サイエンス

バーチャル空間に生きるデジタル生物がゼロから「目」を進化させる様子を観察する研究をMITが行っている


視覚は人間を含む多くの動物にとって重要な感覚であり、生息環境や生態に応じてさまざまなタイプの「目」が存在しています。そんな生物における目の進化を調べるため、マサチューセッツ工科大学(MIT)がバーチャル空間に生きるデジタル生物を用いて、目の進化を観察する研究を行っています。

[2501.15001] What if Eye...? Computationally Recreating Vision Evolution
https://arxiv.org/abs/2501.15001


What if Eye...?
https://eyes.mit.edu/

MITの研究チームはプレプリントサーバーのarXivに投稿した論文で、「自然界の視覚システムは単純な感光性のパッチからレンズ付きの複雑なカメラタイプの眼球まで、驚くべき多様性を示しています。自然淘汰(とうた)は数百万年にわたって、無数の突然変異を通じてこれらの目を生み出してきましたが、それらは実際に起きた進化の道筋のうち1つのセットに過ぎません。『環境の圧力が目の進化をどのように形成したのか』という仮説を検証することは、個々の要因を実験的に分離できないため依然として困難です」と述べています。


そこで研究チームは、さまざまな環境のバーチャル空間に生息するデジタル生物を作り出し、そのデジタル生物が物理的な目の構造と神経処理の両方を共進化させる人工的な進化フレームワークを通じ、どのように目を進化させるのかを観察する実験を始めました。

以下の画像は、黄色い部分がデジタル生物の目が感知する範囲を、下の赤枠が知覚される視覚を表しています。このケースでは、迷路のようなバーチャル空間に住むデジタル生物に対し、迷路の先にある目的地にたどり着くというタスクが与えられています。デジタル生物の最初の世代は、単一の感光性パッチのみを視覚として持っています。


感光性パッチの目から得られる視覚は、自分の前にある空間によって濃淡が変化します。


このデジタル生物が50世代目になると、自分の前にあるさまざまな空間や物体に応じて濃淡が細かく変化する、より複雑なタイプの目に進化しました。


特定の目的地にたどり着く必要がある環境下では、周囲の状況が大ざっぱにしかわからない感光性パッチの目よりも、より細かい状況がわかる複雑な目の方が適していると考えられます。


また、研究チームは「毒物と食品の区別を付ける」というタスクが与えられたデジタル生物の光学遺伝子に、ランダムな突然変異を与える実験も行いました。


その結果、150世代目のデジタル生物では、物体の形状や色などを識別できるカメラタイプの目が発達しました。このように、デジタル生物が置かれる環境によって、目の進化の方向付けも変わってくるというわけです。


研究チームは、「私たちの研究は、身体化されたエージェントが視覚システムを進化させ、複雑な行動を学習する必要があるターゲットを絞ったシングルプレイヤーゲームを作成することにより、視覚を形成する進化の原理を明らかにする新しいパラダイムを導入しています」とコメントしました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
私たちの目がどのように見たものを捉えて処理しているのかを視覚化したムービー - GIGAZINE

犬は人間の心を動かす「子犬のような目」を進化で身に付けた - GIGAZINE

第3の目・第4の目を持つ古代トカゲの存在が報告される - GIGAZINE

人間の目を超える反応速度と超高解像度を兼ね備えた「人工眼」が作られようとしている - GIGAZINE

3Dプリンターで完璧に機能する目「バイオニックアイ」を作り出す研究 - GIGAZINE

生物の進化は決して後戻りしないと専門家、一見すると進化が逆行したように見える「退行進化」とは? - GIGAZINE

人間が想像すらできない「色」を鳥が見ていることが3年にわたる実験で示される - GIGAZINE

in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article MIT is conducting research to observe ho….