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AIの普及により就職活動と採用活動の両方で不信感が広まる、ディープフェイクで作成された「存在しない人物」を採用しそうになった企業も


AIツールの急増および依存により、雇用市場はますます非現実的なものになりつつあると、The Washington Postが報じています。

In AI-era job hunting, bots apply and recruit. Where do humans fit in? - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/business/2025/03/27/ai-job-search-hiring-process/

ワシントン大学ボセル校の3年生であるジェイ・ウェスト氏は、過去数カ月で150件以上の求人に応募したそうです。ウェスト氏は就職活動において、履歴書を書くのにAIチャットボットを使用したと語っています。


企業側も、就活生の案内などにAIボットなどを活用していたそうです。AIボットに案内されて対面面接に臨んだウェスト氏は、「現地スタッフの誰も面接が予定されていることを把握していなかった」というケースに遭遇したこともある模様。

そのため、ウェスト氏は「企業は採用活動にそれほど真剣に取り組んでいない」と感じるようになり、履歴書も「誰も見ないだろう」と思うようになってしまったそうです。「これはAI時代の求職者の一般的な感情になりつつある」とThe Washington Postは報じています。


求職者は履歴書の作成にAIを利用し、数百件の求人にわずか数分で応募することができるAIソフトウェアを使い、採用率を可能な限り高めようとしていますが、これが行き過ぎるケースもあるそうです。採用担当者は対応しきれないほど多くの求職者を抱えているものの、その求職者がAIを使って身元を隠したり、面接内容を偽装したりするケースもあるため、本当に有能な人材を見つけることはますます難しくなっているというわけ。

ポーランドのサイバーセキュリティ企業であるVidoc Security Labは、ディープフェイクを使って顔写真を偽装し、AIツールを使ってコーディングテストを通過した求職者を採用しそうになったことがあるそうです。

そのため、Vidoc Security LabはAIを使って身分を偽る求職者を見分けるための方法を発表しており、「AIを使って身分を偽る求職者は企業の機密情報やデータを盗もうとしている可能性があり、重大なセキュリティ上の脅威になる可能性もある」と語っています。

以下はVidoc Security Labが遭遇した、ディープフェイクで顔を偽装してオンラインミーティングに参加してきた人物のスクリーンショット。


Vidoc Security Labは同様の問題に直面している複数の企業から連絡を受けており、その中にはディープフェイクで見た目や身元を偽った人物を雇ってしまった場合、どうすればよいかと尋ねる企業もあったそうです。

なお、Vidoc Security LabはAIツールを用いた危険な求職者の特徴として、「求人広告が掲載されてから数秒後に応募が殺到するケース」「履歴書の住所や日付などの詳細が一致しないケース」「履歴書の内容があまりに優れているケース」「オンライン面接中にカメラをオンにすることを拒否する求職者」などを挙げています。

Vidoc Security Labの最高技術責任者であるダビド・モクザドロ氏は、ディープフェイクで見た目を偽装する求職者への対策として、「カメラの前で手を振らせること」を挙げています。これを拒否することは、自身の見た目をディープフェイクで偽装している証であるとのこと。

モクザドロ氏は採用プロセスにAI耐性を持たせるために、早い段階でより個人的な質問をしたり、最終面接を対面で行ったりしているそうです。Vidoc Security LabはコーディングなどのタスクにAIツールが使用されないように、採用プロセスを改良中だそうです。


Vidoc Security Labは偽の求職者を除外するためにAIを使用していますが、採用プロセスでは他にAIを一切使用していません。しかし、オンラインでの求人掲載、候補者の発掘、履歴書のスキャンから面接のスケジュール設定、求職者とのやり取りまで、採用プロセスのあらゆるリンクにAIが入り込んできているため、Vidoc Security Labのようなアプローチはますます一般的ではなくなってきているそうです。なお、記事作成時点の採用ソフトウェア市場の規模は33億ドル(約4950億円)程度で、2032年までに約2倍に拡大すると予測されています。

AIの雇用市場への影響は、特にテクノロジー業界で深刻とされています。採用担当者や採用マネージャーによると、AIに過度に依存した労働者が大量に出現しており、求職者の実際のスキルを評価するのがますます難しくなっているとのこと。

15年以上エンジニアの採用に携わってきたというエルヴァル・フレイレ氏は、自分や他の採用担当者が「これまでに見たことのないようなTOFUの問題」に直面していると語っています。過去にFacebookのエンジニアリングマネージャーを務め、記事作成時点ではスタートアップのMobile.devでエンジニアリング責任者を務めるフレイレ氏は、2025年2月にLinkedInに求人情報を掲載した際、わずか7分で150人の応募者が集まったと語りました。これ以上の求人情報を集めるには追加料金が必要であるとLinkedInから警告されたそうです。

フレイレ氏が集まった応募者の履歴書を確認したところ、間違いや矛盾だらけのものが多数だった模様。フレイレ氏は「私が読んだ履歴書のほとんどがChatGPTやClaudeで書き直されていました」と指摘しており、本物の人間により提出された履歴書とAIを用いて作成された履歴書を区別することは非常に難しかったとも言及しています。

また、面接中にAIを使用していると思しき人物に遭遇したこともあると、フレイレ氏は言及しています。ある人物は、趣味について尋ねられたところ突然パニックに陥り、その後、まるでロボットのように「私の趣味はランニング、映画鑑賞、友達と出かけることです」と答えたそうです。

一方、自作の履歴書よりもAIを使って書き直した履歴書の方が圧倒的に採用率が高くなるという声もあります。フレイレ氏の妻は、自作の履歴書を100件分作成して求人に応募し、その後、100件の履歴書をAIで書き直してから同じように求人に応募したそうです。その結果は「すぐに良くなった」とのこと。


2024年4月、雇用機会均等委員会(EEOC)は職場でのAI使用に関するガイドラインを発表しました。企業はAIを使用して求職者の選考や従業員の生産性評価などができますが、動画面接ソフトウェアによってフラグが付けられた話し方のパターンに基づいて候補者の格付けを下げることは、差別禁止法に違反する可能性があります。

2025年2月、コロラド州でAIツールによる差別を防ぐためのAI法が発効しました。2026年にはイリノイ州で雇用の決定にAIを使用する場合、求職者と従業員に通知することを雇用主に義務付ける法律が施行予定です。

なお、AIの雇用市場への進出に着目し、プログラマーの就職支援ツールとしてAIコーディングツールを開発したという人物もいますが、同氏はコロンビア大学から停学処分を受けています

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in ソフトウェア, Posted by logu_ii

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