わずか200g程度で1本の木と同じだけの二酸化炭素を吸収できる粉末が開発される
温室効果ガスを微細な気孔に閉じ込める粉末「COF-999」が開発されました。大気中の二酸化炭素を削減し、気候変動を押さえる効果が期待されています。
Carbon dioxide capture from open air using covalent organic frameworks | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-024-08080-x
Capturing carbon from the air just got easier - Berkeley News
https://news.berkeley.edu/2024/10/23/capturing-carbon-from-the-air-just-got-easier/
This powder removes as much CO₂ from the air as a tree - Los Angeles Times
https://www.latimes.com/environment/story/2024-10-23/this-powder-can-remove-as-much-co2-from-the-air-as-a-tree
カリフォルニア大学バークレー校のオマー・ヤギー氏らが開発したCOF-999は、二酸化炭素と結合するアミンを内包しており、空気中の二酸化炭素を効率的に吸収するとのこと。
COF-999は走査型電子顕微鏡で見ると何十億もの穴が開いた小さなバスケットボールのように見えるそうで、このように多孔質のデザインにすることで表面積が増え、他の素材よりも「少なくとも10倍速い」速度で二酸化炭素を取り込むことができるといいます。
COF-999は乾燥条件下で1gあたり0.96mmol、湿度50%で1gあたり2.05mmolの二酸化炭素を吸収できる能力を持ち、特に湿度が高いほど吸収効率が向上するという特徴があります。
粉末をストローほどの大きさのステンレス鋼管に詰めて屋外に放置した実験では、410ppmから517ppmの二酸化炭素が含まれていた空気から二酸化炭素を完全に除去することに成功したとのこと。
一般的な大木は1年間で40kgもの二酸化炭素を空気中から吸い上げることができるといいますが、COF-999はわずか200g程度で同じ量の二酸化炭素を吸収できるそうです。
吸収量が多いことに加え、60℃ほどに温めると取り込んだ二酸化炭素を放出できることも特徴の1つです。同種の他の素材だと120℃まで加熱しなければならず、低温で処理できることは大きな利点と言えるそうです。
これにより、二酸化炭素を吸収し、影響の薄い地下で放出し、再び地上で二酸化炭素を吸収するなどのサイクルで運用できる可能性があります。実験では吸収と放出のサイクルを100回繰り返した後でも安定した構造を維持しており、ヤギー氏いわく「数千サイクルは大丈夫」とのこと。
ヤギー氏は「たとえ二酸化炭素の排出を止めたとしても、大気から二酸化炭素を取り出す必要があるのです。それ以外の選択肢はありません」と指摘。大気中の二酸化炭素を除去する手段の1つとして、COF-999の開発と展開を進めていきたいとの意気込みを語りました。
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