カーボンキャプチャーの方が再生可能エネルギーに切り替えるよりもコストがかかってしまうことが研究で判明

気候変動を抑えるため、大気中の二酸化炭素を減らす試みが世界中で行われています。その取り組みの1つが、「カーボンキャプチャー」などと呼ばれる大気中の二酸化炭素を回収して地中に貯留する技術です。このカーボンキャプチャーと他のクリーンエネルギーを比較した研究で、カーボンキャプチャーは効果の割にコストが高いことが明らかになりました。
Energy, Health, and Climate Costs of Carbon-Capture and Direct-Air-Capture versus 100%-Wind-Water-Solar Climate Policies in 149 Countries | Environmental Science & Technology
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.est.4c10686
Carbon capture more costly than switching to renewables, researchers find
https://techxplore.com/news/2025-02-carbon-capture-renewables.html
スタンフォード大学のマーク・ジェイコブソン氏らは2種類の「極端なケース」を想定し、調査対象として選んだ149カ国がいずれかのケースを選んで地球温暖化対策を実施したと仮定して、ケースごとの年間エネルギーコスト、排出量、公衆衛生への影響、社会的コストを比較しました。
極端なケースの1つ目は、各国の政府がすべてのエネルギー需要を風力、太陽光、地熱、水力発電による熱と電気の使用に完全に切り替え、エネルギー効率もある程度向上させ、公共交通機関の改善、自動車ではなく自転車利用の増加、在宅勤務によるエネルギー需要の削減、長距離の空の旅や輸送のための水素燃料電池の商業化を行うことを想定したものです。
もう1つの極端なケースは、政府が化石燃料への依存を維持しつつ、再生可能エネルギー、原子力、バイオマスを併用し、エネルギー効率を再生可能エネルギーの場合と同程度に改善するケースです。このケースでは、149カ国すべてが二酸化炭素を回収する設備を追加し、カーボンキャプチャーにより大気中の二酸化炭素を回収すると仮定されました。
この2つの「非現実的な極端なケース」を比較することで、電化や風力、水力、太陽光発電に使われるかもしれない資金を二酸化炭素回収に投資することに伴う気候、健康、社会的コストを抽出したとジェイコブソン氏らは主張しています。

149カ国が1つ目のケースを選び、2050年までに自然エネルギーと効率化によって化石燃料とバイオマスの燃焼をなくすことに成功したと仮定した場合、最終消費エネルギー需要を約54.4%、年間エネルギーコストを約59.6%、年間社会コスト(エネルギー+健康+気候)を約91.8%削減することがわかったとのこと。
逆に、二酸化炭素排出を削減または相殺するためにカーボンキャプチャーを促進した場合、たとえすべての二酸化炭素が貯蔵されたとしてもエネルギー需要や設備コストがもう1つのケースに比べて増加するそうです。

ジェイコブソン氏らはこの結果をもって、どんなカーボンキャプチャーの手法でも社会的コストと二酸化炭素排出量は風力、水力、電力に比べて大幅に増加するため、カーボンキャプチャーを推進する政策は放棄されるべきであると主張しました。
ジェイコブソン氏は「石炭発電所の代わりに風力タービンを追加すれば、二酸化炭素だけでなく石炭による汚染もなくなるのです。これらの利点は、大気中の二酸化炭素を除去する技術を導入するのにかかる費用の何分の一かで実現できることです」と話しました。

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in Posted by log1p_kr
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