トランプ氏の仮想通貨政策に暗雲か、アメリカ司法省が過去に押収した1兆円相当のビットコインの売却が認められたことで準備金が不足する可能性

2024年末、アメリカの裁判所が司法省に対し、「史上最大の仮想通貨押収事件」で押収された6万9370BTC(約1兆円)の売却を認める判決を下しました。司法省は売却を進めるものとみられていますが、これは次期大統領のドナルド・トランプ氏が掲げる「ビットコインを政府資金に」という施策と相反するものだとして、テクノロジー系メディアのArs Technicaが問題点を解説しています。

US selling 69K seized bitcoins could mess with Trump plans for crypto reserve - Ars Technica
https://arstechnica.com/tech-policy/2025/01/us-selling-69k-seized-bitcoins-could-mess-with-trump-plans-for-crypto-reserve/

What will happen if Trump commits the U.S. to bitcoin like gold
https://www.axios.com/2025/01/02/bitcoin-gold-trump

6万9370ビットコインはもともと犯罪者から押収されたものです。事の発端は2012年、ビットコインで商品の売買をするプラットフォーム「シルクロード」からハッカーがビットコインを盗んだ事件。アメリカ政府による捜査が進められる中、2020年に盗まれたビットコインが発見され、政府に押収されました。

ところが、ハッカーあるいは関連人物からビットコインを購入したというBattle Born Investments社が、押収が適切だったか否かを巡って訴訟を起こしたため、ビットコインはしばらく手が付けられなくなりました。Battle Born Investmentsはビットコインの返還を求めたものの棄却されたため、次は情報公開法を通じてハッカーの正体を暴こうと模索します。

しかし、この試みも「ハッカーは捜査対象になっていて身元を明かすべきではない」との政府主張に基づき却下され、これによりBattle Born Investmentsのビットコインに対する権利は消滅し、政府による売却の道が開かれることになりました。

司法省が多額のビットコインを売却する許可を得た、というニュースが流れた直後にビットコインの価格は下落しており、Ars Technicaは「売却が動き出せばさらなる価格変動が起こるだろう」と予想。仮にビットコインの価格がさらに下がった場合、トランプ氏が進める「ビットコイン建て」の政府資金積立計画を混乱させる可能性があると指摘しました。

トランプ氏はビットコインを含む仮想通貨に強い関心を抱いており、政府が所有しているビットコインをそのまま維持すべきだと主張しています。バイデン政権下では政府所有のビットコインは一般向けに販売されていて、収益は犯罪被害者への補償と法執行機関の資金として利用されているのですが、トランプ氏は「一切の販売をやめるべき」との考えを抱き、代わりに押収したビットコインでビットコイン準備金を構築する計画を立てているとのこと。なお、アメリカ政府が所有するビットコインは19万8000BTCに上っており、その価値は約2兆9000億円相当です。

トランプ氏はまた、「仮想通貨で何か素晴らしいことをするつもり」と語っているほか、国家債務を帳消しにするために使う可能性も示唆しています。加えて、証券取引委員会の次期委員長に仮想通貨推進派の元委員、ポール・アトキンスを指名、AIおよび仮想通貨監視責任者にPayPal出身のデービッド・サックス氏を起用し、仮想通貨の規制を緩和して枠組みを拡大する意向も示しています。

トランプ次期大統領が「ホワイトハウスのAIおよび仮想通貨皇帝」としてPayPalの元COOデービッド・サックスを起用 - GIGAZINE

アナリストは、ビットコイン準備金が導入されたらビットコインの価格が2倍以上に跳ね上がると予想しています。