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「殺傷能力を持つ」として逮捕されたコイルガンの製作者が事件の真相について解説


警視庁薬物銃器対策課は2024年11月、栃木県に住む男性を銃刀法違反の容疑で逮捕しました。この男性は2014年5月に磁力を用いて弾を発射する「コイルガン」を自作する動画を公開しており、科学捜査研究所(科捜研)による鑑定の結果、「今回のコイルガンは殺傷能力を持つ」と認定されたことが逮捕の決め手となりました。2024年12月にこの男性は不起訴となり釈放されており、2025年1月19日に「コイルガン事件 本人解説」として事件の概要などについて説明する動画を公開しています。

コイルガン事件 本人解説 - YouTube


動画の投稿者であるAsp氏によると、各メディアは自身について「職業不詳」と報道していましたが、正しくは「ハンドメイド物販の自営業」とのこと。Asp氏は「どうやら各種メディアはハンドメイド物販を職業と認めてくれないようです」と批判しています。


事件の流れが以下。2014年5月にAsp氏はコイルガンを製作する動画を投稿。その後、警察からの廃棄要請や構造に対する警告はありませんでしたが、2024年10月5日にAsp氏に対する警視庁による家宅捜索ならびにコイルガンの押収が行われます。押収されたコイルガンは科捜研で鑑定が行われ、その結果殺傷能力が認められました。これを受け警視庁はAsp氏を拳銃所持容疑で逮捕。しかし2024年12月9日、Asp氏は不起訴処分で釈放されています。


Asp氏が製作したコイルガンは、シリンダー内に保持した鉄製の弾丸をハンマーで押し出し、コイルによる磁力で加速して発射するという物。


新規性が高いこの機構は、従来のコイルガンと比べて変換効率が約20%と高い一方で、発射される弾丸の威力は約4J(ジュール)と比較的抑えられていました。規制範囲内のクロスボウの上限が6J、時速100kmの野球ボールが持つエネルギーが56Jであることから分かるように、危険性は全くありません。


また、2022年7月に発生した自作拳銃による安倍晋三元首相銃撃事件や、2023年5月のハーフライフルを用いた殺人事件を受け、近年では銃の悪用防止策を強化するため、銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)の改正が進められています。改正銃刀法ではコイルガンに関する規則も定められており、違法となるコイルガンは「電磁石の磁力により金属性弾丸を発射する機能を有する銃のうち、内閣府令で定めるところにより測定した金属製弾丸の運動エネルギーの値が、人の生命に危険を及ぼし得るものとして内閣府令で定める値以上となるもの」と定義されています。しかし、Asp氏は自身が作成したコイルガンの運動エネルギーは銃刀法が定める値よりも大幅に低く、規制の対象外であると指摘しています。


さらに、Asp氏のコイルガンの運動エネルギーの低さに加え、改正銃刀法は2025年3月の施行を予定しており、2024年11月の事件発生時点では施行されておらず、施行後6カ月間は廃棄のための猶予があることから、今回の事件とコイルガン規制は本来無関係であるとAsp氏は説明しています。しかし、各メディアが「殺傷能力のあるコイルガンで逮捕」と読み取れる内容で報道していたことから「事件の本質を伝えていない」「恣意(しい)的かつミスリードを誘っていた」と厳しく批判しました。


Asp氏によれば、作成したコイルガンには樹脂製のハンマーを採用したり、強度の低いアクリルパイプを採用したりと、さまざまな実銃化防止対策を取っていたとのこと。


その衝撃に対する強度は一般的なエアガンに用いられるABS樹脂以下。


また、2017年頃に行われた家宅捜索で提出した際も廃棄要請や機構の指摘等はなく、Asp氏への返却が行われました。そのためAsp氏は「警察が見て『法律上は問題ない』と判断する機構だった」と判断しています。


しかし、科捜研は「後出しカウンター」として以下のような鑑定結果を報告しました。先端の特殊形状化や衝撃のみで発火する実包、シリンダー等に強度や密閉性が一切不要な構造を用いた場合、コイルガンによる殺傷能力が生じる可能性を認めています。


一方でAsp氏は、科捜研考案の実包の作成の難しさから鑑定結果を疑問視しています。


法律上、実包に関する明確な定義は定まっておらず、そのためAsp氏は科捜研の鑑定結果について「法律の解釈上、『実包の形状、材質、構成等は定義が決まっていないので自由』ということ?」と語りました。


これらを踏まえてAsp氏は検挙されやすい構造として「パイプ型の部品」「叩いて衝撃を発生する要素」「拳銃の形、または片手で扱える」の3項目を挙げています。特にパイプ型の部品ならびに叩いて衝撃を発生させる機構に関しては、作成者の意図しない方法で鑑定される可能性があり、検挙を回避することはほとんど不可能とのこと。


Asp氏は「そもそも不起訴になるような代物であっても何らかの理由で逮捕されることがある」「検挙の具体的な基準やボーダーラインはない」と述べ、「危険に見える要素が少しでも含まれる工作はすべて自粛した方が良さそう」との結論を語りました。

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in メモ,   動画, Posted by log1r_ut

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