様な表現を許容する環境が漫画家のすそ野を広げていると紹介し、「改正案が通った場合の副作用がほとんど検討されていない」と危惧した。

さらに詳細な発言内容は以下から参照することができます。割とわかりやすい理由が多いです。

■2010年03月15日17:54
コデラノブログ4 : 非実在青少年規制反対集会速報


・漫画家 おがわさとし氏

青少年はそもそも何見ても性的に刺激されるだろう。かつて自分は、英語の教科書に登場するルーシーとベンで不健全な妄想をしたぐらいである。中高生でありとあらゆるものを、妄想の素材とする。人間の妄想の自由、それを共有することの自由を犯されたくない。それを法で罰していくのは間違っている。

かつて小学生の自分は、永井先生のハレンチ学園などで情操教育された。そのようなことは、今の子供たちにもあっていいはずだ。

そのほかにもさまざまな有名漫画家が発言を行っているわけですが、明治大学の森川 嘉一郎准教授の発言内容は一読の価値有りです。

・明治大学 森川 嘉一郎准教授

オタク、腐女子の方は、それを隠すのが仁義であり流儀である。一般人のふりをするのがいいという習慣みたいなものがある。それはよくわかるが、しかるべき時には説明する必要がある。説明の努力を怠ってきたことがこのことを引き起こしたかも知れない。

国土交通省が18年にマンガアニメを国の輸出産業にするとしたが、結局6700万円をシンクタンクになげて報告書ができておわった。

どうもマンガに詳しくない人たちは、ポケモンとかを秋葉にどう生かすのかという問題であると考えているようだ。しかしアキバは同人誌やエロで盛り上がっている。良いマンガ、悪いマンガを分けることができるようなイメージがあり、悪いマンガには悪い連中が集まるのだという発想がある。

悪質な連中を排除すれば、輸出にいいのではないかと言われる。しかしそれでは、本質となる競争力をそぐ結果となる。競争力とは、基盤となっている競技人口の多さである。ピラミッドは裾野が広いほど頂点が高い。豊かさを支えているのである。

コミケが年に2回行なわれる。3日間で55万人が訪れる。オタクは男性と思われているが、女性が7割。独特の表現がなされている。アマチュアがみようみまねでマンガを書き始めて同好の人に配布する。基本はエロパロ。

既存のマンガの主人公は、設定上18歳未満であることが多い。あくまでも推定だが、同人誌発行点数の3割、部数の5割が18歳未満のエロパロであろう。

具体的にはどういうものなのか。綾波レイは14歳。文化庁メディア芸術祭を受賞した作家もエロパロ出身。受賞した後に綾波レイを使ったエロパロを出している。プロも同人を書くことも多いのだ。

この作家は器用な人で、フィギュアの原型も作っている。著作権侵害で取り締まるべきという人も居るが、このフィギュアはエバンゲリオンの公式ストアで販売されている。相互依存の関係があるわけだ。これはすでに成立しているので、わざわざ行政が介入する必要はない。

エロの作品を作った作家が不健全であるなどのレッテルを貼り、スポンサーに説明できないようなことになれば、相互依存の関係を破壊する可能性がある。

エロマンガというと、昔の人はエロ劇画を発想するようだ。しかし少女マンガの絵柄をエロにするというのを生み出した人が、メディア大賞などを受賞している。女性向けマンガの潮流を変えた作家が、エロマンガを媒体として商業デビューをしていくという現実もある。

エロマンガを不健全だとして市場から追い出すと、ピラミッド構造が崩壊する。

上記内容についてはより具体的な名前と詳細な内容を挙げた記事が以下のページに掲載されています。

「非実在青少年問題」イベントレポート! 規制が孕む問題とは? - 芸能 - 最新ニュース - 楽天woman

要するに、ごくごく当たり前のことですが、何事にもプラスとマイナスの面があり、マイナスの面だけを削除してプラスの面だけ残すなどというのは不可能なのに、自分が気に食わない・気に入らないものの中から、わざわざ最もえげつなくて反感を買うだろうというものを取り出してきてみんなに見せて、マンガ・ゲーム・アニメを見る人=犯罪者予備軍として吊し上げて錦の御旗を掲げる、これが今までのやり口なわけですが、こんな幼稚な価値観はもう通用しないことを示すべき時に来ている、と考えるべきでしょう。

また、以下の質疑応答もかなり参考になります。

Q ビジュアルだけで小説が入っていない。東京都からは活字文化が入らない論理的説明はあったか?
A この範囲に限定するというのは、元々合理性がない。非実在に関してはビジュアル。小説は読まないといけないので、手間がかかるので網がかかっていないと、ただそれだけではないか。挿絵は問題になるだろう。
すでに8条1号には図書映画等とあるので、ビジュアルに限らない。小説もすでに入っている。それにプラスして18歳未満の性を肯定的に描くことが追加された。今回特にビジュアルが悪いということになる。たとえば源氏物語などは、不健全図書指定になりうる。

Q 活字関係者は騒ぐべきではないとするが、どう思うか。
A 表現の自由は弱いところから浸食されていく。これが規制できるならこれもいいだろうと広がっていく。そんなことを言うのは、歴史を知らない人なのだ。規制派はこれで安心とは絶対に言わない。

Q アダルトゲームは何年も前から自主規制しているが。
A 自主規制努力してもだめだということになる。ただ自主規制も2種類ある。唯々諾々と言われるがままにする規制と、自分たちで未来を考えた規制。唯々諾々とした自主規制をしていると、どんどんつけこまれていく。受け手側も漫然と好きだとか嫌だとかじゃしょうがない。政治などのリテラシーの努力はしてほしい。

無理無茶不条理で道理の通らない条例を無理矢理制定させたとしても、「アパルトヘイト(白人を優遇し、黒人を劣悪な環境に押し込めて隔離するという南アフリカ共和国の人種差別政策のことで、ほかにも人種の違う男女が結婚することを禁止したり、異なる人種の異性が恋愛関係になることを罰し、国連からは「人類に対する犯罪」と言われた)」と同じ道をたどることは明白です。

「非実在青少年」という新造語を作り出してまで、「教育のため」とか「子供のため」とか「安全・健全な社会のため」に規制するというのは、「教育のため」でもなく「子供のため」でもなく「安全・健全な社会のため」でもなく、ただ単に自分が嫌いで認められないものを拒絶し、それを他人にも強要しているだけなのです。むしろ、「表現の自由を守る」ことこそが社会や青少年の健全な育成を守ることになるわけであり、もし表現の自由がなければ、こうやってネット上に発信することも、書くことも、何もできなくなるでしょう。

規制したい人たちは一体、自分たちの理想とする健全化の先に、どのような世界を夢見ているのでしょうか?

なお、この会見の様子はあちこちで書かれていますが、以下がわかりやすいです。
「表現規制の闇」の扉の前に立ちはだかる人々 - 保坂展人のどこどこ日記


 都庁の一角に都議会議事堂がある。中庭を歩いていくと、何やら2階に行列が見える。なんと、「マンガ・アニメの世界で『非実在青少年』が登場する性表現を含む作品を対象」とする「青少年健全育成条例」が都議会総務委員会で採決寸前だとして緊急に開かれた集会に集まってきた人々の姿だった。午後2時過ぎから東京都議会2階の会議室で「2010年3月15日東京都による青少年健全育成条例改正案と『非実在青少年』規制を考える」(主催・青少年健全育成条例を考える会 代表・藤本由香里)が開催された。

 会場の椅子はたちまち足りなくなり、立ち見で参加する人がびっしりと詰めかけた。進行役の山口貴士弁護士から「昨年の総選挙で落選したが、この問題で頑張ってくれた保坂さんが会場に来ているので」と突然の紹介があり、何の準備もないままに挨拶。「法律や条例がまったく知られずに議論され、一般の人たちに知られるのは、採決の直前ということは、これまであった。大勢の人たちが今日集まり、表現の現場にいる先生方も声をあげたことで、社会的に問題提起することが力になる。特に、二次元創作物(マンガ・アニメ)にかかわる規制については、国会での「児童ポルノ禁止法」の論議でも「対象外」としている事柄。国会の議論は棚上げして東京都が条例で突っ走るのはおかしい」と発言した。

さらに、なぜこれほどの大問題が新聞やテレビで報道されないのかという理由の一端が垣間見える場面も。

都・マンガ規制の問題点を読売新聞が身を呈して実証 - livedoor ニュース


会見後のイベントで、山口弁護士はこう語った。

「先ほどの会見で読売の記者が、永井先生の『ハレンチ学園』は今回の改正でも大丈夫ですよ、と言うんですね(会場、笑)。こういう発言をできてしまうということが、改正案の条文がいかに恣意的に決定できてしまうか、ということでもある。正直、この条文通りだと『ハレンチ学園』も何となく当てはなりそうな気がすると、法律家として自信を持って言えちゃうくらいなんですけど(笑)。その点について永井先生、どう思われますか(会場、爆笑と拍手)」

読売新聞の記事は、<都青少年・治安対策本部は「すべての性描写が規制されるわけでなく、大人への流通も制限されない」として、漫画家の創作活動には影響しないと反論している。>とする都側の言い分を掲載した。しかし、都の言い分に対する山口弁護士の会見コメントは一文字も紹介していない。【了】

「恣意的」というのが一体どういうコトなのかというのを期せずして自分で実証してしまったわけですが、インターネットがなければこのような条例は誰も知らないうちにこっそりと制定され、それからあとで大々的に宣伝されて「あれも禁止!これも禁止!気に入らないものは全部禁止!」となっていただろうと思うと、インターネットというメディアの出現がどれだけものすごいことなのかというのがよくわかります。10年前や20年前、50年前は権力の側に立っている人間たちの暴走を止める手段が一切無く、めちゃくちゃなことを平然と行っていたわけですね。インターネットの存在価値というモノがあるのだとすれば、まさに今回のような件を白日の下にさらしていった、こういうことに尽きるはずです。もしインターネットが規制されていれば、こういった真実は闇の中であり、すべてがわかる頃にはもう手遅れという状態になっていたに違いないためです。

インターネットの価値はまさしく、こういったむちゃくちゃなことを破壊することにあり、インターネットは破壊のメディアだとよく言われますが、破壊されているのはこういった「非実在青少年」のような「理不尽」そのものです。今まではこういった理不尽なこと、自分の価値観こそが正しく、その価値観からはみ出した人間を犯罪人扱いするという低レベルな考え方がまかり通っていたわけですが、これからはもう通用しません。なぜなら、理不尽ではない「本当のこと」がインターネットに出てくるからに他なりません。玉石混淆こそがインターネットの強みであり、その中には確かに「本当のこと」も含まれている、これが強い原因になっていきます。理不尽がまかり通る今までの世界では、悪貨が良貨を駆逐してしまいますが、本当のことが最後に勝利する世界をこれから作り出すのがインターネットの真の価値であり、この戦いはちょうどこれから始まり、今から延々と続いていくことになるのだ、という認識でほぼ間違いないはずです。

世界史を勉強した人であればわかるはずですが、現在までの世界史の中で、最終的に真実が暴露されなかったものはどこにもありません。最後の最後には真実が明らかになります。どんなに隠されようと、嘘をつかれようと、理不尽な力によって封じ込めようとも、「本当のこと」は実際に起きたことであるがゆえに強いのです。

話を戻して、さらに同日、Google・Microsoft・楽天・モバゲーのDeNA・ゴルフダイジェストオンラインが青少年条例改正案に対して反対を表明します。

■2010年3月15日
ネットビジネスイノベーション研究コンソーシアム::「東京都青少年の健全な育成に関する条例」改正に関する意見


■2010年3月15日
【楽天株式会社】会社情報 - 東京都青少年健全育成条例改正案に対する当社見解


ここからさらに反対を表明する企業や団体などが増えていきます。翌日にはマンガ学部と国際マンガ研究センターを保有する京都精華大学が意見書を発表します。

■2010年03月16日
京都精華大学:インフォメーション:大学からのお知らせ:[報道発表]東京都青少年健全育成条例改正案に関する意見書について


1)「非実在青少年」という今回の改正案が提出する新概念は、その対象が不明瞭であり、恣意的に解釈される恐れがある。また、「非実在青少年」の性的描写が、即「不健全」であるとみなす根拠が薄弱であり、多くの作品がその内容にかかわらず「不健全図書」のレッテルを貼られる事態になりかねない。

2)今回の改正案に至るプロセスを東京都青少年問題協議会の議事録などから判断する限り、当事者である表現者はもとより、出版関係者や専門家など、周囲の意見を十分に考慮したものであるとはみなしがたい。問題の本質は憲法で保障されている表現の自由に関わるものであり、十分なエビデンスと議論がないまま、このような規制が行われることには深い危惧を抱かざるをえない。

3)今回の改正案は東京都条例の問題ではあるが、日本の出版社は東京に集中しており、マンガ、アニメに関するイベント等も多く東京で行われている。したがって、この改正案は東京都だけの問題ではなく、国内全体の表現に影響を及ぼす問題である。拙速な条例化によって日本の表現文化に禍根を残すべきではない。

さらにその翌日の3月17日(水)、続々と反対声明が発表されます。

■2010年3月17日 19:35
コミックナタリー - 「非実在青少年」にマンガ業界からリアクション続々


本日3月17日、秋田書店・角川書店・講談社・集英社・小学館・少年画報社・新潮社・白泉社・双葉社・リイド社の10社によって構成されるコミック10社会は、現在都議会で審議されている「東京都青少年の健全な育成に関する条例」改正案に対し、反対意見書を提出することを決定した。

コミック10社会によれば、今回の条例が表現の自由を損ねる恐れがあるため反対に至ったという。またこれに賛同したマンガ作家有志、すなわちマンガ家およびマンガ原作者900名も署名を寄せた。今後も条例に動きがあれば、コミック10社会としてアクションを起こすとのこと。

一方、太田出版は独自に反対署名を募り、こちらにもマンガ家や出版関係者917名が賛同。3月16日に太田出版代表取締役社長・岡聡が、全都議会議員 127名に宛て、手紙を添えて反対署名を送った。賛同者のリストは太田出版の公式サイトに掲載されている。

また日本雑誌協会、日本書籍出版協会、日本出版取次協会、日本書店商業組合連合会によって構成される出版倫理協議会は、「東京都青少年条例改正案に対する緊急反対表明」と題した声明文を発表している。

これは一体どういうコトかという意味が朝日新聞に掲載されています。

■2010年3月17日23時39分
asahi.com(朝日新聞社):都の漫画・アニメ規制案 出版4団体が緊急反対表明 - 文化


 出版倫理協議会は、日本雑誌協会、日本書籍出版協会、日本出版取次協会、日本書店商業組合連合会で構成されている。出版社から流通企業、書店まで、業界全体にかかわる団体が名を連ねており、日本雑誌協会は「出版業界全体が反対ということ」と話す。

つまり、出版を生業にしている業界はすべてこの「非実在青少年」に反対する、ということです。さらにこの日の動きは続き、ついに図書館も見解を発表し、「削除されるべき」とかなり強い反対の意志を表明しています。

■2010/03/17
社団法人日本図書館協会 - 「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」について


  条例案には、「非実在青少年」として、コミックなど創作物も不健全図書として規制できるとしています(第7条の2ほか)。これは先に引用した児童ポルノ禁止法の保護法益とは無縁な規制であり、現行の児童ポルノ禁止法が過剰な規制を抑制するために採用していない規制であって、条例案から削除されるべき規定です。

六.条例案は、「青少年の性に関する健全な判断能力の形成を著しく阻害するおそれ」(第7条の2ほか)を不健全図書の指定基準に新設しています。
  子どもの性に対する判断能力の形成は、親が一義的に責任をもつものであって、行政や警察ではありません。「子どもの権利条約」第18条の1「締約国は、児童の養育及び発達について父母が共同の責任を有するという原則についての認識を確保するために最善の努力を払う。父母又は場合により法定保護者は、児童の養育及び発達についての第一義的な責任を有する。」を尊重し、当該基準は削除されるべきです。

これだけにとどまらず、なんとアニメ業界からも反対意見が登場します。これは極めて珍しいことです。珍しいというか、前代未聞のレベルです。

■2010/03/17
日本アニメーター・演出協会(JAniCA) - 東京都の青少年健全育成条例改正案に対する意見


確かに条例案を見てみると、「声」も規制対象に入っており、18歳未満にしか聞こえない声優は全滅ということになりかねません。

また、東京都知事である石原慎太郎も所属している「日本ペンクラブ」までもが、反対を表明しています。

■2010年3月18日
日本ペンクラブ声明 - 東京都青少年条例改定による表現規制強化に反対する


 現在、東京都議会で審議されている青少年健全育成条例の改定案に対し、出版界の主要な団体やコミック作家などが強い反対の意を表明している。表現に対する規制強化の意味を持つ今回の条例改定については、日本ペンクラブも危惧を表明せざるをえない。青少年条例による規制は、直接的には青少年への販売や閲覧を制限するものとされるが、それが表現全体に影響を及ぼすことは明らかである。
 そもそも性表現といった個々人によって受け止め方が異なる、デリケートな事柄については、国家や行政による法的規制や取り締まりを極力排し、表現者や出版社等の自律による自主的規制などによって対処するのが好ましいことは言うまでもない。
 今回の条例改定については、今日に至るまで、十分な市民的議論に供せられることもなく、表現に関わる規制強化という重大さに比して拙速に事が運ばれている印象は拭えない。また、「非実在青少年」といった恣意的な判断の余地がある造語によって、表現行為が規制されることが好ましくないことも言うまでもない。さらに、改定案の中に含まれるインターネットの規制についても、公権力がフィルタリング基準に関与することにつき、活発な議論を通した上での合理的なコンセンサスが得られているとは、到底言えない。
 表現に関する規制は、歴史的に見ても、恣意的な運用や拡大解釈の危険性が排除できず、表現の自由と、ひいては民主主義の根幹に関わる重大な弊害をもたらすおそれがある。なぜいま表現規制を強化しなければならないのか、納得のいく説明もないままの今回の条例改定について、日本ペンクラブは強く反対するとともに、同様な改定を予定している各地方自治体や政党に対し、開かれた場において冷静かつ慎重で十分な検討をすることを強く求める。

こういった動きに押されてなのか沈静化を狙ったのか、3月18日(木)、東京都が「非実在青少年」に関する条例案の解釈などの見解をネット上で発表しました。

【PDFファイル】東京都青少年健全育成条例改正案について

徹頭徹尾言い訳に終始しており、読むに耐えない嘘八百のないようにしか読めず、一体どこの誰が書いたのかはわかりませんが、はっきり言って「支離滅裂」です。例えば、「非実在青少年」についての説明は以下のような感じです。

この規定は、作品の設定として、年齢や学年、制服(服装)、ランドセル(所持品)、通学先の描写(背景)などについて、その明示的かつ客観的な①表示又は②音声による描写(台詞、ナレーション)という裏づけにより、明らかに18歳未満と認められるものに限定するための規定であり、表現の自由に配慮して、最大限に限定的に定めたもの。

このような明示的かつ客観的な裏付けがないにも関わらず、単に「幼く見える」「声が幼い」といった主観的な理由で対象とすることはできず、恣意的な運用は不可能。

(例えば、視覚的には幼児に見える描写であっても、「18歳以上である」等の設定となっているものは該当しない。)

なお、青少年への閲覧制限を目的とする不健全図書指定制度や自主規制制度において、著作者が規制されることはなく、創作行為や出版、成人への流通は自由であり、「検閲、弾圧につながる」「漫画・アニメ業界の衰退を招く」との批判は当たらない。

解釈は時代背景や人間によっていくらでも変わります。だからこそ、好きなように解釈を変えられないように、明文化していくわけです。「解釈の説明」と言っていますが、要するにただの「口約束」であり、この解釈を外れた解釈をしたところで、東京都のこのめちゃくちゃな改正案に関わった誰かが刑務所にぶち込まれることもなければ、責任を取らされることもありません。つまり、無責任にいくらでも好き放題言えるがゆえに、適当なことを言って誤魔化しているわけです。「上記内容をなぜ条文にはっきりと明記しないのか?」というのがすべての答えです。好きなように解釈できる余地をたくさん残すことによって、好き放題に条例を運用していきたいという意図が透けて見えます。間違いなく権力の濫用であり、PSE問題銃刀法改正と同じく、施行する前に言っていたことと実際に行動することとでは大幅に内容が違うなどというのは彼らにとっては日常茶飯事であり、無責任極まりない状態です。

世界は広く複雑であり、「普通の人」などどこにもいない。なので、人が恣意的に判断できる領域は可能な限り減らさなくてはならない。それが法律であり、条例も同じものなのです。

これだけ猛烈な規制反対運動が巻き起こっているにもかかわらず、なぜこの「非実在青少年」という造語を新しく作り出し、表現規制を推進する改正案を作った「東京都青少年問題協議会」が平気な顔でいられるのか?その理由として、規制賛成派には警察庁などがバックに付いているため政治的に圧倒的に強く、ありとあらゆる拡大解釈によっていろいろなものを規制し、戦前の日本に逆戻りするような状況になった方がよいと判断しているためです。このことはあちこちで指摘されていますが、下記ページがわかりやすいです。

「非実在青少年」規制をゴリ押ししている警察官僚の正体 - 「反ヲタク国会議員リスト」メモ

【継続審議】東京都青少年の健全な育成に関する条例の改正案【戦いは終わっていない】: 弁護士山口貴士大いに語る


 前回の東京都青少年健全育成条例の「改定」は2004年のことでした。実は、2004年の条例改定後、青少年条例の担当部局が従来の生活文化局から、新設された青少年・治安対策本部に移管されています。青少年問題の取り組みが福祉的対応から取締りを基本にした治安問題として扱われるようになりました。そうです、不健全図書制度は、このときに、青少年への福祉的な配慮を前提とした制度から、「治安を乱すものへの取締まり」という観点から行われるようになったのです。青少年・治安対策本部および本部内の青少年課には、警察庁から出向した職員が存在します。彼らが、今回の「改正」案作成の原動力となっています。

これは一体どういうコトかというと、「全ての表現に対して事前検閲させろ」という事であり、膨大な表現を検閲するため、警察OBによる天下り団体を設置させろという方向に向かって法案が進んでいる、というわけです。わかりやすい事例で言うと、アダルトビデオやパチンコなどがそうなっています。自分たちの利益のために、その他大勢の権利も意向も何もかも無視するといったことを平気で行おうとしているわけです。これは陰謀論などではなく、現実に起きていることであり、こういった警察の実態の一環については別個のインタビュー記事をGIGAZINEでも掲載予定です。

そもそも、「現実でやるべきではない表現」を行うのが表現活動の根本であり、どんなに表現を規制しようとしても、人間が人間である以上、削除することはできません。また、コレこそ本当の「当たり前」ですが、人間はセックスしないと滅びます。人間の根本的な3代欲求は食欲・睡眠欲・性欲の3つであり、それぞれが脅かされる時に人は危機感を覚えるようにできており、食べなければ死ぬ、眠らなければ死ぬ、そしてセックスして子供を作らないと人間自体が滅びる、というわけです。人間自体の種の存続と言ってもいいかもしれませんが、今回の「非実在青少年」のような改正案を厚顔無恥にも提出し、性的なことを否定する異常なほど潔癖症なごく一部の価値観を持つ人たちは一体自分の子どもにどうやって性教育しているのでしょうか?

また、人が「生きること」と「死ぬこと」を描くことができたからこそ日本のコンテンツは発展してきており、「生きること」とは性的なことであり、「死ぬこと」が暴力表現や残虐表現になっています。

どれもこれも実際の行為は既に刑事規制の対象となっており、さらに表現を規制することにはもう何も意味もありません。ただの好き嫌いであり、生理的嫌悪感の問題です。自分が認められないから、ほかの人にも認めて欲しくないというのが根本にあり、個人的嫌悪を公共の利益にすり替えて考えるのは害悪でしかないのです。最も極端な例を出してきて「ほらほら、こんなものがあります!ほかのものも読んだことはありませんがきっとこんな感じです!許せないですよね!」と個人的な潔癖症を正当化するために同意を求めているだけです。

今回の都条例で一番の問題点は、都行政が独自に「表現の良し悪しを決めることができる」というところであり、その背景として、短絡的に「規制反対」=「変態扱いのレッテル貼り」という脅迫を行って、自分たちの価値観として認められないものを排斥したいという強い意識が根底にあるはずです。そのため、残念ながら、いわゆるゾーニングや自主規制は根本的な解決にはならないのです。極端な例ですが、直近のネット上の事例で言えば、Amazonでは18禁の商品が販売されており、その商品ページにアクセスするためには確認ボタンのページに誘導されることになっており、いわば「向こう側」に置くことによってゾーニングしているわけです。しかし、「Togetter - まとめ「「非実在青少年」問題に関する真夜中の激論」」を読めばわかるように、そもそもその存在自体を許せない人がいるというのもまた事実です。

GIGAZINE自体の過去に掲載した記事で考えると、「豚の丸焼き」で考えれば非常にわかりやすいはずです。豚の丸焼きが気持ち悪いか、それともおいしそうなのかというのは、「受け取る側の問題」であって、決して豚の丸焼きそのもの自体の問題ではありません。規制推進派の危惧することも、規制反対派の危惧することも、極論すれば的外れなのです。

規制に賛成する人は基本的に「見たくない、自分たちから遠ざけて欲しい」と願っているだけであり、それが自分個人の趣味嗜好の問題であることが認識できず、「公的な問題」だと思い込んで信じ込んでいるわけです。はっきり言うと、カルト宗教に近い感じです。子どもを隠れ蓑にして自分の趣味嗜好をごり押ししているだけであり、こういった人たちを啓蒙していかないと、永遠に戦い続けなくてはいけません。規制賛成・規制推進派は廃案になってもまた出し直せば済むだけなので、何度でも法案を出したり引っ込めたりが可能であるのに対し、規制反対派は一度でも案が通ればその時点で「終了」「ジ・エンド」です。規制の先に待つのはこういった形のワンピースです。こういった状況をすべて考慮すると、単純なゾーニングや自主規制では解決できない、つまり「規制賛成・規制推進」といったグループを何とかしない限り、どうにもならないわけですし、逆に「規制賛成・規制推進」グループについても、規制を押し進めても彼らの不安は解消しません。なぜなら、今回は出てきませんでしたが、最終的に規制を押し進めて行き着く先は「内心の自由」の規制だからです。世界史を見ればわかりますが、人間は権力を握り、そして集団で暴走し始めるとあっという間に内心の自由を侵害したくなる獣のようです。

では、どうすればいいのでしょうか?

解決策は「教育」しかありません。性的なことについて、暴力について、政治について、法律について、ネットについて、要するに「この世界の表と裏」「世界の本当の姿」について、もっと基本的なことをまともに学校の義務教育で教えるべきであり、そうすることによって、マンガ・ゲーム・アニメはただの絵、つまり架空の創作物であって、現実とは違うのだという認識が育つことになるわけです。根本的な解決は時間がかかるし面倒、だから手っ取り早く目の前から消えて無くなれという個人的願望に属するものを公的なルールである「条例」として現実化させようというのは誰が考えてもおかしいですし、権力の濫用です。

いい加減、21世紀になったのですから、こんな不毛な「非実在青少年」などではなく、公共の福祉のためにも、もっと時間をかけて「教育」という観点から根本的な解決を目指したいものです。

・オマケ(ノーカット・オールカラー完全版をネット上にて公開中)
まんが・条例のできるまで(1992年作品): たけくまメモ

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in コラム, Posted by darkhorse