孫正義とトランプ大統領とOpenAIの「Stargate Project」は本当に実行できるのか?
2025年1月22日、「ChatGPT」などを開発するOpenAIがソフトバンクやOracle、MGXと共同で、今後4年間で5000億ドル(約78兆3000億円)を投資してアメリカに新しいAIインフラストラクチャを構築する「Stargate Project」を始動したことを発表しました。AIに関する投資としては膨大な額ですが、一体どこから5000億ドルというお金が出てくるのか、このプロジェクトで得する人は誰なのかについて、投資ライターのM・G・ジーグラー氏が考察しました。
'Stargate' Squares Some AI Circles
https://spyglass.org/project-stargate-agi-openai/#two
Announcing The Stargate Project
— OpenAI (@OpenAI) January 21, 2025
The Stargate Project is a new company which intends to invest $500 billion over the next four years building new AI infrastructure for OpenAI in the United States. We will begin deploying $100 billion immediately. This infrastructure will secure…
Stargate ProjectはアメリカでOpenAIのための新しいAIインフラを構築するための計画で、今後4年間で5000億ドルが投資される予定です。プロジェクトの運営責任はOpenAIが、財務責任はソフトバンクが務め、プロジェクトの初代会長にはソフトバンクの孫正義代表が就任します。
OpenAIとソフトバンクが70兆円超の投資でAIデータセンターを設立する「Stargate」プロジェクトを発表 - GIGAZINE
「なぜ4年なのか」という点について、ジーグラー氏は「もちろんドナルド・トランプ大統領の任期の長さだ」と指摘し、この点は明確だとしています。一方でOpenAIがStargateの始動にあたり「5000億ドルを投資する」「発表後直ちに1000億ドル(約16兆7000億円)を投入する」と述べた点についてジーグラー氏は疑問視し、「どこからお金を拠出するのか」という点について自説を展開しました。
ジーグラー氏はまず「Stargateの最初の出資者はソフトバンクとOpenAI、ソフトウェア会社のOracle、投資会社のMGXとアナウンスされています。1000億ドルという資金の一部は株式と引き換えに提供されるはずですが、ソフトバンクとMGXが2大巨頭になると思われます。しかし、どちらも5000億ドルはおろか、1000億ドルのコミットメントに匹敵するほどの資本を手元に持っているようには見えません」と指摘。
さらに「ソフトバンクは約300億ドル(約4兆7000億円)の現金を持っていて、MGXは1000億ドルの資金のうちいくらかをOpenAIにコミットしています。Oracleの現金はわずか110億ドル(約1兆7000億円)程度であり、OpenAIは現時点では現金消費マシーンです。そのため、1000億ドルを確保するためには、おそらくソフトバンク(および/またはMGX)を経由する他の資金源が存在すると推測できます」と付け加えました。
ただし、別の資金源が一体何なのかはわかっていません。ジーグラー氏は「ソフトバンクが抱える1500億ドル(約23兆5000億円)の負債の一部が流れ込むとも想定できるだろう」と指摘しました。
なお、The Informationが伝えたところによると、OpenAIとソフトバンクはStargateにそれぞれ190億ドル(約3兆円)を出資し、両社はそれぞれStargateの株式の40%を保有することになるそうです。
この計画でOpenAIは潤沢な資金を確保したことになりますが、OpenAIは資金面以外でも得をしたとジーグラー氏は指摘しています。それは、OpenAIとOpenAIの以前からの大口出資者であるMicrosoftとの関係維持です。
OpenAIは、Arm、Microsoft、NVIDIA、オラクルを主要な初期技術パートナーに選んでおり、テキサス州を皮切りにデータセンター等の拠点の建設を進めています。またOpenAIは「これは、MicrosoftとOpenAIの既存のパートナーシップを基盤としています。OpenAIは今後もMicrosoft Azureの利用を増やしていくでしょう。OpenAIはMicrosoftとの協業を継続し、主要なモデルを訓練し、優れた製品とサービスを提供するため、Azureの使用量は今後も増加し続けるでしょう」と述べてMicrosoftとの強固な関係を強調しています。
この件についてジーグラー氏は「上記のOpenAIの声明は、MicrosoftとOpenAIが決裂していないことを世界に知らせるためだけに出されたものです。資金繰りに悩まされたOpenAIを支えてきたMicrosoftは、まるで親のようにOpenAIを承認するのも不承認するのも自由ですが、今回の一件では好意的な合意が成立しています。AIという史上最も急成長しているテクノロジーの重圧の下で両社は計り知れない緊張を強いられるようになっており、これまでは明らかに離れ離れになっていました。今回の契約は、その重圧をいくらか和らげてくれるものです。OpenAIは、Microsoft以外のデータセンターやクラウドプロバイダーに頼れるようになり、MicrosoftはOpenAIのAPIとモデルを介して自社IPの権利とビジネスモデルのニーズを維持することができます」と述べました。
最後に、ジーグラー氏は「ドナルド・トランプは、テクノロジーとAIをめぐる政治的勝利を、大きな金額と大きな企業で手っ取り早く手に入れることができました。また、OpenAIは海外のパートナーとAIインフラを構築することなく、アメリカ国内で完全に事業を継続することができます。少なくとも今のところは。OpenAIはMicrosoftとの独占データセンター契約から脱却し、OracleはOpenAIのビジネスを獲得し、ソフトバンクはすでにトランプ大統領と発表していた構想をPRでき、MGXはAI、特にOpenAIに2倍、3倍、4倍と注力する方法を得ました。Microsoftは資金繰りに悩まされることなく、OpenAIとのパートナーシップを維持することができビジネスとテクノロジーを保護できます」と述べ、今回のパートナーシップは「三方よし」の形でうまくまとまっていると指摘しました。
なお、「xAI」などでAI開発を進めるイーロン・マスク氏は「参加企業は実際にお金なんか持っておらず、ソフトバンクの資金は100億ドル以下」とSNSで投稿しましたが、直後にOpenAIのサム・アルトマンCEOから「間違っている」と反論されています。
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— Sam Altman (@sama) January 22, 2025
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