「ArmプロセッサのSnapdragon Xシリーズ搭載PCは実用的なのか?」を900g切りの軽量ノートPC「ASUS Zenbook SORA (UX3407)」で試してみた

2025年2月5日に登場した900g切りの軽量ノートPC「ASUS Zenbook SORA (UX3407)」は、Qualcomm製のSoC「Snapdragon Xシリーズ」を搭載しています。Snapdragon XシリーズはIntelやAMDのプロセッサとは異なるArmアーキテクチャを採用しており、x64向けに開発されたアプリはエミュレーターを介して実行されます。このため、「Snapdragon Xシリーズ搭載PCで自分の使いたいアプリは動くだろうか」と気になっている人も多いはず。実際にASUS Zenbook SORA (UX3407)で各種ベンチマークを実行したり各種アプリを起動したりして、性能や各種アプリの動作状況を確かめてみました。
ASUS Zenbook SORA (UX3407) | ノートパソコン | ASUS日本
https://www.asus.com/jp/laptops/for-home/zenbook/asus-zenbook-sora-ux3407/
・目次
◆01:ASUS Zenbook SORA (UX3407)はどんなPCなのか
◆02:ベンチマークの準備
◆03:CrystalDiskMark
◆04:Geekbench 6
◆05:Geekbench AI
◆06:PassMark PerformanceTest
◆07:FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク
◆08:SteamをインストールしてPCゲームを起動
◆09:Adobe Photoshop
◆10:ATOKやGoogle 日本語入力
◆11:高負荷時の熱&ファン音
◆12:まとめ
◆01:ASUS Zenbook SORA (UX3407)はどんなPCなのか
ASUS Zenbook SORA (UX3407)にはSnapdragon X X1-26-100を搭載した下位モデル「UX3407QA」とSnapdragon X Elite X1E-78-100を搭載した上位モデル「UX3407RA」が存在しています。GIGAZINEではレビューのために下位モデルのUX3407QAを借りました。UX3407QAの見た目や重さ、搭載ポートなどは以下の記事に詳しくまとめています。
実測884gの軽量ノートPC「ASUS Zenbook SORA (UX3407)」外観レビュー、Snapdragon Xシリーズ搭載のCopilot+ PC - GIGAZINE

キーボードの下部にはSnapdragon Xのシールが貼られていました。Snapdragon XはSnapdragon Xシリーズの中でも下位に位置するモデルで、CPUコア数が上位モデルより少ない8コアに抑えられています。今回は上位モデルを搭載した他社製PCとの比較も交えつつUX3407QAの性能を確かめてみます。

◆02:ベンチマークの準備
ベンチマークテストを実行する前に、まず電源モードを「最適なパフォーマンス」に変更しました。

また、ASUS製ノートPCにプリインストールされているシステム管理アプリ「MyASUS」を使ってファン回転モードを最高速の「フルスピードモード」に切り替えています。

◆03:CrystalDiskMark
ストレージの読み込み・書き込み速度を測定できる「CrystalDiskMark」のArm版を実行した結果が以下。シーケンシャル読み込み速度は6747.48MB/s、シーケンシャル書き込み速度は3652.51MB/s、ランダム読み込み速度は341.97MB/s、ランダム書き込み速度は477.40MB/sでした。

◆04:Geekbench 6
定番ベンチマークアプリ「Geekbench 6」のArm版でCPUベンチマークを実行した結果、シングルコアスコアは2120、マルチコアスコアは1万434でした。

Geekbenchのスコア集約サイトを確認すると、2120というシングルコアスコアは「Intel Core i5-11600」や「AMD Ryzen 7 5800X3D」と同等です。

また、マルチコアスコアは「Intel Core i9-9940X」や「AMD Ryzen 7 7840U」と同等です。

続いて、GPUベンチマークも実行。OpenCLの場合、スコアは9686でした。

OpenCLのスコアは「AMD Radeon 550X」や「GeForce GTX 465」に近いです。

Vulkanでのスコアは1万3965でした。

Vulkanのスコアは「GeForce GTX 980M」に近い値です。

◆05:Geekbench AI
UX3407QAはNPU(QNN)単体で最大45TOPSのAI処理性能を発揮可能で、Microsoftが定める「Copilot+ PC」の基準を満たしています。実際に「Geekbench AI」を実行してAI処理性能を測定してみました。
まずCPUのAI処理性能を測定した結果はこんな感じ。単精度スコアは1672、半精度スコアは2760、量子化スコアは5616でした。

単精度スコアに着目して他の製品の結果と比べると、iPhone 11 ProのCPUに近い性能です。

そして、QNNのベンチマーク結果が以下。単精度スコアは1656、半精度スコアは1万5419、量子化スコアは2万6366でした。

単精度スコアに着目すると「iPhone 12」と「Oppo Find X8 Pro」の中間の性能です。

◆06:PassMark PerformanceTest
CPUやストレージなどの性能を測定できるベンチマークアプリ「PassMark PerformanceTest」のArm版を実行して、過去に測定していた「第7世代Surface Laptop(搭載SoC:Snapdragon X Elite)」「OmniBook X 14 AI PC(搭載SoC:Snapdragon X Elite)」「XPS 13 9345(搭載SoC:Snapdragon X Elite)」「ASUS Vivobook S 15 S5507QA(搭載SoC:Snapdragon X Elite)」とスコアを比較してみました。オレンジ色のバーが今回測定したUX3407QAのスコアです。
UX3407QAの総合スコアは3574で、Snapdragon X Eliteを搭載した他のPCを少し下回ります。

CPUスコアは1万7412。Snapdragon X Elite搭載PCと比べてかなり低い結果になりました。

2Dグラフィックススコアは323。このテストはバラつきが大きいです。

3Dグラフィックススコアは2120で、Snapdragon X Elite搭載PCと遜色ない性能です。

メモリスコアは3491。

ディスクスコアは3万8303で、XPS 13 9345は下回ったもののかなり高性能です。

◆07:FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」を実行してゲーミング性能を測定してみます。FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークはx64版しか存在しませんが、インストールに成功。

起動してベンチマークも最後まで実行できました。

4種の描画設定でベンチマークを実行した結果が以下。重めの3DCGゲームをプレイする際は設定をかなり落とす必要があります。
描画設定 | スコア | 評価 |
---|---|---|
1920×1080ピクセル、標準品質 | 1532 | 動作困難 |
1920×1080ピクセル、軽量品質 | 1847 | 動作困難 |
1280×720ピクセル、標準品質 | 2979 | やや重い |
1280×720ピクセル、軽量品質 | 3629 | 普通 |
◆08:SteamをインストールしてPCゲームを起動
Windows版のSteamクライアントにはArm版が存在していませんが、問題なくインストールして起動できました。

Steamで配信されているPCゲームをプレイ可能か確かめるべく、「モンスターハンターワイルズ ベンチマーク」をインストールしてみます。モンスターハンターワイルズ ベンチマークのシステム要件はこんな感じ。Armプロセッサには対応していません。

インストールはできましたが、「プレイ」をクリックしても起動しませんでした。

続いて、比較的軽量なゲームである「SCHiM - スキム -」も試してみます。システム要件は以下の通りで、Armプロセッサには対応していません。

インストールに成功し、起動して問題なくプレイできました。

◆09:Adobe Photoshop
Adobe PhotoshopのArm版はSnapdragon Xシリーズに最適化されているので、実際に動かしてみました。

Arm版Adobe Photoshopを使って写真を編集してみたところ、明るさ調整や色調補正などをサクサク実行できました。

◆10:ATOKやGoogle 日本語入力
日本のWindowsユーザーの中には「Windows標準の日本語入力機能(Microsoft IME)が使いにくいので、ATOKやGoogle 日本語入力といったサードパーティー製IMEを使っている」という人も多いです。そこで、ATOKとGoogle 日本語入力をインストールして使ってみることにしました。
どちらもインストール自体は成功。

しかし、メモ帳を起動して日本語入力に切り替えようとしても操作を受けつけず、英語しか入力できませんでした。

なお、ATOK動作環境ページには「Arm版Windowsは動作保証外です」と明記されています。

また、Google 日本語入力もx86プロセッサとx64プロセッサにしか対応していません。

◆11:高負荷時のファン音&熱
高負荷時にファン音がどれだけ大きくなるのかや、各部の温度がどれだけ上昇するのかを確かめてみます。
まず、FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークとPassMark PerformanceTestのCPUテストをループ実行してCPUとGPUに負荷をかけます。

CPUの使用状況はこんな感じ。すべてのコアに100%の負荷がかかっています。

GPUにも100%近くの負荷がかかっています。この状態で10分放置したうえで、ファン音の大きさや各部の温度を測定してみます。

デジタル騒音計「GM1351」をUX3407QAから約30cm離した位置に設置。

ファン音の大きさは53.3dBAでした。暖房や換気扇の音にまぎれるくらいの大きさです。

赤外線サーモグラフィ「FLIR i3」で温度を測定した結果が以下。画面とキーボードの境界部分が41.4度まで上昇しました。一方でキーボードやタッチパッドなどの手で触れる部分の温度はあまり上昇していません。

付属の電源アダプタは45.0度まで上昇していました。

◆12:まとめ
実際にASUS Zenbook SORA (UX3407)のSnapdragon X X1-26-100搭載モデル(UX3407QA)を使ってみた結果、Armプロセッサに対応したアプリなら画像編集などの作業もサクサク実行可能で、一部のx64プロセッサ用アプリやゲームも動作させられました。
一方で、Armプロセッサに対応していないアプリやゲームの中には正常に動作しないものも存在します。特にATOKなどのサードパーティー製IMEが動作しないのは日本語入力作業をメインにしているユーザーにとって大きなマイナスポイントです。このため、ASUS Zenbook SORA (UX3407)などのSnapdragon Xシリーズ搭載PCを買う際は自分の使うアプリがArmプロセッサに対応しているのかを確認したうえで選択する必要があります。

なお、UX3407QAのASUS公式ストアでの最低価格は税込17万9800円です。また、Amazon.co.jpでは税込16万3455円で売られています。
Amazon.co.jp: ASUS ノートパソコン Zenbook SORA UX3407QA 14.0型 Qualcomm Snapdragon X メモリ16GB SSD 512GB Windows11 重量 899g Wi-Fi 6E Type-C給電対応 Copilotキー搭載 AI PC ザブリスキーベージュ UX3407QA-PU16548BE/A : パソコン・周辺機器

UX3407QAのバッテリー持続時間や充電にかかる時間を測定して記事化予定です。
・つづき
900g切りの軽量ノートPC「ASUS Zenbook SORA (UX3407)」のバッテリーはどれくらい長持ちするのか検証してみたよレビュー - GIGAZINE

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