Telegramの海賊版配信者をAIで自動検出するツールを研究者らが開発、61日間で海賊版チャンネル524件とボット71件の削除に役立つ

ロシアの起業家が開発したメッセージアプリ「Telegram」は、ロシアやウクライナで主要なメッセージングサービスとして使われているほか、映画やテレビ番組などの海賊版コンテンツを共有するプラットフォームとして使われている側面があります。ルイジアナ州立大学とテキサス大学アーリントン校の研究者らは、「Telegram上の動画海賊行為に関する最初の大規模な研究」と表現するTelegramの分析結果を発表しています。
[2605.08418] Binge, Bot, Repeat: Unpacking the Ecosystem of Video Piracy on Telegram
https://arxiv.org/abs/2605.08418
Researchers Hunt Telegram Pirates with AI Tool, Flag Hundreds of Channels * TorrentFreak
https://torrentfreak.com/researchers-hunt-telegram-pirates-with-ai-tool-flag-hundreds-of-channels/
研究者によると、Telegramは著作権で保護されたコンテンツがユーザー間で急速に拡散される大規模な動画海賊行為の主要プラットフォームとして台頭してきましたが、その知名度にもかかわらず、Telegramのエコシステムの構造的および運用上のダイナミクスは十分に理解されていないそうです。そこで研究チームは、2023年12月から2026年1月の間に約20万9000件のユニークな投稿をした1057のチャンネルを量的データと質的データを統合する「混合手法」で分析しました。
研究者たちは、エコシステムをマッピングするために、ローカルで運用されている大規模言語モデル(LLM)を利用してAIで投稿にラベルを付けました。これにより、3941社が制作した1万4632本の映画と4401本のテレビ番組という1万9033もの固有の海賊版タイトルが様々なTelegramチャンネルにわたって特定されています。海賊版の投稿は983チャンネルで見つかり、合計48億5000万回以上の視聴回数を記録していたとのこと。
以下は侵害を受けた上位10社をグラフに表したもの。最も海賊版が出回っていたのは「ONE PIECE」や「ドラゴンボール」の権利を持つ東映で、全タイトルの17%を占めていました。2位がNetflixで15%、3位がワーナー・ブラザースで12.4%でした。

また以下は、どの Telegramチャンネルで海賊版として流通したコンテンツの制作国トップ10。1位はアメリカで28.5%を占め、2位が11.8%で日本。3位以下はイギリス、韓国、フランス、インド、中国と続きます。

今回の研究で注目すべき点として、AI分析手法により、Telegramにおける海賊版チャンネルの複雑なエコシステムが明らかになりました。Telegram上の海賊版コミュニティーは、単純に1つのチャンネルが動画を共有しているだけではなく、削除要請に対して耐性を持つように意図的に設計されています。海賊版チャンネルは多様な配信手法を用いており、コンテンツは相互接続されたチャンネル・ボット・バックアップアカウントなどに分散されています。AIによってマッピングされたチャンネルの約94%は少なくとも他の1つのチャンネルと接続されており、その多くは従来の検索方法では見つけることができなかったと研究者らは述べています。
Telegramが海賊行為に利用される理由のひとつとして、Telegramが1投稿あたり最大2GBまでのファイルアップロードをサポートしていることが挙げられています。この容量は複数の海賊版動画をプラットフォーム上で直接ホストするのに十分なものになっており、監視や規制の危険度が高い外部のファイル共有サービスを使用する必要がないため、従来の海賊版サイトに比べて利点となっています。実際に、今回の分析ではTelegram内部にファイルを直接アップロードする投稿が579件確認されました。

また研究チームは、直接ファイルを共有する仕組みだけではなく、別のTelegramチャンネルへ誘導する仕組みも多数確認しました。認知度が高いチャンネルはより厳しい監視や規制の圧力にさらされているため、直接ファイルを共有せずにファイルを共有している別のチャンネルへのリンクを記載するのみにすることで、アカウント規制を免れています。中には、多段階のリダイレクトが行われている事例が128件特定されたほか、単一の作品タイトルを専門に共有するチャンネルも37件確認されています。
研究者らは、今回分析した投稿におけるコンテンツ権利保有者の経済的損失額は約174億9千万ドル(約2兆7900万円)と推定しています。研究チームは調査結果を報告書にまとめ、Telegramの不正利用対策部門と、アメリカの主要な権利保有者17社に送付しました。
研究者らはさらに、今回の分析結果を受けて、Telegram上での動画著作権侵害をリアルタイムで検出できるAI搭載ツール「Anti-RIP」を開発しました。Anti-RIPは2026年2月3日から4月10日までの期間に24万9133個の新たなTelegramチャンネルを調査し、海賊版チャンネル802件、関連するチャンネル299件、ボット108件を検出しました。Anti-RIPに基づく報告によって、2週間以内に524のチャンネルがアクセス不能になり、そのほかにもTelegramは通報された個々の投稿の多くを削除したと成果が報告されています。

注意すべき点として、研究者らはAnti-RIPの誤検出が発生することを認めており、検証用の1000件の投稿をランダムに抽出して検証したところ、正当な投稿4件を著作権侵害と誤って判定していたことが判明しました。テストでは98%の精度を示したと報告されていますが、実際の運用中にフラグが立てられたチャネルの検証済みエラー率は公表されていません。
研究チームはAnti-RIPのデータセットをオープンソースとしてGitHubで公開しています。
GitHub - Scalable-Security-Research-Lab/BingeBotRepeat: Repository for the paper: Binge, Bot, Repeat: Unpacking the Ecosystem of Video Piracy on Telegram · GitHub
https://github.com/Scalable-Security-Research-Lab/BingeBotRepeat
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