児童ポルノ画像がダウンロードできない偽リンクをクリックしただけで逮捕、有罪に


日本でも児童ポルノの単純所持を違法化しようという動きがありますが、既に違法化されているアメリカでとんでもないことが起きていることがわかりました。FBIが児童ポルノ画像へのリンクに見せかけた偽のリンク(児童ポルノはダウンロードできない)を掲示板に投稿、それをクリックした者を「児童ポルノをダウンロードしようとした」ということで逮捕、しかも有罪になっているとのこと。

つまり、児童ポルノ画像を1枚もダウンロードしていなくても、警察に逮捕されて家宅捜索をされ、その際に1枚でも「児童ポルノ」と思われる画像などが見つかれば「アウト」ということです。単純所持を違法化すると、誰でも犯罪者にすることができるというわけです。

詳細は以下から。
■リンクをクリックしただけで有罪になった事件の概要


FBI posts fake hyperlinks to snare child porn suspects | The Iconoclast - politics, law, and technology - CNET News.com

今回のおとり捜査を指揮したのはFBI特別捜査官ウェード・リューデルス。彼は2006年10月、児童ポルノを交換していると思われる掲示板に「偽のリンク」を貼りまくり、このリンクをクリックした者はきっと児童ポルノを交換するような連中に違いないと信じてこの捜査を行ったとのこと。捜査はペンシルバニア、ニューヨーク、ネバダの各州で行われ、投稿されたリンクは違法なムービーをダウンロードできることを示す文字列で、クリックすると政府の秘密のサーバに訪問したことが記録され、その記録を元にプロバイダなどへ照会をかけて相手の自宅住所などを特定、逮捕したり家宅捜索を行ったりしたようです。

同様の手法を使った捜査方法として、「児童ポルノをダウンロードできる」という広告が書かれたスパムメールを何百万人というアメリカ国民に送信、スパムメール内のリンクをクリックした人を捜査することも可能だそうです。

なお、この捜査に使用されたのは「unlawfulimages.com」というドメインで、このサイトへリンクをクリックしてやってきた訪問者を起訴しているとのこと。どうやら、掲示板などへの投稿の場合はRefererから判断し、スパムメール内でのリンクの場合は引数などを仕込んで判断していたようです。

■実際に逮捕されて有罪になった例


例えば、あるテンプル大学の博士課程にある学生はこのリンクをクリック後、2007年2月に自宅へFBIが踏み込んできました。連邦捜査官は午前7時頃に彼の家を訪ねてきて、自動車について話をしたいと嘘を言ってドアをノックして開けさせ、開けた途端に彼をドアの外側へ押し倒して手錠をかけたとのこと。彼は児童ポルノを「ダウンロードしようとした」という罪で懲役10年に問われ、既に有罪が2007年11月に確定、今年の4月22日に実際に何年刑務所に入れられるかが決まるそうで、おそらく3年から4年は刑務所に入れられるとのこと。

なお、今回有罪判決が下されたこの学生は無線LANを使用しており、近所の誰でも利用できる状態になっていたとのこと。そうであるにも関わらず、無線LANが届く範囲の敷地内にある他の誰かが児童ポルノ画像をダウンロードしたとは考えにくい、という判断が下され、この学生だけが捜査されたようです。

■無実の罪である可能性が否定できない、しかし単純所持が違法だから「有罪」


捜査を行ったFBI捜査官によると、今回の事件におけるリンクをクリックして逮捕された者の容疑は大きく分けて4つ。

1:不法なリンクをクリックしたこと
2:FBI捜査官が彼の家の外にいたときにハードディスクなどを破壊しようとしたこと
3:ハードディスクなどのデバイスを破壊することによってFBIの捜査を妨害すること
4:2人の未成年の女性(性行為はしていないが裸で、外陰部が見えていた)のサムネイル画像(小さな画像)を含んだハードディスクを所有していたこと


このうち、「2」は裁判官が却下し、「3」については無罪、そして残りの「1」と「4」で有罪判決になったというわけです。

問題はこの「4」のサムネイル画像。実はこれはWindowsで画像を見た際に自動生成される「thumbs.db」という隠しファイルのこと。つまり、ハードディスク内には実際の児童ポルノ画像はなく、弁護側は迷惑メールなどの添付ファイルやウェブページを見た際のキャッシュなどにたまたま含まれていた児童ポルノ画像を見ただけでもこのサムネイル画像は生成されてしまうため、この「thumbs.db」に児童ポルノ画像が2枚あったとしてもそれは故意に児童ポルノ画像を今まで収集していたという証拠にはならないと主張した模様。これに対してFBIは、児童ポルノ画像と思われるリンクをクリックし、児童ポルノの画像イメージを含んだthumbs.dbファイルを持っていることは重罪であると考えているようです。

つまり、ちょっと戻って考えるとわかるのですが、要するに逮捕してからハードディスクの中を探しても児童ポルノ画像が見つからなかったためFBIが焦り、FBIが来る前にハードディスクから児童ポルノ画像を削除したに違いない!と主張したのが「2」と「3」というわけです。結果、いつ見たかもわからないし、故意であるとも到底思えない「4」のようなむちゃくちゃな容疑につながっているというわけです。

こうやって整理してみるとかなり「えん罪」くさいのですが、児童ポルノ画像の単純所持はアメリカでは違法なので、リンクをクリックしたのは開放されていた無線LANにただ乗りした隣人である可能性があるにもかかわらず、児童ポルノ画像ダウンロード「未遂」を行ったとされる「1」、さらにサムネイル画像とはいえ、実際に出てきてしまった「4」の2つが有罪になった、というわけです。つまり、理由の如何によらず、捜査されれば相手はメンツに賭けて、どのような理由のこじつけであろうが「有罪」にしに来る、というわけ。

■日本でも児童ポルノ画像の単純所持を違法にすると同じ事が起きる


日本でも児童ポルノ画像の単純所持を違法化しようという動きがありますが、痴漢えん罪事件違法な取り調べによる偽の自白を強要した事件などが多発している今の日本の現状を考えると、「自分は児童ポルノ画像なんてダウンロードしないから関係ない」とは言えないのではないでしょうか。海の向こうのとんでもない出来事、対岸の火事ではなく、児童ポルノの単純所持を違法にしようという動きがある以上、既にすぐ側にまで迫っているわけです。誰でも無実の罪で犯罪者にされて刑務所行きにされる可能性があり、犯罪をしていないという悪魔の証明をする必要に迫られるというわけです。うかつにリンクをクリックすることのできない世界になるかもしれません。

日本ではこのようなおとり捜査は裁判において証拠として認められないかもしれませんが、実際に警察に捜査され、書類送検される可能性は依然として残りますし、捜索された段階で警察は手柄にしたくて記者クラブへ発表するでしょうから、大々的に新聞やテレビで実名報道されてしまい、不起訴になる頃には社会復帰不能な状態にされるかもしれません。

そして、単純所持を違法化して「間違い」が起きても、単純所持違法化を勝手に唱え、勝手に決めた連中は、誰も責任を取ったりしないのです。

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in メモ,   コラム, Posted by darkhorse