オス由来のES細胞と精子から生まれたマウスが成体まで生き延びたという報告
![](https://i.gzn.jp/img/2025/01/30/bi-paternal-mouse-surivives-to-adulthood/00_m.jpg)
中国科学院の研究チームが、精子と精子由来のES細胞を利用して、オスとオスからマウスを誕生させることに成功したと発表しました。オス同士の単性生殖では個体を作製することは不可能とされてきましたが、精子由来のES細胞と遺伝子改変によって成体まで成長可能なbi-paternal(父親由来遺伝子のみ)マウスの作製に成功したのは世界初とのことです。
Adult bi-paternal offspring generated through direct modification of imprinted genes in mammals: Cell Stem Cell
https://www.cell.com/cell-stem-cell/fulltext/S1934-5909(25)00005-0
Mouse with two fathers survives to adulthood, marking scientific milestone
https://phys.org/news/2025-01-mouse-fathers-survives-adulthood-scientific.html
研究チームによれば、これまでオス同士の単性生殖による個体作製の試みはあったものの、胚の発生が一定の段階で停止してしまい、成体にまで成長することはほとんどできなかったとのこと。今回発表した研究チームも、2018年にオス同士の単性生殖によるマウス作製の実験を行なっていましたが、生まれたマウスは生後48時間以上生き延びることができなかったと報告されています。
中国の研究チームが2匹のオスのマウスを両親にして子どものマウスを生み出すことに成功 - GIGAZINE
![](https://i.gzn.jp/img/2018/10/12/same-sex-mice-have-baby/00_m.jpg)
研究チームによると、オス同士の単性生殖で胚が成長しない原因は「インプリンティング(片親性発現)」と呼ばれる、哺乳類に特有の遺伝子発現制御メカニズムにあるとのこと。通常、私たちの遺伝子は父親と母親それぞれから受け継いだ遺伝子の両方が働きますが、インプリンティング遺伝子は父親由来か母親由来のどちらか一方のみが発現し、もう一方は不活性化されます。これは、インプリンティングが哺乳類の進化の過程で獲得されたシステムであり、父親の遺伝子は子孫の成長を促進する方向に、母親の遺伝子は適度な成長に抑える方向に働くようになったからだといわれています。
例えば、「IGF2」という成長に関わる遺伝子は父親由来の遺伝子だけが働き、母親由来は働きません。反対に、H19という遺伝子は母親由来だけが働きます。こうした遺伝子制御は胎児の正常な発育に重要な役割を果たしているため、父親由来の遺伝子だけだと促進と制御のバランスが崩れて発生に失敗すると考えられています。
今回、研究チームはまず、精子由来の半数体ES細胞に対して、インプリンティングに関連する20個の遺伝子領域を特定して改変を加え、除核した卵子に精子由来のES細胞と精子を注入することで、bi-paternal胚を作製しました。
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in サイエンス, 生き物, 無料メンバー, Posted by log1i_yk
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