雷で周囲の植物を殺す能力を身につけた樹木が見つかる、雷に打たれることで恩恵を受けることが判明した最初の樹木

雷は樹木にとってはまれながら逃れられない脅威で、運悪く落雷に見舞われた木のほとんどは焼けたり倒れたりしてしまいます。一方、パナマの熱帯雨林には、導電性の幹のおかげで落雷を受けても無事な上に、雷を利用して樹皮に絡みつく蔓(つる)を一掃して繁殖を大きく有利に進めることが可能な「耐雷性植物」が生息していることが、研究により明らかになりました。
How some tropical trees benefit from being struck by lightning: evidence for Dipteryx oleifera and other large‐statured trees
https://nph.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/nph.70062
Getting hit by lightning is good for some tropical trees
https://www.caryinstitute.org/news-insights/press-release/getting-hit-lightning-good-some-tropical-trees
Shocker: This tropical tree thrives after being struck by lightning | Science | AAAS
https://www.science.org/content/article/shocker-tropical-tree-thrives-after-being-struck-lightning
Tropical tree in Panama has evolved to kill its 'enemies' with lightning | Live Science
https://www.livescience.com/planet-earth/plants/tropical-tree-in-panama-has-evolved-to-kill-its-enemies-with-lightning
アメリカにあるケアリー生態系研究所の森林生態学者のエヴァン・ゴラ氏は、パナマで活動していた2015年に、落雷からほとんど被害を受けずに生き延びた木を見つけました。
その木は、アーモンド風味の種をつけることから「トンカ豆の木(Tonka Bean)」やスペイン語でアーモンドを意味する「アルメンドロ(almendro)」とも呼ばれているDipteryx oleifera(D. oleifera)で、衝撃で枝に絡みついたツタが吹き飛び、近くにある木々が12本以上も枯れてしまうほどの威力の落雷でもほぼ無傷だったとのこと。
発見当時の感想を、ゴラ氏は「雷に打たれても無事な木があることに、ただただ驚きました」と振り返っています。

by Evan Gora
落雷後も元気に生い茂るD. oleiferaが他にもあることを発見したゴラ氏らの研究チームは、独自の落雷位置特定システムを駆使して、パナマのバロ・コロラド自然公園で発生した約100件の落雷現象を調査し、落雷後の樹木の生存率、樹冠と幹の状態、寄生植物や蔓植物の数、雷が落ちた木の近くの樹木の枯死率を計測しました。
そして、被雷したD. oleifera9本とそれ以外の樹木84本を比較したところ、普通の木は枝と葉が平均40%も破壊され、2年以内に64%が枯死してしまったのに対し、落雷を受けたD. oleiferaは9本とも葉がわずかに落ちた以外は無傷だったことがわかりました。
D. oleiferaはただ雷を耐えただけでなく、電気を自分に絡みつく寄生植物や近くに生えている競争相手の木への攻撃に利用していました。研究結果によると、D. oleiferaが落雷を受けると、電気が蔓や枝を伝わったり近くの木に流れたりして、D. oleiferaの寄生蔓が78%減少し、近隣の木が平均9.2本枯死していたとのことです。
また、ゴラ氏らがドローンを活用して樹冠の3Dモデルを作成したところ、D. oleiferaは近隣の木よりも平均して約4メートル背が高くなることもわかりました。これは、雷によって他の高木が枯れたことで、光と空間をめぐる競争が有利になったおかげだと考えられています。
太陽光や養分を奪い合っている競争相手の消滅はD. oleiferaの繁殖を有利にしており、被雷したD. oleiferaはそうでなかった場合よりも14倍多くの種を付けることができました。
以下は、雷が落ちる前のD. oleifera(左)と落雷から2年後のD. oleifera(右)の写真です。D. oleiferaが落雷からほとんど被害を受けていないことや、落雷後は木の枝から垂れ下がっている蔓がなくなっていることがわかります。

by Evan Gora
ゴラ氏は、D. oleiferaの耐雷性の鍵は物理的な構造にあると考えています。過去の研究では、D. oleiferaの内部は導電性が高くなっており、ちょうど絶縁体で保護された電線のように発熱することなく電気を逃がすことが可能なことが示唆されました。
こうした利点から、研究チームは「D. oleiferaは雷を引き寄せるために特別に適応している可能性がある」と結論付けました。研究チームの計算によると、D. oleiferaはその樹高と異様に大きな樹冠により、一般的な木よりも落雷を受ける可能性が68%高くなっているとのこと。
これにより、D. oleiferaは平均して56年に1回の割合で雷に直撃され、1000年以上の寿命の間に少なくとも5回は雷に打たれると考えられています。実際、ゴラ氏らの研究では、あるD. oleiferaの木が約5年の研究期間中に2回も落雷を受けたことが確認されています。
この研究は、2025年3月26日に査読付き科学誌・New Phytologistで発表されました。これは落雷から恩恵を受ける植物があることを実証した初めての研究ですが、同様の能力を持つ木はD. oleiferaだけではない可能性があります。ゴラ氏は「世界中の森林で、特定の樹木が雷の恩恵を受けている可能性は非常に高いと思われます」と話しました。
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